「ルレイちゃん!!アミー、きっと来てくれるって信じてたわ!」 「勘違いするな。仕事だ」 『どういう事じゃ?』
香ばしい、おいしそうな香りが鼻腔(びこう)を刺激してきた。十メートルは離れているというのに、目の前で調理されているような感覚に陥る。香りの元は、巨大な植物だった。ツタを半径五メートル四方に蔓延(はびこ)らせ、中心に大輪の花を咲かせている。更に、その白い花は毒々しい色合いの模様が浮き出ていた。植物という点から見ても、おそらく下級のティエッフェだろう。しかし、このような種類は見たことがない。貴重種かもしれない。 「この先の集落で正式に依頼された」 肩に乗ったフェイに答える。決して岩陰に隠れる女に言った訳ではない。 「何故近付かない」 「それがねー、なんかねー?」 『近付くと、強制的な眠りに陥るようなのじゃ。息を止めておれば平気じゃが、ワシではこのオナゴを引きずるので精一杯じゃった』 タラタラと説明し始めた女は無視し、フェイの言葉だけを耳に入れた。おそらく助けに行った女まで倒れているのを見つけたのだろう。この小さな体でよく引きずれたものだ。 「極上のミルクを奢ってやろう」 『若い姉ちゃんを紹介してくれた方がうれしいのじゃが・・・滅多にないことじゃ。ありがたく頂戴する』 「――っていう訳でー、わからないんだけど・・・って、聞いてる?ルレイちゃん!?」 「先程聞いた話だが」 「華麗に無視!?」 「この地方に伝わる御伽噺に似たような話がある。旅人が歩いていると、どこからともなく良い匂いがして花に捕らわれるという話だ。 香りは食人花から分泌されるもので、香りで動物をおびき寄せ、獲り喰らうという」 「そんな話があるのー?」 『その話しでは、どうやって切り抜けるのじゃ?』 「天女が現れ、謎解きをして助かるらしい。――現実的に鑑みて、今現在手立てはない。植物の特徴としては細かく描写されていないが・・・取り込んだ生き物に悪夢を見せ、生気を吸い取るという行(くだり)がある。 「やーん!それ本当!?」 「息を止めていれば眠りに落ちる事もないようだが・・・」 『曲がりなりにも《深き者達》じゃからのぅ。どんな攻撃をしてくるのか予想がつかぬ。慎重に行動した方が良いのぅ』 ならば、どうするべきか。一見、大きいだけで普通の花とそう変りはないようだが、光沢が気になる。ホムラがいればあいつに突っ込ませて様子が見れるものを・・・。 「――女」 「アミーちゃん!(*`へ´)」 「ボーガンを貸せ」 「ええー!?攻撃するのぉ?あそこにホムラ君がいるんだよぉ?」 「知らん。貸せ」 女の手から武器を奪い、核と思われる花の中心に狙いを定める。 短い音が空を切り、矢が放たれた。が、 「―――!」 弾かれた。 一瞬の金属音を聞き逃さず、私は女にボーガンを付き返した。 「えっ?えっ?何なに?どうなったの?(;゜ロ゜)」 「表面が硬い。あれでは刃も通らないだろう」 『困ったのぅ。・・・ホムラは無事じゃろうか・・・』
〜※注意書き※〜 次回、暴力シーンがあります。 今頃かよという声が聞こえてきそうですが、自分的にキツイかなと思ったので・・・。 気分が悪くなる方もいると思われますので、どんな表現もどーんと来い!超常g―― 大丈夫だという方のみ、お進みください。 暴力はちょっと・・・という方は、ひとつ飛ばしてお読みください。
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