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KURAITZ-壱ノ篇 作者:KASI-龍

第3回   -弐-始動
-弐- 始動   



「うっわぁぁぁぁぁぁぁ」
 波木が叫んでいる。ん?あれ、俺はさっき首を切られたんじゃぁ・・・。
 恐る恐る手を自分の首の根元に持っていく。
「ある」
 波木が怪訝そうな顔をしてこっちを見てくる。
「おいおい、大丈夫か?首はさっきから在っただろ?」
 さっきは自分が叫んでいたくせに俺を小馬鹿にした様に見てくる。
「でさ、ここってどこ」
「ああ、俺らさっきまで店にいたよな」
 いいかげんに呑気な波木も気がついいたようだ。そう俺たちが今いる場所は普通の駅ただ人がいないという点を除けば。
 ここには俺と波木、そしてさっきからいるそこに横たわっている1人の少女しかいなかった。
「おい、大丈夫か。おきてくれ」
 懸命に少女に呼びかける。歳は俺と同じくらいだと思う。とにかくかわいい。俺たちが通っていた高校にもいたが、片手に収まるくらいしかいなくて、しかもほとんど全員彼氏を持っていたしその彼氏も校内で十指に入りそうな美形ばっかりだった。
 っと、話がずれた。ふと波木に目をやると何か呟いていた。
 その呟きを聞き取ると「かんわいい」と鼻の下を伸ばして言っていた。
「おいっ!!」
 と少女に怒鳴るように耳元で叫んだ。これで起きなければ諦めるつもりだった。だが、少女は目を覚ました。
「ん・・・。えっ、ここ何所?」
 その質問に波木がすばやく答える。
「ここはね・・・。ん?俺もわかんねぇ」
「わかんないって・・・ってなにやってんの?!」
 そう言うのも無理はなかった。こともあろうに少女の尻を摩ろうとしていたのだ。俺はため息混じりで声をかけた。
「君、名前は?」
 びくっ、と身を強張らせた。俺も波木のように痴漢と思われているらしい。
 手を上げて「そこにいる痴漢とは一切関係ない」と公言した。
「で、名前は?」
 と言うと、
「普通、名前を聞くなら自分からじゃないの」
 と言われてしまった。
「これは失礼、俺の名前は大吾。守倭《すわ》大吾だ。そしてこの痴漢男が―」と言おうとしたとき恨めしそうに波木が「大吾〜」と言ってきたので真面目に「須藤《すどう》波木だ」と言った。
「私の名前は、咲。三鷹《みたか》咲よろしく」
 と手を差しだして来たときに波木が突然ドン、と押してきた。その拍子に俺は美咲の口へとダイブして俺の口と重なった。
「ん・・・」
 突然のことだったから数秒間硬直してしまった。
「やっ」
 どん、と胸を押しされて吹っ飛んだ。  
 俺は「げほげほ」と言って胸を押さえた。 
「あっ、すいません」と言って顔を背ける仕草はなんともかわいい。
「っと、ふざけている場合じゃないな」
 と原因を作った男が真面目な顔で周りを見ている。きょろきょろしているうちに何かに気がついたのか「おい、あれ」と言って指を指した。その先にあったものは、本来は駅の名が記されているはずの掲示板があった。駅の名前の代わりに書いてあったものは

「あの世」

 と書いていた。
「何これ」
 と三人同時に叫ぶ。もし夢だったら覚めかねないインパクトさがあった。だがあいにく夢ではなかったらしい。そして、何か他にも情報がないかと探してみると、時刻表が目に付いた。その時刻表には本来あるはずの時刻が記されてはいなかった。そこに在ったのは文字だった。

もーちょっとでくるよ

 それだけ。
「ふざけんなっ」
 と言って波木は時刻表を蹴飛ばした。と思っただけでモルで波木の足自体が時刻表をよけていた。これにはさすがに
「えっ?」
 と言ってぼーぜんとなっていた。
 そしてさっきあった文字が消えていき、新しい文字が浮かび上がってきた。

