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WEISSE 作者:紫苑璃苑

第2回   II

―――ガシャン!!

突然手元のコップが割れた。硝煙の匂いが鼻先を掠める。
(サイレンサー付の拳銃か。こんな室内で発砲するとは・・・)
「あちらさんも焦ってるみてーだな」
男はのんびりとデザートのプリンを口に運び、「うめっ」と顔をほころばせた。緊張感のない奴だ。
「責任を取れ」
今の隙に殺さなかったという事は、発砲は警告だろう。私は素直に席に着き、向いの男を睨む。と同時に、仕込み杖を握る手に力を込めた。
「取る取る。だからそんな殺気立たずに、これ食っちまうまでちょっと待って」
(・・・こんな男に責任を問うたのは間違いだったか?)
大いに不安だ。
 窓の外に目を向け、大きく溜息を吐いた。外にもチラチラと黒い人影が見える。完全に囲まれているようだ。
「ぷは〜食ったー(*´▽`)=3 ごちそうさまでした!!」
「口の周りを拭け」
「おお?わりー、わりー」
・・・殴りたい衝動に駆られた。あまりにも馬鹿馬鹿しい。何故巻き込んだ本人の世話を焼かなければならないのか。
「よし!もう付いてないよな?じゃ、行こうぜ!」
「どうやって脱出す―――」



―――ガッシャーン!!



男は、突然腰に吊っていた大剣を窓ガラスに叩き付けた。
「捕まえれるもんなら捕まえてみなー!!」
「ちっ」
即座に反応した黒服達が銃を構えたので、否応無しに男に続かなければならなかった。



 そして、今に至る。



 黒服に紛れて店の店主も追いかけてきたのだ。
「しっかりついて来てくれよ?」
「別れた方が撒(ま)きやすい」
「えー(; ̄д ̄) そんなんやだー」
「・・・・・・・」
嫌気がさして、急に横道へ曲がってやった。
「おいおい、急に曲がんなよー。はぐれちまうだろー?」
「ちっ」
「えっ!煤i・д・) ちょ、今の舌打ち何!?」
失敗した。こうなったら何が何でも撒かなければ。
 次の小路に入ると同時に、窓の格子を伝って素早くかつ、音を立てずに屋上へ逃げた。
「あー。こういう手もあるかー」
「・・・・・・・・」
ちゃっかり隣に並ばれた。黒服と店主は撒けたようだが、この男だけはダメだった。
「ついて来るな」
日も傾きだした。早くおさらばしたいという私の願いは・・・
「え?何で?」
疑問として返された。これだけ態度に出しているのに、何故気付かない。
「迷惑だ。消えろ」
「やだ」
これもだめか。はっきり言ってしまえば黙ると思いきや・・・どうしたものか。
「・・・拒否している事がわからないのか」
「拒否る理由がわかんねぇ」
「赤の他人に巻き込まれた上に、食い逃げの罪まで被せられ、危ない連中に目を付けられたんだ。これ以上関わりたくない。それが理由だ」
「・・・・・」
キョトンとしていた顔が、真剣な表情に変る。やっと理解してくれ――
「じゃあここまで来たんだし、これからも一緒に行動しようぜ!あんたもアストラだろ?なら仲間じゃん!!」
―――て、いなかった。馬鹿はどこまでも馬鹿なのか。
「悪いが私はフリーで仕事をしている。誰かと手を組む気はない」
踵を返した。もう、何を言われても答えるものか。
「じゃあお試しでいいからさ。あんた、結構強いだろ?力はなさそうだけど、身軽だし」
「・・・」
「つーか帽子、そんな深く被ってて前見えるんか?その棒・・・杖?も使ってねぇじゃん」
「・・・・・・」
「顔、よく見えねぇし。あっ!まさか、女って訳じゃないよな?暑いのにタートル着てるし、皮の手袋つけてるし、露出度ちょー低いし。出てるのアゴぐらいじゃん。細っこいし・・・・けど、声は男だよな?なあ、どっちなんだ?」
「・・・・・・・・・・」
「あっ!そうだ名前!」
行く手を塞がれた。
「俺、ホムラ・シュバイツ!あんたは?」
「・・・・・・私の―――」



         『俺が、尊敬していた者の名だ。今日からお前は――』



  嵐の後のような部屋
       アルコールや様々な薬品の匂いが立ち込め――
  
  ガラスの破片

   液体
        あかい
 横たわる体
    切り離された頭部
         目に痛いほどの 極彩色の―――



「名、は・・・」
「何だよ。名無しって訳じゃねぇよな?」
「・・・・・ルレイ」
「ルレイ、な。いい名前じゃん!ま、俺様程じゃねぇけど〜?」

 昔の記憶。
 懐かしい日々。
 安穏と暮らしていた、あまりにも短い日常・・・。
 何処で間違ったのか。端(はた)から間違っていたのか。私が、あそこで生き延びなければ、あんな事には――

「おい!」
「―――っ!・・・なんだ」
目の前に、男・・・ホムラの顔があった。少し屈んでいる。
(高いな)
自然と目線が高くなる。少し、羨ましく思えた。世界もまた、違って見えるのだろうか。
「何だはねぇだろ?人がせっかく話してやってるのにさぁ」
「頼んだ覚えはない」
前言撤回。独活(うど)の大木をうらやむ気持ちなどない。
「んなツレなくすんなよ〜。俺とお前の仲だろ〜?」
「初対面の赤の他人だ」
「他人〜?何言ってんの。俺はホムラ、あんたはルレイ。知り合いに昇格だ!」
「知るか」
民家の屋根縁に足を掛けた。ダッシュで逃げれば追いつけはしないだろう。
「待てよ!独りで行動しない方がいいぜ?あいつらに顔見られただろ?」
「関係ない。捕まったとしても、貴様の事は名前と馴れ馴れしいという事しか知らん」
「でも俺、ルレイにあいつらの秘密事項全〜部話しちまったぜ?」
「そんなもの――」
「聞いてない、は通用しないと思うな〜。これでもう、俺とルレイは一蓮托生!さあ、運命を共にしよう!!」
「断る」
「即答!?煤i0д0;)」
私はそのまま飛び降りて、人ごみに紛れた。








 〜あれ?〜

  あ。この話、肝心な部分含まれてねぇや。


  ・・・・・


  ま、人物紹介っつーことで!
  馴れ初めってことで!
  WEISSEは短め(自分にしては)な話で進めていこうかと思っているんで。よろしくです。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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