-参- 戦闘
プシュー。 ドアが開いて思った。
ヤベェ。
一目見てビックリした。その敵は、異様なくらい両手が巨大だ。俺の腰周りくらい。 「おいどうする?」と右のやつが言った。 「食べよう」と左。 そして二人同時に『うん。そうしよう』と言った。 ドヒュッ。と俺の腹に硬いものが当たった。と思った瞬間後ろのドアを吹き飛ばしながらすっ飛んでいた。 「いつつ・・・。あれ?」 痛くない。ちっとも痛くない。不思議だ。肋骨は粉砕しているかなと思ったが、ぜんぜん。ぜんぜん痛くないのだ。 「すっげえ」 その時だ、俺のスーツについているボタンの液晶から音がしてきた。 ギュイィーン。 何かを吸収しているような。そんな音。 「うおりゃっ」 と右手に力を込めてパンチを左のやつに放とうとした瞬間、またギュイィーンと今度は腕の関節から聞こえてきた。 そんなのを気にしないで俺は右ストレートを放った。 跳ね返されるな。と思ったが、ボンッ。と言う音とともに敵の後ろにあるドアに内臓が飛び散った。腕を見てみるとさっきまでの俺の腕と違い、少し盛り上がっている。 ニヤッ。と俺は笑い、今度は足に力を入れてすばやく網一匹の懐へ入りアッパーをお見舞いしてやった。 ドゴン。と音がして、硬い頭蓋骨が天井にぶつかっていた。 「おうぇ」 咲が吐いてしまった。 「おい、大丈夫か?」 と波木が咲の背中をさすっている。 「どうなっているんだ?」 自分でも信じられない。試しに近くにある座席を殴ってみる。やはりわたあめを殴るみたいに吹き飛んだ。 この服か?いや、それしかない。 「おい早く行こうぜ」 と急かす波木の声によって俺は我に帰った。 次の車両のドアが開いた。それと同時に列車が止まった。 『えっ?』 三人同時に言ってしまった。 プシューッ。ドアが開いたその先には1人の男性が立っていた。その男はキョロキョロと周りを見ると、質問してきた。 「なあ、これは何なんだ。俺は死んだはずなのに・・・、もしかして君らもかい?」 「ああ、そうですよ。もしかして黒い物体にやられたんじゃあないですか?」 「よく判ったな。そうだよ」 俺が「俺たちもなんスよ」と言おうとしたとき、突然男の手が俺の額へ向かって伸びてきた。常人だったのならば頭部を持っていかれていた。だがあいにく俺はもう人類のレベルを超えた能力を有していた。だから頭部をかち割られる前に、男の鳩尾にしょうていを叩き込んでいた。 「ウボォウ」 と男は変な声を上げて吹き飛んでいた。ズウゥゥン。と男が激突した壁が崩壊する。瓦礫に目をやると、そこに男の姿はなかった。 「何!?」 と俺が言ったのもつかの間、 「うおっ!」 問いって通路側にいた波木が吹っ飛んでいた。両手で座席を受け止めている。 「そっちか?」 と俺は次の車両へと移った。だが誰もいない。周りを見てみると一つ窓ガラスが割れていた。真上から、ひゅぅ。と刃物を振り下ろす音が聞こえてきた。 波木が「ふせろっ!」と言ったのと同時に天井から黒井サーベルが覗いている。その刀身には見覚えがあった。さっきの男の物だった。 ズズッ。とサーベルが戻ってゆく。ドンドンドンと天井を俺たちの後ろのほうに移動してゆく。ピタッ。といどうする音が止んだのと同時に、俺たちのさっきいた通路が綺麗に斬られていた。そこから覗いた怪物はさっきの男の面影を何一つ残してはいなかった。 「おい、ヤベェって」 「判っている」 走り出そうと咲の手を引っ張ったが車両が切断されてすっかりびびっている。そして、いつの間にか新幹線は動いていた。 「ふぅー」 と波木が息を吐いて、 「ココは俺に任せて先に行け」 と言うと 「俺だってかっこいいとこを見せたいからな」と咲のほうを向いて言った。 「じゃあ・・・、がんばれよ」 と言っていつの間にか開いている次の車両へのドアをくぐった。 ヒュッと天井から降りてきた黒井物体と睨み合った。武器は軍用ナイフと己の肉体のみ。 「邪魔者はいなくなった」とかすれた声で黒い物体が言った。 「我が名はアプス=v 「へぇ、楽しませてくれよ」 ビキビキと、腕に筋肉を波木は集約させていく。 と、相手もゴキンと腕の形を変えた。鋭そうな刀だ。かすかに振動している。 「すう」と息を吸い、
波木対アプスの戦いが始まった
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