砂嵐吹き荒れる山岳地帯を移動していた。 「腹減ったな〜〜。何かいねぇかなぁ・・・・・・」 スカイブルーの瞳を伊達眼鏡で飾る男が切なそうに呟いた。背が高く、紺色の髪をしている。 「さーっき食べたばかりじゃなーい。ホムラ君ったら、食いしん坊さん☆」 危険の多い国の外に似つかわしくない、派手な格好をした女が答える。ゴツゴツした地面をハイヒールで歩くという、信じられない人種だ。 「しょうがねえじゃん。カロリー消費良すぎるんだよ俺。羨ましい?アミー」 「ざーんねんながら、アミーちゃんはナイスバディなので羨ましくありまっせーん♪」 『胸はないがのぅ』 女の返しに、私の肩にいるリスネコのフェイがぼそりとツッコミを入れた。他の者には聞こえていない。 何故動物が喋るのかというのは、またの機会に。
「馬鹿を言っていないでさっさと歩け馬鹿共」
さて、忘れない内に紹介しておこう。
「ひっでー!!!」 「ルレイちゃんたら!口悪すぎよお!!」
細身の杖を腰に挿し、目深に帽子を被った痩身の盲目。 そして、この集団唯一の常識人。それが私だ。
×××
「それでねー、今回の依頼なんだけどねー?」 派手な格好の女は、仲介屋だ。アハリアハルに来る仕事を、フリーの我々に紹介する仕事だ。自ら危険な国の外に出る彼らは、我々アストラほどではないにしろ、戦闘能力はあるはずだ。実際に戦っている所を見たことはないが。 「なあなあ〜そんな事より飯にしようぜ〜?俺、腹減ってヤバイんですけど」 「んもう!何とか言ってあげてよルレイちゃーん!!0(><;)(;><)0」 「“何とか”」 正直、私はこの女が嫌いだ。 「あはははははは!ルレイサイコー!(>v<)b」 「自分で獲って来い。先に行くから」 「ええー!?煤i○д○;)」 かと言って、馬鹿も相手はしていられない。野宿続きだったため、早く次の国に行きたいのだ。 「あっ?」 喚き始めたかと思ったら、次の瞬間には尻尾を振って鼻を動かしていた。 「メシ!!」 「は、ないと言った」 「違う!今、すっげーうまそうな匂いがしたんだよ!ほら!!」 「・・・・・・?」 匂いなんてするかとフェイに尋ねる。肯定の返事が返ってきた。 「あっ。ほーんと。アミーにもわかったよ☆けど・・・」 「あぁ」 確かに、食事の香りがする。しかし、まだこの辺りに民家はないはずだ。 「ううん・・・あっ!もしかしてー!」 「おっ!何なに?この先にうまい食事処があるとか?」 ホムラは待ちきれないらしく、もう体がフラフラと前に出ている。 「うー・・・・・・なん、だったけー?(>∀<)⌒☆」 「だー!!!もうガマンできねぇ!俺、行ってくる!!」 「おい―――」 止める暇もなく、ホムラは走って行った。 『聞かん坊じゃのう』 「・・・・・・・・・・・・」 小声に答えず、私はホムラとは別の本来行くべく方向へ足を向けた。 「ちょっとちょっとルレイちゃん!ホムラ君はいいの?」 「知らん」 良いも悪いも、あいつが勝手に行動したのだ。 「そういう訳にはいかないでしょう?パートナーなんだしぃ?」 「問題ない」 私は元々一人でアストラをしていた。パートナーになった覚えもない。 「ルレイちゃん冷たーい(=З=)アミーは様子見に行ってこよーっと!」 「・・・・・・・・・」 私は構わず進んだ。
「・・・・・・なーんで止めないかなぁ?」
女は一瞬迷った素振りを見せたが、結局付いて来た。・・・・・・舌打ちしてやろうかという思考がよぎる。 「止めてどうする」 「“しかたないなぁ、俺も行ってやるよ”っていう優しさはないの!?」 「ない」 「きゃー!鬼よ!悪魔よ!人でなしよぉ!?こーんなキュートなアミーちゃんにその手を差し伸べてくれないなんてっ!」 「誰も出さない」 「こーんな綺麗役のアミーちゃんを放っておく男がいるなんてっ!」 「汚れ役の間違いだ」 「はっ!まさかルレイちゃんて・・・」 「いつもベタベタしてくるホムラに言え」 「じゃあ・・・ルレイちゃんって、本当は女の子?」 「死ね」 「じゃあなんでそんなにスタイルいいのよぅ!華奢な体つきなのよぅ!!」 「ヒガミか」 「だーってだーってぇ!」 「うるさい。疲れる。消えろ」 「ひっどーい!(>_<)もうルレイちゃんなんて知らないから!」 「・・・・・・」 (やっと消えたか) うるさい女だ。意思をかえる素振りすらなかったのだから、さっさと諦めればよいものを。 『・・・本当に行かんでもよいのか?』 「・・・・・・」 『まがりなりにもしばらく行動を共にしてきたのじゃろ?こんな所で死なれては目覚めも悪いじゃろうが』 「所詮それだけの人間だったというだけだ」 『〜〜〜〜〜!!ち、力仕事をやる奴がいなくなるぞ!』 「気になるなら行け」 『そこまで冷たい奴だとは思わなんだわ!』 結局、フェイも戻った。皆、仲間意識が強いようだ。
その後、数時間で小さな集落に着いた。入国手続きはこの先の大きな町で行うらしい。 「アストラさんかね」 小さな老人が声を掛けてきた。肯定すると、村から賞金を出すので、是非仕事を頼みたいとの事だった。 とりあえず話だけ聞いてみると、どうやら先程の香りに関しての依頼らしい。この数年、商人がこの国に来る途中で行方不明になる事件が多発していたようだ。無事たどり着いた商人に話を聞くと、皆一様に香りの事を話したという。このままでは国が立ち行かなくなってしまう。是非とも原因を取り除いてほしいと懇願された。 「・・・いいでしょう。しかし、情報があまりに少ない。誰かその香りの元を見た人はいないのですか。もしくは、類似した話はありますか」 「見たという話は聞きませんな。おいしそうな匂いにつられて捕らわれたという話はありますが・・・。しかし、おとぎ話ですぞ?」 「構いません。聞かせてください」
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