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WEISSE 作者:紫苑璃苑

第14回   捕らわれ―II

「ルレイちゃん!!アミー、きっと来てくれるって信じてたわ!」
「勘違いするな。仕事だ」
『どういう事じゃ?』

 香ばしい、おいしそうな香りが鼻腔(びこう)を刺激してきた。十メートルは離れているというのに、目の前で調理されているような感覚に陥る。香りの元は、巨大な植物だった。ツタを半径五メートル四方に蔓延(はびこ)らせ、中心に大輪の花を咲かせている。更に、その白い花は毒々しい色合いの模様が浮き出ていた。植物という点から見ても、おそらく下級のティエッフェだろう。しかし、このような種類は見たことがない。貴重種かもしれない。
「この先の集落で正式に依頼された」
肩に乗ったフェイに答える。決して岩陰に隠れる女に言った訳ではない。
「何故近付かない」
「それがねー、なんかねー?」
『近付くと、強制的な眠りに陥るようなのじゃ。息を止めておれば平気じゃが、ワシではこのオナゴを引きずるので精一杯じゃった』
タラタラと説明し始めた女は無視し、フェイの言葉だけを耳に入れた。おそらく助けに行った女まで倒れているのを見つけたのだろう。この小さな体でよく引きずれたものだ。
「極上のミルクを奢ってやろう」
『若い姉ちゃんを紹介してくれた方がうれしいのじゃが・・・滅多にないことじゃ。ありがたく頂戴する』
「――っていう訳でー、わからないんだけど・・・って、聞いてる?ルレイちゃん!?」
「先程聞いた話だが」
「華麗に無視!?」
「この地方に伝わる御伽噺に似たような話がある。旅人が歩いていると、どこからともなく良い匂いがして花に捕らわれるという話だ。
香りは食人花から分泌されるもので、香りで動物をおびき寄せ、獲り喰らうという」
「そんな話があるのー?」
『その話しでは、どうやって切り抜けるのじゃ?』
「天女が現れ、謎解きをして助かるらしい。――現実的に鑑みて、今現在手立てはない。植物の特徴としては細かく描写されていないが・・・取り込んだ生き物に悪夢を見せ、生気を吸い取るという行(くだり)がある。
「やーん!それ本当!?」
「息を止めていれば眠りに落ちる事もないようだが・・・」
『曲がりなりにも《深き者達》じゃからのぅ。どんな攻撃をしてくるのか予想がつかぬ。慎重に行動した方が良いのぅ』
ならば、どうするべきか。一見、大きいだけで普通の花とそう変りはないようだが、光沢が気になる。ホムラがいればあいつに突っ込ませて様子が見れるものを・・・。
「――女」
「アミーちゃん!(*`へ´)」
「ボーガンを貸せ」
「ええー!?攻撃するのぉ?あそこにホムラ君がいるんだよぉ?」
「知らん。貸せ」
女の手から武器を奪い、核と思われる花の中心に狙いを定める。
短い音が空を切り、矢が放たれた。が、
「―――!」
弾かれた。
一瞬の金属音を聞き逃さず、私は女にボーガンを付き返した。
「えっ?えっ?何なに?どうなったの?(;゜ロ゜)」
「表面が硬い。あれでは刃も通らないだろう」
『困ったのぅ。・・・ホムラは無事じゃろうか・・・』



 〜※注意書き※〜
 次回、暴力シーンがあります。
 今頃かよという声が聞こえてきそうですが、自分的にキツイかなと思ったので・・・。
 気分が悪くなる方もいると思われますので、どんな表現もどーんと来い!超常g――
大丈夫だという方のみ、お進みください。
 暴力はちょっと・・・という方は、ひとつ飛ばしてお読みください。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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