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いつか会えたら 作者:水野 美晴

最終回   いつか会えたら



【いつか会えたら】



もう君は此処にはおらんけど、君の面影は消えず。
君を忘れられんわしは、ただ一人きりで此処にいる。
だって君だけしかいないよ、わしが愛する人なんて。
君以外考えられない。 君もきっとそうじゃろ?

君がいないと、あっという間に時間(とき)は経ち、
夏が過ぎ、秋も越え、真っ白な冬がきて…もう一度春へ。
その繰り返し。いっそこのまま一生目が開かなかったらとまでも思うよ…


ねぇ、いつか会えたら
良く晴れた日曜日にわしの車で二人きりで海へ行こうよ。
浜辺に車を止めてふたりきり。水平線でも眺めてさ。
どんな季節かわからないけど、青空がそこに広がってるならもう何もいらんよね。


君がいた頃をまるでわしは忘れたように、小さく震えてた。
君を思い出したくなかった。今はここにはいない、昔の君を思いだして。
わしだけひとり、年を重ねていってる事がわかって。

君は今でもわしの隣にいるんよね?  ずっと微笑んどるんよね?
いなくなったわけじゃない。
『人間』という形を失っただけだよ。そうじゃろ?


ねぇ、いつか会えたら
星の見える夜にわしの車で静かな街に出よう。
そして星を数えてみようよ。そしたら君はもう逃げれんじゃろ?


ねぇ、明治通り沿いの道路に素敵なオープンカフェを見つけたよ。
君が好きそうなパフェがいっぱいあるんよ。
そこでたわいもない話をしようよ。 何の話でもいいから。


ねぇ…届いてる?
わしの気持ち。





〈終〉

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