1 教室
入学式から5日がたち、クラスの雰囲気にとけ込めるようになってきた。 あたしの席は前から4番目、左から2列目の席だった。あたしの隣の席の人は元同じ小学校の『中本祐馬』だった。一回だけ5年生のとき、同じクラスになった事があるけれどあまり喋らないし、クラスの男子ともあまり友好な関係も築いてなかったので、いつも一人だった。いわゆる『クール』って感じの男子だ。 華奈はあたしの後ろの席だった。華奈が後ろから「耳かして」というので耳を近づけると、 「中本祐馬くんってかっこいいね〜。モテてたでしょ?」 「も、もしかして華奈…惚れちゃっ」 「違う!!!!!」 言い終わる前に断言されてしまった。けれど確かに中本祐馬はかっこいい。もちろんモテてたし。小学校の頃、『バレンタインチョコをクラスの女子、全員にもらった』という噂があったぐらいだ。でも、噂じゃなく本当らしいが。 「かっこいいんだけど、なんか…。失礼なんだけどあたしのタイプじゃないっ!」 あたしは華奈の言葉を聞いて、授業中なのにかまわず大声笑ってしまった。 「松崎ー。なにがおかしいんだ?」 「…何もありません。思いだし笑いです。」 まわりでクスクスと笑い声が聞こえてきた。あたしはさっきよりもっと声のボリュームを落として華奈に話しかけた。 「華奈のせいであたしが怒られちゃったよ。」 「智那が笑うからいけないんでしょ!」 「だって華奈が面白いこと言うんだもん。」 華奈と言い合いをしているといきなり教室の戸がガラリと音を立てながら開いた。 「すいません。遅刻しました〜!!」 大声を出して教室に入ってきたのはこのクラスで一番やんちゃな奴『柏野惷亮』だった。寝坊して遅刻したみたいで、茶髪に染めている髪の毛がはねていた。 「お前、これで遅刻したの3回目だぞ!?」 先生も呆れてる様子で柏野惷亮を見る。 「今日は母が倒れてしまって…!!」 「昨日も同じこと言ってたぞ…?」 「え!じゃあ妹がぐずるので。」 クラスの中で笑いの声があがった。先生はもう諦めたみたいで「柏野、早く座れ…」と言い、授業を再開した。 (よく茶髪で学校くるよね…。柏野惷亮、苦手だ…。)
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