作品名:RED EYES ACADEMY U 脱走
作者:炎空&銀月火
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凛は、唖然として目の前の人物を眺めていた。同じ色の髪、同じ色の目、同じ色の肌、そして殆ど同じ顔。唯一違うのは、切り裂くような冷たい目線と、髪型。凛は後ろで長髪を無造作にくくり、彼女は風に髪をそよがせていた。
「だ…」
「私は、サブ・オリジナル。あなたを抹殺する者」
 言うなり、驚愕で動けない凛へ駆け出す。その全身から、氷の凶器のような殺気が流れ出していた。
「…ちっ」
 すんでの所で拳をかわす。一歩遅れて凛も戦闘態勢に入った。
(今は余計なことを考えるな…こいつは、ヤバイ)
 それは理屈ではなく本能で感じる危険。明らかに、目の前の相手は自分と互角、あるいは自分以上の技術を持っていた。
 残像の残るような勢いで、蹴り、手刀が掠める。当たっていないが、その衝撃だけで皮膚が破れ、血が流れ出した。
(くそっ…速い。動きを止めないと…)
 後ろへ下がった凛が、小石に躓いてバランスを崩す。暗殺者はそれを見逃さなかった。 頭へ真っ直ぐ振り下ろされる手刀。
「さようなら、五番目の本物…」
 凛の耳に、衝撃的な言葉が入った。
(オリジナル、だと…?)
どういう事だ、それは……。
混乱と動揺、トラウマの復活。様々な条件が重なり、脆くなっていた精神は、一瞬で崩壊した。

《グォォオオ…》
頭の中で、獣のうなり声が聞こえた。
 ドグン…
 心臓が、大きく振動する。
 ドクンドクンドクンドクン…
 心拍数が一気に上がり、そして冷める。
直後、凛の全身を激痛が走った。
「……ッツァ!」
悲鳴を上げて、横へ転げる。そのおかげで暗殺者の手刀がはずれた。
 冷徹な視線の横で、凛の体が急速に変化を遂げていく。
 体中の細胞が、熱い。
 体液が沸騰し、遺伝子が回る。地面に這い蹲って、彼女は吐いた。そのげっそりとした顔に、インクがにじむように黒いくまが現れる。目の周りを囲む、黒い痣のような模様。そのなかで、真っ赤な虹彩が徐々に白目を浸食し…
 視界と脳裏が真っ赤に染まった。
「う…あぁぁぁああああああっぁあぁ!」
 絶叫をあげる前で、彼女の意志がはじき飛ばされる。代わりに獣の叫びを上げて、もう一つの意識が急速に浮上した。
それは、理性を持たないただ血を求める殺戮の獣。
「ググ…グアァアァァアアア!」
 血に飢えた獣が、彼女の身体を操り、支配する。はじき飛ばされた凛の意識は、暗闇に埋まりかけていた。
「がぁぁぁあああああ!」
 僅かに残った視界の隅で、訝しげにこちらを伺う暗殺者がいた。それを見た“獣”が歓喜の声をあげる。
(エ…モノ…)
 次の瞬間、信じられない動きを見せた。
 一瞬で暗殺者に正面から忍び寄り、後ろから拳を突き入れる。暗殺者に、驚愕の色が走った。しかし「それ」は止まらない。地面に倒れた彼女に、全身全霊で攻撃する。さっきまで殆ど当たらなかった攻撃が、全て避けられていた蹴りが、おもしろいほど当たる。彼女の目が、凛についていかない。とうとう彼女は動きを止めた。
…しかし、凛は止まらなかった。
 歓喜の声をあげて攻撃する。それは正に、「鬼」。暗殺者が血を吐いたのを見て、「凛」は悲鳴を、「それ」は喜びの声をあげた。
(もう止めろ…!もう止めろ…!)
 しかし体は止まらない。「凛」の脳裏に、血の海に浮かぶ両親の姿が浮かんだ。
(止めろぉぉおおおお!)
 渾身の力で、「牙」をむく。一瞬、それが怯えたように見えた。その隙に、一瞬だけ自由を奪い返す。
(このまま行くと、この子は死んでしまう…)
 それには、こうするしかない。
 凛は、息を止め、自分の右手の最も重要なツボを、深く刺した。
瞬間、全身を駆けめぐる衝撃。電気に打たれたように大きく痙攣し、彼女の身体が硬直する。口からは悲鳴が漏れた。
(これで、なんとか…)
 そして、彼女の意識は闇に飲まれた。


中書くならば
はーい、狂戦士化です。ってかいちいちルビ振ると、後々大変なので書いてないですが。
狂戦士化=バーサーク
狂戦士=バーサーカー
五番目の本物=フィフス・オリジナル
です。他になんかあったっけ・・・。まあ、こんなもんですか。ってか狂戦士化の設定はこの次の作品のときぐらいに詳細が決まったので、まだなんか不安定です。突っ込めます。ってか第一作はもう別物かもしれない・・・。
読み返して思うんですが。
凛とか黎って言葉遣いだけ見てたら女の子に見えませんね・・・どっちかって言うとおっさん?
これはやばいと思い、第4作ぐらいからは意識してますが・・・それはつまり、普段の自分の言葉遣いがおっさんくさすぎるのが問題か・・・?
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