「ぃよっしゃー!!湖だー!!」 季節は夏。肌を突き刺すような炎天下のもと、うだるような暑さに滝のような汗を流しながら辿り着いたのは、《水上の都》と称される国だった。 前回の依頼で図らずも多額の報酬を頂いた我々は、珍しく懐が暖かい。ホムラがパーッと使う前に止めたおかげでもある。そして、食費に使わないのならばという訳でここへ来た。季節的にも距離的にも好条件だった。断る理由がない。
日の光を反射して煌めく水面。 湖の中心に浮かぶリゾート地。 周辺の森や湖から採れる新鮮な食材。 そして、この気候とくれば―――
「『泳ぐぞー!!!』」
やはり、そうなるか・・・
少しランクの低いホテルの一室。部屋全体が小さな家になっており、テラスへ出ればすぐ湖に飛び込む事が可能だ。そしてテンション急上昇中のホムラは、部屋に着くなり荷物を放り出して着替え始めた。フェイも、以前頼まれて私が作った麦わら帽子とオモチャのサングラスを装着している。・・・動物が着飾って何になるというのだ。 「ルレイ!お前も早く着替えろよ!!」 「断る。そもそも、水着という代物を持っていない」 「えっ!?Σ(°Д°)持ってねぇの!?なんで前の国で買って来なかったんだよ?ってか、ここでも売ってるぜ?買って来いよ」 「泳ぐ気などない」 『ぬぁに〜ぃ!?ここまで来ておいて泳がぬじゃと!?お主、この国に何をしに来たのじゃ!』 「保養」 「ジジくせぇ〜」 『枯れとるのぅ。お主もまだ若いのじゃろ?もちっとこう・・・キャピっとしてみんか』 「ルレイがキャピって・・・プッ――――似合わねー」 (大きなお世話だ) 「とにかく、私は行かない。さっさと二人で湖の底にでも沈んでこい」 「『ひど!!( ̄Д ̄;)』」
×××
俺は早速フェイを頭に乗せて、さっそく国の中心―――ビーチへ向かって泳いだ。水は透き通ってて、結構深いのに底が見えそうだ。 「んー!気持ちいーなー、フェイ!」 『えぇのぅ、えぇのぅ。ピチピチぎゃるがいぱいじゃ』 「マジ!?」 『大マジじゃ!ゆけ、ホムラ!あのヘブンへ向かって突き進むのじゃ!!』 「ラジャー!(`_ ´ )ゞ」 ビーチに辿り着いたらもう、大興奮!南国の太陽に照らされて大胆になった女の子達がいっぱいだ!女っ気のない根無し草の俺達にとっては、生足生腕が眩しいっス! 「うっひょー!いいねいいねっ!(・∀・)」 『よしホムラ!おなごハンターの腕をとくと見せてみぃ!』 「よしきた行ったるぜ!!」
数時間後・・・
沈んでた。 俺様は、自分のナンパの腕をケチョンケチョンにされて、絶賛落ち込み中だ。 『・・・一人も釣れぬではないか』 「しょーがねぇだろ〜?リゾート地だから、金持ちが多いし、みんなナンパに慣れてんだよっ。このナイスガイなホムラ様が声を掛けても無視する女がいるなんて・・・グスッ」 陽が傾きかける中、ビーチの一角にあるカフェテラスで青春の一ページのように苦いブラックコーヒーをすする。ちくしょうっ!湖に反射する光が目にしみるぜ! 『まー、アレじゃ。敗因はお前の自信過剰さじゃろうな』 「黙れよお喋りリスネコ。見世物屋に売り付けンぞ」 『ふんっ。その前に女にモテぬそのツラをかっこ良く整形してくれるわ。この爪でな』 ったく。こんな奴相手じゃなくて、キレイなネーチャンと楽しくお喋りしてーよぅ。 「お・に・い・さ・んv」 「ん?」 突然声を掛けられて振り返ると、目の前にビキニ姿の美女がっ!!まさかまさか、俺様憧れの逆ナンってやつ!? 「お兄さん、いい体つきしてるわね。私、貴方みたいな人、好みなの。どう?私と遊んで下さらない?」 (俺もお姉さんみたいな人、チョー好みでっす!!) 「喜んで!!(≧∀≦)」 カフェを出てビーチの外へ向かう。ボート乗り場に案内されて、湖を囲う森の岸辺まで来た。 「ねぇ。お姐さんんってこの国の人なの?」 「お・に・い・さ・んv」 「ん?何?」 「お兄さん、いい体つきしてるわね」 「・・・えっと?」 (あれれ?さっきも同じ事言ってたよな?) 『おいホムラ。このオナゴ、気配が妙じゃぞ』 フェイが耳元で囁く。ちょっとおかしいのは今気付いたけど・・・。 「ワタシ、貴方みたいな人、好みなの」 (やっぱり・・・これって・・・) 「私ト遊んデクださラなアああぁぁァァぁっっ!!!!」
「ちょっ――――――!?」
いきなり視界いっぱいに鋭い牙が迫って来て―――
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