3 暗闇2
教室に入ると、先生はまだきていない。なんとか間に合ったみたいだった。あたしは急いで席に座り、教科書を机の中につっこんだ。するとちょうどよく、先生が教室へ入ってきた。あたしは内心良かったとため息をつきながら数学の教科書を出した。 1時間目は担任の教科、数学だった。
授業中、華奈から手紙が回ってきた。手紙には「今日、なんか関係ありそうな夢見た?」と華奈の字で走り書きがしてあった。あたしは朝、忙しくて忘れていたが、ものすごく怖い夢を見たことを思い出した。あたしはすぐさまノートを破り、今日見た夢をその紙ぎっしりに書いた手紙を華奈に渡した。それから1時間目が終わる間に華奈からの手紙の返事はこなかった。
1時間目の終了のチャイムが鳴ると同時に、華奈と惷亮とあのまじめな中本祐馬がいっきにあたしの席に押し寄せてきた。最初に口を開いたのは惷亮だった。 「俺ら、また同じ夢を見たみたいなんだ!!」 惷亮得意の大声は、クラス中全員に聞こえたみたいだった。もちろん先生にも聞こえたみたいで、 「柏野!女子を口説く前にまず授業が終わったら礼だろう。中本も、水野もだ。早く自分の席に戻れ。」 柏野はこういうのはしょっちゅうだが、先生も中本祐馬にはビックリしたみたいで、いつものギャグより少し控えめにしたもたいだった。中本祐馬は渋々と一旦席についた。それを見た惷亮と華奈も一旦自分の席についた。 「はい、学級代表あいさつ!」 学級代表の『二村朋香』と『川上涼也』がクスクスと笑いながら「礼!」と言った。と同時にまた華奈と惷亮と中本祐馬があたしの席へきた。華奈は笑いを堪えているつもりだったみたいだったが、顔が笑っていた。あたし達は人気(ひとけ)のない、屋上へ向かった。 「で、さっきの続きなんだけど!」 屋上についた途端、惷亮はさっきんの話の続きをきりだした。 「ちょ、ちょっと待って。なんで中本くんと惷亮があたしと同じ夢を見たってわかるの!?」 中本祐馬と惷亮は同時に華奈の方へ向いた。 「授業中、手紙回したじゃない?その返事を中本くんと惷亮にも見したの。」 と華奈はピースをつくり、笑顔で答えた。あたしは華奈に「一言言ってよ!」と文句を言うつもりだったのに、華奈の顔を見てふきだしてしまった。華奈は「何よー」とでも言いたそうに口を尖らせた。華奈が怒るとあとが怖いので、あたしはあえて話をもとに戻した。 「…どんな夢だった?」 「人によって個人差があって全部同じとまではいかないけど、俺ら4人は同じ場所にいたんだと思う。」 「全部同じじゃないのか!?」 中本祐馬が答えた後すぐ、惷亮が口を挟んだ。 「たぶんな。だって俺、松崎の手紙のいた所は同じだけどあったことが違う。…でも、声の方に向かっていたのは同じだ。」 「そういえば、俺も声の方に向かって走ってたような気がする…。」 と惷亮は頼りない返事を返した。 「あたし…声は聞いたけど、声の方へ行ってない。」 と華奈はちょっと笑いながら言った。 「じゃあ華奈は何してたんだ?」 「えーとね…最初の死体見たときに気絶しちゃった。声は聞こえてたんだけど。」 華奈は笑いながら言った。 「俺はちゃんと声の方へ行ったんだけど、途中で気絶した…。」 中本祐馬も笑いながら言った。 「ねぇあたし思うんだけどさ、夢の中であたし達に似てる小さい子が出てくるじゃない。その子達ってもしかしたら前世のあたし達じゃないかって思うんだけど…。」 「本当にその可能性は高いぞ!?俺達に似てるけど、俺達じゃないんだ。もしかしたら前世の俺達かも知れない。」 中本祐馬は興奮気味に話した。けれど、あたしはそれを否定するように言った。 「もし、それがあたし達の前世の自分として、じゃあなんで昔のあたしは泣いてるの?なんで死体があるの?おかしいよ。……怖いよ。」 …自分の本音を言ってしまった。『怖い』 惷亮は一人、屋上の真ん中へ行きいつもより真剣な口調で話し始めた。 「俺も、はっきりいって怖い。でも俺達が出会ってしまった以上、もう逆らえない。俺達はもう前へ進むしか道が残ってないんだ。」
あたし達はそう言って前へと進んだね。地球の思惑通りどんどん前へと。 でもあたし達、遅かれ早かれ、きっと出会っていたよ。
そういう運命(さだめ)だから
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