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過去×現実×未来=理想 作者:

第3回   第一話 夢   〜2 きっかけ〜


2  きっかけ



夢を見た。とても怖い夢。でも起きたときにはどんな夢だったかすっかり忘れてしまっていた。


「今日、俺すんげぇ怖い夢見たんだ!!」
教室に入ると、柏野惷亮が大声で友達にそう話していた。
うるさいな…と思いながらあたしは自分の席に座った。柏野惷亮はまわりなんか気にせずに夢の話を話している。
「だぁかぁら!本当だって。信じろよ!俺は真っ暗な闇の中にいて何回も何回も誰かが俺に言うんだ『地球ハ滅ビル』って…。」
「お前、それSF映画の見すぎ!」
「本当だってー!!」
あたしはその話を聞いて、思い出したと同時に割れそうなぐらいに頭に激痛が走った。その瞬間、何かの映像が頭をよぎった。真っ暗な闇の中であたしに似ている誰かが泣いている―。
「智那?」
あたしはいつの間にか側にいた華奈に呼ばれ、我に還った。
「どうしたの?智那。なんか目が泳いでたよ?」
「全然大丈夫!ちょっと考え事してただけだから。」
「そう?」
びっくりした…。あたしは柏野惷亮と同じ夢を見ていた―。


あたしは柏野惷亮に本当にあたしは柏野惷亮と同じ夢を見たのか、柏野惷亮に直接聞いて確かめてみようと考えていた。一時間目の授業中、あの夢のことばかり考えていて勉強が頭に入らなかった。だから柏野惷亮に確かめて本当にその夢を見たのかを確かめようかと考えていたのだ。
でももし、あの夢のことを柏野惷亮が冗談として言っていたのなら、あたしは柏野惷亮が好きだから「一緒の夢見た」ってことで喋っているなんて思われたらいやだ。それにあたしは柏野惷亮の事を『好き』『嫌い』に分けてどっちかというと『嫌い』の方に入る人間である。嫌いな奴を好きだと勘違いされるなんてまっぴらごめんである。けれど、柏野惷亮に確かめる以外、確かめる術がない。
……あたしは迷った末、言う事にした。


「あの…柏野くん、ちょっと聞いていい?」
「え?何?」
「えーと、その、ですね〜…」
あたしがここじゃ言いにくいと察してくれたのか、廊下に出てくれた。
「柏野くん、さっきね…」
「惷亮でいいよ。」
(どっちでもいいよ…。やっぱ苦手だ!柏野惷亮!!)
「あ、じゃあ惷亮、さっき夢の話してたじゃない?」
男子のことを下で呼び捨てにするのは何かこそばゆかった。
「うん。」
「あたしも今日、柏…いや惷亮と全く同じ夢を見たの。」
沈黙が流れた―。やっぱり言わなかった方が良かったのかも。と後悔した。
けれどその後悔は全部無駄なものだった。
「すげーーーーーーーーー!!!!!」
あたしはこの声にびっくりした後、恥ずかしくなってきた。みんながこっちをジロジロと見てるのだ。
「大声出されたら恥ずかしいですけど……。」
あたしの声は興奮している惷亮の耳には届かなかったみたいであった。
「あ、悪い。いきなり大声出して。実はさ、同じクラスの『中本祐馬』と『水野華奈』も俺と同じ夢を見たってさっき俺に言いにきたんだ。」
「え!!それって本当!?」
予想もしない言葉だった。中本祐馬と水野華奈もあたしと同じ夢を見てたなんて―。
「嘘言ってどーすんだよ。」
惷亮は笑いと呆れているのが混ざった声であたしに返事をしてくれた。





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Novel Editor