作品名:Who is she
作者:InVillage
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―――僕らはタクシーで駅の方面へ向かった。
僕は一人で園山家専属以外のタクシーに乗った事が無かった。それに僕はいつもお金はカードしか持っていない。そこで、タクシーでカードが使えるのか彼女に聞いたところ、「私が払っておきます」と言われてしまった。こういう時、男なのにみっともない気がする。
僕のご飯がまだ済んでなかったので、彼女も一緒に駅前のファーストフード店で食事をすることにした。
ハンバーガーを食べてる時に彼女が「園山家の人間がファーストフードなんていいんですか?」と聞いてきたので、僕は「値段より味が大事なんですよ」と教えてあげた。
「ここです」
僕らは駅の近くの人通りの少ない裏通りの楽器屋に着いた。
店内に入ると彼女が「へー。ギター沢山ありますね」と言うと店員が近寄ってきて、「そこら辺のはベースですよ」と訂正した。
「悠介さん楽器出来るんですか?」
「ギターを少々」
「本当ですか?」
「僕にだって特技はありますよ」
「ヴ、ごめんなさい…」
僕は店員にギターを弾かせてもらえるか頼んだところ、快く了承してくれた。
僕は椅子に座って、ギターを受け取った。
「じゃあ、サヤカさんの為に一曲披露します」
なぜ、またこんな恥ずかしい事を僕は言ったのか、この時は気にしなかった。
「何弾くんですか?」
「僕の好きなスタンド・バイ・ミーで」
そう言って僕は演奏を始めた。
恥ずかしながらも歌をつける。
店内にギターの心地よい音とそれなりの僕の歌声が響いた。
「凄ーい!悠介さん、歌もうまいんですね!」
お世辞かどうか本当の所はわからないが、僕には彼女が本当に喜んでくれているように感じられた。
僕は自分で曲を披露しておいて、終わった後に恥ずかしくなってしまった。
「いや…あのぉ…」
その後、店員にお礼を言い店を出た。
「また今度聞かせて下さいね」
店内で熱唱してしまって後悔している僕に彼女はそう言った。
「練習しておきます…」
「期待してますね!」
「僕もギター披露したんだから、何かサヤカさんの特技も披露してもらいたいですね」
「私ですか?考えておきます」
その後はタクシーを拾って家に帰った。
時刻は5時。
飯の時間だ。
しかし、腹は減っていない。
―――深夜12時20分
大竹のオバサンは今日は帰って来ないらしい
父はおそめの夜食をとっている。
父は家に帰ってくると、すぐに風呂に入って、夜食を食べる。そして1時にはもう寝てしまう。
この日の僕はやけに気分が良かった。
それで、何を思ったが僕はわざわざ父の帰りを待って、サヤカさんの話をしようと思ったのだ。
なるべく自然に、何気なく僕は父に話し掛ける。
「親父、サヤカさん親切でいい人だったよ」
父は箸を動かしながら僕の話を聞いていた。
「サヤカ?誰だ?もしかして彼女か?」
親父はそんな不可解な事を言った。
「誰って、新しいお手伝いさんだよ。つい最近、雇ったろ?」
「はあ?私はサヤカなんて人間も知らないし、新しい使用人を雇った覚えもないぞ。」
何を言ってるんだ?
親父が知らない?
「ここ最近お昼に僕の部屋に来てるじゃないか」
その場にいたお手伝いさんには僕が少しおかしくなったような感じに見えていただろう。
「いえ…見覚えはありません…」
そう答えた。
「そんなわけないよ!僕の部屋に毎日お昼に彼女は来ていたんだよ!」
「あの…知っての通り、その時間は私と大竹さんがお昼を食べている時間で…悠介さんの部屋に行くには…私たちがいるその部屋の部屋を通らないといけないわけで…私たちが気付かない筈がないと…」
「そうですか…わかりました…」
親父が驚いて口を挟んできた。
「おいおい。それ泥棒じゃないのか?」
僕は親父の言葉を無視して部屋から出ていった。
「おい!悠介!一体サヤカって何なんだ!?」
「なんでもないよ。僕の勘違いだった」
父もお手伝いさんも知らないし、見てもない…
彼女は誰なんだ?
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