×××
男ホムラ、花の25歳。 まあそれなりにデンジャラスでスウィーチーな人生を送ってきた俺だけど・・・只今、今世紀最大の絶体絶命大☆ピンチです♡ なんでかって?そりゃあ―――――
「どどどど、どう、どどうしようフェイ!!」 『わ、ワシに言われても・・・ワシだって、どうすればよいのか・・・』
ガタガタガタガタ
カリカリカリカリカリカリ
必死で押さえる扉が、絶え間なく揺れてる。 鉄扉の部屋に入って数時間。空っぽの檻しかない部屋に閉じ込められちまって、出るに出られなくなって落ち込んでたら、扉が破られそうになってきた。こんな感じのピンチな状況だ!
一応急いで鉄檻壊して鍵代わりにしたけど、不安でしょうがない。 「なあ、どっか出られそうな所、ない?」 『そう言うても・・・この部屋には窓すらないじゃろうが』 「この城仕掛けだらけだから、なんかあるかもしれねぇぜ?探してみよう!」 『むぅ・・・そうじゃのぅ。ルレイのように突然穴が現れる事も――』 「何だこれ?」 『――って、話を聞かんか!!\(*`Д´)ノ』 カチッ 俺が部屋の隅にあったビー玉を取ろうとすると、逆に押し込まれた。 『にゅああぁぁぁぁぁぁぁ!!!?』 「ん?―――――あれ?フェイ!?」 猫みてーな叫び声がして振り返ると、フェイがいなくなってた。慌てて駆け寄ると、ポッカリ穴が空いてる。 「フェ――――イ!!」 ・・・返事ねぇ。これはもう、行くっきゃないっしょ!! 「今行くからな!フェイ!!」 俺は威勢良く穴に飛び込んだ。
×××
(とにかくここから脱出する方法を見つけなければ) 幸いというか、いつも持ち歩く癖の付いている鞄に研究書を押し込んだ。【P】という人物の手掛かりを探すにしても、まずこの城から生還しなければ。 再び目に神経を集中し、部屋を透視しようとしたその時、
『ぁぁぁあぁあああああ!!』 (・・・?どこからだ?) 叫び声がして、辺りを伺う。と、 『にゃあ!!』 突然現れた天井の穴から、フェイが降ってきた。そしてそのままころころ転がり、足下で止まる。 「・・・・何を遊んでいるんだ?」 『ぅぅ・・・あ、遊んでいるじゃと!?ワシは―――』 「あ!何か見え――――うわあっ!?」 『ぎゃふっ!?』 「・・・・遊んではいないのか?」 今度はホムラが降ってきた。しかも、フェイと同じ軌跡を辿り、見事リスネコの小さな体を潰した。 「いって〜ぇ・・・あ!ルレイだ!なあなあ、フェイ見なかったか?あいつ穴に落ちちまって―――」 私は無言でホムラの腹の下を指した。 馬鹿は一瞬キョトンとしたが、すぐにハッとして体を持ち上げた。 「うぉっΣ(◎Д◎;)フェイ、そんな所で何やってんだよ!?」 『それは・・・こっちの、セリフ、じゃ・・・ぼけぇ・・・』 息も絶え絶えなフェイを救出し、とりあえず手当をする。 「そんぐらいの傷、自分で治せばいいじゃん」 『己の傷は治せんのじゃ!じゃからもっとワシを労らにゃあ!?〜〜〜ルレイィィ、もうちっと優しくしてくれぬか?』 「難しい」 見た目が特殊なフェイだが、その能力も特異で、彼は人の怪我をある程度治せる。いわゆる治癒能力を持っている。戦力には鳴らないが、貴重な人材だ。 「―――で?」 『うむ。鉄扉の部屋には空の檻と白骨しかなかった。半ば追い込まれてあの部屋に入ったからのぅ。閉じ込められてしまって・・・。それで、この馬鹿が仕掛けを作動させてここに落ちてきた訳じゃ』 「俺様のおかげで抜け出せたんだよなっ!?」 『それよりルレイ』 「ちょっΣ(0Д0;)華麗に無視!?」 『ここは何なのじゃ?』 フェイの小さな前足に包帯を巻き終え、荷物から先程の研究書を取り出し、開いた。 『これは・・・?』 「え?何なに?」 「50年程前の物らしい」 『では、あ奴らはそれからずっと・・・?』 「なあ、何なんだよそれ」 「おそらく」 『ふうむ・・・だとしたら・・・いや、しかし・・・』 「俺も会話に混ぜてくださーい!!!」
べちゃっ
「「『!!?』」」 ホムラが叫んだ瞬間、我々の足下に人の手が落ちてきた。 「げっ!Σ(◎Д◎;)」 『まずい!扉を破られたぞ!!』 「これが形態模写する人工ティエッフェか・・・」 『それどころではないわ!!ルレイ!脱出路はっ!?』 「うわわ!どんどん降って来る!?」 どうやらタイムリミットらしい。もう少し観察していたかったのだが・・・。仕込み刀を抜き放ち、致し方なく私は通路のすぐ左にある棚を指した。透視するまでもなかった。フェイの手当をしている間に、通路と部屋の境目に何かを引きずった跡があったのだ。 「ホムラ。その棚で道を塞げ」 「えっ!?――お、おう!」 ホムラと交代し、ティエッフェを斬り伏せる。後ろでうるさい歓声が上がった。 「ルレイ!!」 叫び声に応じて踵を返した。 延々と続く階段を必死に駆け上がる。ティエッフェのせいもあるが、背後でガラガラと崩れる音が迫り来ている――という理由の方が当てはまるだろう。逼迫感に圧迫されて圧死してしまいそうだ。 冗談抜きに。 「ルレイ早く!!」 遅れていた私に、先に脱出したホムラが手を差し出す。酸欠で朦朧とする意識の中、私はなんとかその手を掴み―――
「それえ!!」
――――空中に投げ飛ばされた。
「ルレイ〜?生きてるー?」 (見ればわかるだろうが) 肩で息をしながら、横から覗き込む体力馬鹿を睨みつける。 「んな睨むなよー。助かったんだからさぁ、な?」 なぜこの男は、顔の半分も隠れている私の表情を読み取る事ができるのか・・・。不思議に思うのと同時に、腹立たしい。 「・・・うるさい黙れ・・・」 「ひっひでぇ!(´□`;)」 深く溜め息を吐いて、青く晴れ渡った空を仰ぐ。 城の裏手の林から、心地よい風が吹いて来た。 足の先では、ガラガラと城が崩れて行く。なんだかひどく滑稽に思えた。あの青は、どこまでも静かだというのに・・・。
(・・・“P”・・・)
ふわりと浮かぶ真っ白な雲に手を伸ばす。 届きそうで届かない。 見えてはいるのに・・・
(お前は・・・誰だ・・・)
空高く舞う鳥が、嘲笑うかのように高く鳴き、飛び去った。
|
|