作品名:RED EYES ACADEMY V 上海爆戦
作者:炎空&銀月火
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……………。
…………………痛い。
右の手首と二の腕に、焼けるような痛みを訴えて、凛は目を覚ました。
「………!」
驚いて目を見開く。彼女がいたのは見知らぬ倉庫。どうやら、薬を飲まされたあと運ばれたらしい。後ろに振り返ろうとしてやっと気づいた。
「…オイコラ。これはさすがに、悪趣味だ…」
左右の手首と二の腕、両足首と首にはめられた鋼鉄製の楔。鈍色をした無骨な楔がホッチキスのように彼女を壁に縫い止めていた。
 ためしに腕を振ってみるが全くの無駄。がっちりと痛いほどに止められた腕は、ぴくりともしない。
「はぁ…」
諦めた彼女の目の前のドアが突然開く。そこから入ってきたのは先程の男。
「あらためましてこんにちは。私の名前は」
「知ってる。特Aのレイファン・スカランド。かなり優秀で、サクセサー入りも検討されてたって聞いたけど?」
「…さすが、たいした記憶力ですね。五番目の本物。ところで貴方に逢わせたい人が二人います」
「…その、五番目の本物っての辞めて欲しいな…。一応私には“李 小牙”っていう偽名と“潮沢 凛”っていう本名がある…」
言いかけた口が止まった。代わりにその目が大きく見開かれる。
ドアから入ってきたのは、二人の男女。一人は小柄な男、一人はもっと小柄な少女。
「将志…それに、おまえ…」
「“サブ・オリジナル、潮沢黎。”だ」
「小牙…悪い…」
「将志…」
この状況と、将志の顔に浮かんだ表情から、だんだん事実が読めてきた。要するに彼は
「お前が居た暗殺組織って、アカデミーだったんだ…それで、私の情報、捕獲時の協力と引き替えにアカデミー復帰を図った。…そんなところか?」
将志は何も言わずにただうなだれる。それは、明確な肯定の意思でもあった。
そしてレイファンが更に残酷な現実を告げる。
「これより、この二人には“上海金色雑伎団”掃討へ向かってもらう。雑伎団と言ってもただの人間。この二人と我々ならば大丈夫だ。―関係者は、全て潰す。これが、アカデミーの法則だっただろう?」
凛が目をむいた。
「おい!止めろ!彼らは関係ない!私は何も話していない!彼らは関係ないんだ!止めろ、やめろ、ヤメロ!!!!!」
絶叫する凛を残し、三人はその場を去っていった。最後に黎は不気味な笑みを浮かべて。

「小牙、遅かったじゃないか。それに将志も。どこまで行ってたんだい?」
受付番をしていたスタッフの一人が笑いながら話しかける。いつもと二人の様子が違うのに気づかずに。
「え、えぇ。ちょっと遠出を…」
「なら、はやくいってあげな。今日の調理番、麗香だから怒ってるぞ?きっと…」
「さようなら」
小牙が口を開いた。いや、それは小牙の顔をした別人。スタッフが何か聞く暇もなく、彼の腹に小さな穴が開く。銃口にしては小さすぎ、しかし致命傷にいたる傷が。
「悪いな。命令なんだ」
すまなさそうに将志がいう。その目の前で、あっけにとられたスタッフが崩れ落ちた。
「…一人」
冷たい声で呟いて小牙―いや、黎は、血の付いた小指を振った。

「出せ! ここから出せ!」
絶叫しながら凛は腕をめちゃくちゃに引っ張った。しかし、そんなことで戒めが解けるはずもなく。
「…ちくしょう…」
こうしている間にも、雑伎団のメンバー達が死んでいるかもしれない。
―やはり、アカデミーは人の命を軽視しすぎている。
人間を、ただのコマとしてしか見ていない。
「なんなんだよ、アカデミーってなんなんだ!レッドアイズってなんなんだよ!!!」
彼女の疑問に答えられる者は、いない。ただ空虚な叫びだけが暗い倉庫を走っていった。

「お答えしましょうか?」
不意に、暗がりからの声。そこから現れたのは、さっきこの部屋を出て行ったはずの男。
「貴様…あいつらと一緒に行ったんじゃなかったのか…」
「えぇ。貴方の様子を見たくてね。…それに、解らせてやりたかったんだ。“オリジナル”と言えども、ただの無力なガキに過ぎないって事をね」
そして彼は不気味に嗤う。その嗤いが、凛の怒りを燃え上がらせた。
「…んなんだよ…」
低い声が、漏れる。
「ん?」
脳天気に聞き返したレイファンに、凛は怒声と、疑問と、罵声を一気に投げつけた。
「なんなんだよ、って言ってんだ!アカデミーってなんなんだ、オリジナルってなんなんだ!!私は何も知らない!何も説明されてない!!私達は人間ではないのか?レッドアイズと呼ばれる物にも明らかな能力差があるのは何故なのか!?説明しろっ、レイファン!!」
「…ほう」
黙って凛の叫びを聞いていた彼が、意外そうな声を漏らす。怒鳴られた事への怒りはなく、彼の顔にあるのは優越。
―嫌な感じの奴だ。
凛はふと思った。
「…君は知らないのかね?我々キメラ・レッドアイズと、本部の幹部達―オリジナル・レッドアイ達の違いを?それどころか人間達との違いも知らないと?それに、どうも君は自分が五番目の本物という自覚があまり無いようだ」
「だから、教えろってんだろ!?」
激高する凛を、哀れむような眼で見て、溜息をつく。目を閉じて、彼は気障な口調で語り始めた。
―凛が知らなかった、全ての全貌を。


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