むだだよ〜ん

 まるで波木を馬鹿にしているようだった。
 そのときだった。突然、ゴーッという音が俺たちの後ろを通り抜けていた。後ろを振り向くとそこには普通の新幹線が止まっていた。
『はぁ〜い。みんな、はやくのってねぇ〜ん』
 とふざけた口調のアナウンスが流れた。
「早く乗ろう。」
 と俺は何気なく乗った。波木も俺のあとに続く。
「早く」と言って俺は躊躇している少女の手を引っ張った。
 少女が乗り込んだのと同時にドアが閉まった。
「ふうぃー」
 俺は胸をなでおろした。
 プシューッ。と、音を立てて扉が閉まった。
 アナウンスが流れた。
 
ピンポンパンポン。

『え〜、てめぇらの命は俺らのせいで亡くなりました。生き返りたかったら今そこに武器を転送するからその新幹線の第一車両まで来てくださぃ〜。そしてぇ〜、確か1分だったかそこらで1車両ずつ切り離していくから。
あ〜えっとどこだ?あっ、あったあったしかも1つの車両ごとに敵がいるから、一応全部殲滅してくだせぃ〜。あとは出て来たお前ら以外のもの≠ヘ全部敵だよ〜ん。』そして真面目な声色で


『躊躇するな』と。

 突然のアナウンスに三人同時に固まった。
「な、何?いまの?」
 と咲が沈黙を破った。
「ん〜、何だろうねぇ」
 と波木が話していると、またアナウンス。
『あ〜、今武器やスーツを転送したから、一応着ないと死ぬよ。あと、今からスタートね。あと敵の名前はTYP‐92・93一応、ん〜多分強い、よ。』
 ブツッ。
 切れた。
 その時、『ブゥゥン』と音がして一人一人の名前が書いてあるボックスが出てきた。
「おい、これ・・・」
 と波木がそう言ってボックスを開けた。そこには黒いスーツと軍用ナイフが入っていた。俺も自分の名前が書いてあるボックスを開けてみる。俺のボックスにも黒いスーツが入っていたが、波木とは違う武器が入っていた。それは黒く長く、そして鞘に入っている。それを引き抜くと黒いほっそりと綺麗な刀身。そう、刀だった。刀を鞘からすべて抜くとつばの部分に入っていたプロペラが回転し、『フィィィィン』と音がして黒い刀身が細かく振動した。
「こりゃぁい」
 と、空の波木のボックスに振り下ろした。『サクッ』とバターみたいに鉄のボックスが真っ二つになった。
 満足そうに俺は頷いたあと、
「お前は?」
 と波木に聞いた。波木は、
「俺のもなんか切れるぜ」
 と自信たっぷりに言ってきた。
「さぁて、君のは?」
 と波木が咲に聞いた。
「え、私の?私のはこんなの」
 と銃のような形状をしたものを見せてきた。正直言って俺には分からなかった。
「ためしに撃ってみればいい」
 と俺は波木の、先ほど俺が切って無残にも真っ二つのボックスを指差した。
 咲はトリガーに指をかけて思いっきりトリガーを引いた。
『コォォォォッ』
 そんな音がしたと思ったときにはボックスは消えていた。
「う、そ?」
 ビックリするのも無理はなかった。
「まあいい。早くドアを開けよう」
 と急いでスーツを着た。色々な関節のところに丸いボタンのような物が取り付けてあった。そのボタンの真ん中の部分には、液晶のようなものが入っていた。その液晶には細いバーみたいなものが表示されていてその上にGood≠ニ緑の字で書いてあった。
「けっこう」と咲は体を動かして「動きやすいね」と言っていた。ちなみにこのスーツは体にぴったりとフィットしていて、俺たちのような男には無縁だが咲のような女には出る所が出て引っ込んでいるところは引っ込んでいるのだ。だからけっこう男は目のやり場に困ってしまう。そんな視線に気が付いたのか咲は「ばかっ」と言って顔を赤らめてしまった。ニヤニヤしながら波木はこの俺の状況を楽しんでいるようだった。
「じゃあいこう」
 と言って俺たちは敵が待つ車両に足を踏み込んだ。
  



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Novel Editor by BS CGI Rental
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