作品名:トリガー
作者:城ヶ崎 勇輝
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 「わが部下よ、やめ、やめだ。とどめは私が刺す。その前に、私の国を目に焼き付けておくが良い。いい思い出になればいいな」
城崎は皮肉たっぷりと言った。そして、玉座の肘掛についてあるスイッチを一つ押した。

    〜トリガー〜 引き金なれ

彼の目の前に大きなスクリーンが出てきて映像が映った。城崎専用の最新鋭大画面テレビだ。
‘本日正午、国会議事堂にて小規模の反乱が起きました。この反乱は30分ほどで鎮圧され、反乱を起こした国民は全て殺されました’
今朝天気予報をしていたお天気お姉さん(この局の女子アナ)がソワソワしながら城崎向かって話している。
「国民はいまなお抵抗しているムシケラがいるなんて思いもしないだろうな」
城崎が高笑いをした。
しかし、城崎の高笑いはすぐに止まった。
急にニュースのお姉さんの顔が驚きの顔をしたのだ。口をあんぐりしている。
次の瞬間、女子アナの他に数人押し込んできたのだ。その中には見覚えのある人物もいた。
(し…司令官。そして…た、たみ!?なみまで!)トリガーは口を開きそうになったが何とか口元で押さえた。いや、今の彼には声に出す事すらできなかった。
‘私は自衛隊の中のエリートであるシューティング隊司令官、宮本だ。今、シューティング隊の説明はいらない。ただ我々はクラックエイジを倒し、前のような日本にして行きたいと思っている者だ。そして今、私の部下2名がクラックエイジの長である城崎と戦っている。もしこの戦いに勝てば、クラックエイジは壊滅し、日本はあの時のような平和な社会になるだろう’
司令官のゆっくり、落ち着いた声が金属の部屋に響き、エコーとなる。
城崎は怒りで顔が真っ赤になり、すぐにスイッチを消そうとしたが銃弾が肘掛に命中し、映像は一生消えることはなくなった。
トリガーは重い体を動かして振り向くと、そこには改造M24を持ったチーが倒れていた。銃口には煙が立っている。手首を剥ぎ取られ、腹から血を流しているチーが気力を振り絞って撃ったのだ。
「トリガー、アンタが泣いちゃおしまいやで…」
チーはそう囁くとバタリと音を立てた。
‘今、戦場で戦っているのは吉川千惟。優しさと勇気を持ち、そして仲間思いだ’
テレビでの問いかけはまだ続く。
‘ワシは千惟のお爺、人からDrハカセと呼ばれておる。ワシもシューティング隊をやっておって、孫の使う武器を作ったものじゃ。どうか皆さん、日本のため、未来のため、平和のため、力を貸しておくれ’
いつか説明したDrハカセ…チーのお爺さんは説得した。
‘もう一人は神谷鳥牙。自信と技術に優れ、そして何かの引き金となってくれる者だ’
司令官がそう言うと、カメラは親子を映した。
‘私は鳥牙の妻です。私はあの人を愛してます。いまでも、いつまでも。そして、あの人は今、死の危機に直面してます。どうか、どうか、皆さん力を貸してください!お願いします…’
たみは涙ながらに語った。
‘パパ…頑張って’
なみがちっちゃな声で言った。
‘トリガー、チー、そして城崎、見てるか。我々はこのテレビ局にいるクラックエイジを倒し、今にいたる。もちろん、警察と自衛隊、国連軍を出動させた。どうやら2人と、死んでしまった87人の勇者、彼らのおかげで侵入はすぐにできたとの情報が入った。城崎、お前の組織が壊滅するのも時間の問題だ’
「クソ…こうなったら皆の者、この2人を心ゆくまで潰してしまえ!」
城崎が怒りに任せて怒鳴った。しかし、反応はない。
「首相、いや、城崎勇一。俺は…騙されていたのか。ずっとトリガー…いや、神谷さんの話や、みんなの話を聞いて俺たちがどれほどのバカをやったのかがよくわかったよ。神谷さん、あなたはやっぱり引き金だ。俺たちのトリガーだ!」
銃を城崎に向けながらクラックエイジの一人が言った。
「城崎、どうだ。汚ねえ血…全て抜き取ってやったよ。残るはお前だけだ、城崎!」
トリガー…いや、神谷鳥牙がゆっくり立ち上がった。
千惟も力を振り絞って立った。
クラックエイジが一歩前進した。
そして、議長席とつながる穴から国連軍と自衛隊、それと警察がやって来た。
城崎は、追い詰められた。

「ク…クラックエイジは滅びぬ…何度でも蘇るさ!世界は我々の元にある!ハハハ、ハッハッハ!ハッハッハッハッハ……」
城崎勇一は気がおかしくなったかのように高笑いをし、そのまま警察によって手錠をかけられた。
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