4 夢=現実
その日の夜、あたしの家に電話がかかってきた。 「はい、松崎ですけど。」 「智那!?」 声の主は華奈だった。 「今すぐそこの○×公園にきて!話したいことがあるの。」 華奈はそれだけを言い終えると「なんで?」と聞いたあたしの質問も聞かずに素早く電話を切ってしまった。あたしは母に「ちょっと行ってくる」と言い、家を出た。
○×公園には歩いて8分でつく。あたしは華奈に「今すぐ」と言われたのを思い出し、ちょっと走った。走ったおかげで5分ぐらいで公園についた。公園には華奈以外に中本祐馬と惷亮がいた。 「どうしたの?みんな勢揃いで。」 「俺らもまだ聞いてない。」 夜にいきなり呼び出されたからか、中本祐馬は不機嫌そうに答えた。 「華奈、何があったの?」 華奈の顔は青ざめていた。 「もう…取り返しがつかない…」 あたしは華奈の言葉に動揺を覚えた。 「おい、水野。どうしたんだ?」 動揺しているあたしと比べ、中本祐馬は震えている華奈に冷静に聞いた。 「…ごめん。あたしだけ取り乱しちゃって…。」 ようやく華奈は冷静さを取り戻したみたいで、体の震えは治まったみたいだった。華奈は深呼吸をし、真剣な目で話し始めた。 「あたしね、今日家に帰ってベッドの上に寝ころんだら、寝てしまっていたの。1時間ぐらい寝てたんだけど、また夢を見たの。その夢にね、誰かの声が聞こえてきたの。」 「誰かの声って?」 惷亮の質問に華奈はビクッと肩を動かせた。改めて華奈は冷静な顔に戻し、こう言った。 「…あたし。」 小さな声だったが周りが静かだったのではっきりと聞こえた『あたし』と…。 「どういう意味だ。」 惷亮は顔を歪めながらも華奈に聞いた。 「あたしもわけわかんないよ!わかんないけど…確かにあたしの声で『ほら!夢のとおりになったじゃない!もう取り返しがつかないよ。あたし達どうなるの?こんな事になるんだったら出会わなければ良かった…。』って。たぶんあたしに話しかけてるんじゃなく、誰かと話している一部が聞こえてきたんだと思うんだけど…。」 「でも、それだったら『あたし達』って完全に俺たちの事って決まってるわけじゃないんじゃないか?」 「声だけじゃないの!声の他に映像も見えたの。その映像にね、あたしと智那と惷亮と中本くんがいたの。で、あたし達がいた場所が問題なの。」 中本祐馬の問いに華奈は素早く答えた。 今度は「その場所って?」と質問する人はいなかった。あたしはこれ以上聞くのが怖かった。華奈が言うこと全部が本当になっていきそうで。華奈は目を瞑り、もう一度開き、あたし達をしっかりと見つめてさっきの話の続きを始めた。 「あたし達がいた場所はビルが壊れた跡のがれきの上。周りを見渡しても全部がビルが壊れた跡で砂が宙に舞ってるだけ。草一つも生えていないし、人間が誰一人もいない。動物と呼べるものはあたし達だけ。あたしの視界から見えなかっただけかもしれないけど…。」 誰も何も言わなかった。ただ、鳥の鳴く声が虚しく聞こえてきた。あたしは何も一言も言わず、この場から立ち去った。
あたしは帰ってきてから今日は寝ない事に決めた。『もう夢を見たくない』これが理由である。あたしはコーヒーを飲みながら、漫画や小説、いろいろな物を読みあさったが飽きてきた。飽きてきたというより、眠たくなってきた。という方が適切であろう。目にセロテープを貼ろうかと考えたぐらいである。さすがにそれはやめたが。 そんな変な事を考えてる間にいつのまにかあたしは寝てしまっていた。
…あたしは次の日起きたら夢の中にいた。現実の『あたし』は病院の中で眠っていた。あたしの隣のベッドには華奈、惷亮、中本祐馬もいた。医者は困った顔で聴診器をはずしながら、あたし達の母達にこう告げた。 「原因不明です。とにかく昏睡状態に陥ってる事は確かです。けれど、理由もなく同じ学校の同じクラスの4人が同じ状態になるとは前代未聞です。何か原因があるはずなんですが、お母様方に何か心あたりはありませんか?」
あたし達は次の日から夢が現実になった。
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