作品名:自称勇者パンタロン、ずっこけ道中!
作者:ヒロ
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その部屋は既に戦闘が行われた後だった。
部屋には何者かが倒した巨大な双頭の蛇が横たわっている。その首は両方とも一刀で切断されており、体は物凄い重圧で潰されたようにぺしゃんこになっていた。どのようにしたらこんな風になるのだろうか。到底人間の仕業とは思えない光景だった。倒した相手に興味があるのか、ゼルドが切断された部分をさすりながらジッと凝視している。
「先を越されたか……」
メイスンがチッと舌打ちをした。
「あーあ、こんな楽しそうなオモチャ、僕が遊びたかったなぁ」
死体を見ながらニコルが残念そうな顔をしている。
「冗談じゃない、こんな強そうなモンスターと戦えるかってーの!戦うなら一人で戦えってーの!」
部屋の隅で俺は小声で力強く呟いた。
「何か言った?パンタロン」
ニコルがこちらを振り向く。
「い、いや、別に……」
なんで聞こえるんだよ!この地獄耳め……。
「コレを倒した奴もなかなか腕がたちそうだけど、そんなの関係ない。黒竜騎士団の僕達が紫竜騎士団のグズ共や冒険者達になんて遅れを取るわけにはいかないからね。『降魔の杖』は僕達が手に入れないと」
横たわる双頭の蛇に手を向けたニコルは、その残骸を一瞬で燃やし尽くした。不敵な笑みを浮かべるニコルだが、明らかにその目には出し抜かれたことに対する怒りが浮かび上がっていた。
もし、こんな怪物をこんな完膚無きまでにする相手とこいつらが対峙したら、一体どうなっちまうんだ。俺は思わずブルッと身震いした。
「先を急ぐぞ」
俺達はその部屋を後にした。
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