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i n f u s e 作者:さくらみなこ

第12回   < 11、衝撃 >

三人は顔を見合わせた!

メテルがリオンを追ってここまできた!
どうやってここまできたんだ?

一瞬、リオンはメテルに恐さを感じた。
あんなにも愛したメテルなのに・・・。

叫ぶ声は大きくなり、ついにはドアを
ドンドンドンと叩く音!
その音にビクッとするリオン。

自分の震えはわかっていた。
あの約束が自分を縛り付けているのだ。

メテルが目の前に
現われるまえにアルテに
ぶちまけてしまいたい衝動にかられるリオン。

アルテはそんなリオンを
察したのか、リオンの背中に抱きつき、
まるで震えを止めるようにして
耳もとに口を近づけた。
「行こう」

声も出せずにいるリオンに
もう一度繰り返すアルテ。
「蓮池を探しに行こう!今すぐ!」

驚き、振り返るリオンはアルテを
仰天の眼差しでみる。

それは自分を助けるために?

「ロイ、あとは頼んだよ!」

先ほどとはうって変わって、軽快なアルテの口調は
リオンの手を取り、二人は裏口から飛びだした!

二人を後にしたロイは、騒々しい音を
静めるように返答する。
「メテル様ですね!」
そういうとドアを叩く音は静まった。

そしてドアをゆっくり開け、ほんの
少しの隙間でメテルを確かめる。

まぎれもなくメテルの姿がそこにあった!

改めて驚きを隠せずにいるロイは、
しばらく声を失った。

荒い息を吐きながら、しゃべることさえも
困難な状態で、額には汗が滴り落ちているメテル。

唾を飲み込み一息ついて、ロイは
ゆっくり口を開いた。
「よくここまでこられました」

「どうしてもリオンに伝えたいことがあって・・・」
そういうとメテルの視線は船内の中を探しまわった。

「リオンは?リオンはどこなの?」

「外に出られておいでです」

「外ってどこ? 時間がないの!」

かんしゃくを起こしそうな勢いで
叫ぶメテルにロイは戸惑った。
「私が伝えますから落ち着いて下さい」

両腕を振り上げ、メテルはその腕で
ロイの胸を泣きながら叩く。

メテルの両腕を押さえ、ロイは
ただごとではないことを感じとった。

背中をさすり、メテルの
落ち着きを待つロイが耳にした言葉は
衝撃的だった。

「王が暗殺されたの! アロンが
家臣とともに青色地へ向かったの!」

「えっ!」
息を飲み込むロイ。
「王が・・・」

唖然とするロイをよそにメテルは喋りだす。
「私はリオンが心配で! 
リオンまでもが狙われているのよ! 
アルテが! アルテは青色地の人間だから!」

「アルテさまが・・・」
うつむくロイ。

「リオンを狙っているの! 
アルテはリオンの命を狙っているの!」
とぎれとぎれに話すメテルの言葉が
ロイの頭をめぐらす。

王の死さえも驚きなのに、アルテが
リオンの命を狙っていると聞いて
ショックを隠しきれないロイ。

「そんな・・・王がしてきたことは何だったのか・・・」
ロイはひとり言のように呟く。

「家臣が王に話しているのを聞いてしまったの! 
アルテが暗殺者だってことを!」
泣き崩れ、ひざまずくメテル。

愕然としながらも、今のアルテの
行動を考えるロイ。

そういえば、あんなに明るかったアルテに
笑顔は無く、脅えるくらいの表情が思い出される。

それはここへきて不安な心が
そうさせたと思っていた。

けれど体調が崩れるほど、
異常なまでの王位継承の拒み。

そしてメテルの声でリオンを連れ出した・・・。

とにかく今しなければいけない事は
二人を追うことだ。

ロイはすぐさま船内から飛び出し、
懸命に二人の後を追いかけた。

そのロイの姿を確かめ、見送るようにして
船内に入り込むメテルの付き添い。

跪くメテルの手をとりささやいた。
「策略通りですね」

泣いていたメテルの顔は一変していた。
「あとはロイがアルテを亡きものにすれば・・・
かわいそうだけれど、青色人のアルテには
死んでもらうしかないのよ・・・
できれば、リオンがほんとうのことを知らないうちに・・・
アルテがリオンの命を狙っていると知ったら・・・
リオンはどれだけのショックを受けるか・・・」

「メテルさま! 
情が入っては成すべき事をしかねます!」

「そう、全ては緑色のため・・・
緑色を守れるのは私だけだから!」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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