作品名:RED EYES ACADEMY U 脱走
作者:炎空&銀月火
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(………)
 その頃凛は、一人で部屋にこもっていた。枕を抱えて自問自答を続ける。
(特殊暗殺部隊…そこに移ることは、アカデミーの中で最高の地位を得ること…。名誉なこと…)
しかし。彼女の中の、ある記憶が彼女を躊躇させていた。
(暗殺部隊…人を、殺す…?両親のように、殺される…?私みたいな、孤児を作り出す…?)
父と母は、十年以上前に何者かに殺された。家に忍び込んできた強盗犯に撃たれたらしい。アカデミーからはそう説明されていた。
孤児。その言葉に思い当たって凛はハッとした。今までそんな考え方をしたことがなかった。いやそれどころか、アカデミーの中では「親」という概念が全くない。親の話をする者は全くいないし、親が訪ねてきた、と言う話も聞かない。
 どうしてだ?と考えていた時、ノックの音がした。
「どうぞ」
 沈んだ声であることを自覚しながら、隠そうともせずに凛は言った。
 入ってきたのは事務の女性。手に書類を抱えている。まさに「事務的な」口調で彼女は告げた。
「潮沢凛さんですね?あなたに最初の指令が出ています。ターゲットは日系アメリカ人の富豪、マサト・ジョージ・ノムラ。暗殺日は、明日です」
資料、おいときますねと言って、彼女は出て行った。
 のろのろと資料に目を通す。マサト・ジョージ・ノムラ。四十八歳。父マサヒト・ノムラから事業を引き継ぎ、二代目のノムラコーポレーション社長。
 最後のページをめくった時、彼女の手が止まった。そこに載っていたのはターゲットの写真。その写真の人物は、
 …夢に出てきた、彼女の父親によく似ていた。

「凛、大丈夫かな…?」
 ハデスが心配げに言った。
「さぁ…。あいつ、私達と違って“親”の記憶があるからね…。“人”を殺すのにはだいぶ抵抗があるんじゃないかな…」
 心配げに話す二人の耳を、突如サイレンがけたたましく打ち鳴らす。
「脱走者です! 脱走者です!」
 ダンッと椅子を蹴り倒して立ち上がる。ハデスが真っ青な顔で呟いた。
「まさか…脱走って…」
 あの馬鹿…!
 内心凛を怒鳴りつけ、レシカは唇をかむ。この組織の鉄則一。
“裏切り者には、制裁を…!”


中書くこと
えーっと。やっと話が動き出しましたね。ってか、初期の作品見るのってめちゃくちゃ痛いんですが。(泣
はい。この話、本筋に入ってきました。脱走してからが本番です。
ってかこの作品、第二作のくせに《序章》ですからね・・・。
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