「はぁ はぁ はぁ・・・―――はっ」
走っていた。
そこそこ大きな町の中で。
名前も知らない男と共に。
ただただ必死に、追っ手から逃れようと息を切らせながら、走っていた。
「こらー!!待たんかこのっ!―――食い逃げ野郎共―!!!」 「――ったく、しつけーなぁ( ̄о ̄)=3」 「・・・・・」
まったく・・・どうしてこんな事になってしまったのか・・・。まずは、そこから話さなければなるまい。 それは、今から数十分前の話になる。
この街に流れ着き、仕事をしていた私は、丁度時間もよかったので昼食をとるために店に入った。ボックス席に座り、食後の紅茶を楽しんでいると、一人の男が現れた。 「よぉ。あんた、旅してんのか?」 男は、黒髪にスカイブルーの瞳、細いフレームの眼鏡をかけた軽そうな雰囲気の、ちゃらちゃらした格好をしていた。 彼はさも当たり前のように私の向かいに座ると、ウエイトレスを捕まえて注文する。 (何なんだ、この男は) 「あ。これ、伊達だから。頭よさそうに見えるだろ?(+・`ω・´)b☆」 (そうか。頭の足りない奴なのか) 眼鏡を上下させて自慢げに話す馬鹿を完全に無視する。こういう手合いは関わらないに限る。
やがて、彼は注文した特製お子様ランチ×2に舌鼓を打ちながら、世間話を始めた。そこまではまだよかったのだが・・・。 「――あそこのグラサン掛けたシスター。結構好みなんだけど、性格が男っぽいってゆーかさ・・・。この前なんかせっかくクリーニングに出したシーツを倉庫に入れろって喚いてて―――」 (ちょっと待て。何の話をしているんだ。・・・この男、まさか・・・) 「この間はさー、誰もいない所でトレーニングしようと海辺の倉庫で素振りしてたら、積荷に当たっちまってー。中から白い何か・・・粉?が出てきちまって・・・いやー、あれにはまいったね!さっさととんずら――」 何気ない話の中に、裏社会の機密が含まれていた。その筋の者が聞いたら、即刻始末しに来るような・・・。
・・・嫌な予感がした。
私はさり気なく周囲を窺う。と、案の定、只ならぬ空気をまとった御仁が一般客に紛れていた。 これ以上ここにいたら危険だと判断し、名残惜しく琥珀色の液体を一気に飲み干す。乱暴にカップを置いてさっさと席を立つ。が、 「ちょーっと待てよ。まだ、話の途中だろ〜?」 腕を思い切り引かれ、再び座らされた。 「何のつもりだ」 「ままま。いいから、いいから。そんなつれなくすんなよ〜(0ω0`;)」 一体、何だというんだこの男は。赤の他人にやたら親しげに接してくる。おまけに、いつの間にか巻き込まれているようだ。 「今、むやみに動くと危ねーぞ?」 男は口を動かさず、小声で言った。 「・・・お前のせいだろう」 私も、ごく小さな声で返した。不穏な気配に気付いているのならば、少しは腕の立つ者なのだろうか。 「いやー、照れますな〜」 「一言も褒めていない。私は無関係だ。失礼する」 「あー!だからダメだって―――!!」 「―――!?」 強く握る手を振りほどき、立ち上がったその時――
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