作品名:RED EYES ACADEMY U 脱走
作者:炎空&銀月火
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「では、今からアカデミー幹部会議を始めます」
最高幹部秘書官の一声で会議が始まった。アカデミーの中でもかなり豪華な方の会議室。その内装はどことなく国会議事堂に似ている。
 しかし、明らかに国会議事堂と違うのは、中にいる人数だ。かなり広くスペースを取ってある割には十人しかいない。しかも、実際に会議に参加するのは四人だけ。後の六人は参加者の警備だ。
 参加者も、実にまとまりがない。二十歳前後の女性が一人、五十歳ほどの男女が一人ずつ、そして一人上座に腰掛けた六十歳ほどの老人だ。ただ、老人の顔はよく見えなかった。理由は分からないが、上座には薄いカーテンがつるされ、老人の周りを囲っている。そこにいるのは分かるが、表情はカーテンに阻まれて分からない。
「今日の議題は、アカデミー経営部からの中国支店建設費についての申し出が一つ、二つ目は教育部からのBクラス増設についてです」
 議長とおぼしき五十代の男が書類を読み上げる。後の三人は黙って机を見つめている。メモは誰一人とっていない。いや、取る必要がないのだ。全て覚えてしまうのだから。
目をつぶって議題を聞いていた女性が唐突に質問した。
「議長、今日の議題は五番目の本物についてではないのですか?」
「ええ。今から言おうとしていたのですが。よろしいですか?」
 質問した二十代前半の女性はたちまち真っ赤になって引っ込んだ。
 それを確認した議長は、コホンと咳払いをして話を戻す。
「えー、では、五番目の本物についてですが、先程西村が彼女に配属先再変更を知らせました。西村、それについて報告を」
 指名された五十代の女性、西村京子が立ち上がり、説明を始めた。
「五番目の本物、つまり潮沢凛ですが、配属再変更についてはすんなり受け入れてくれたようです。ただ…」
 とそこで少し言いよどむ。
「どうしましたか、続けてください」
 先程話をせかしていた二十代の女性が少し苛立たしそうに声を上げた。その態度に西村は少し腹を立てたようだ。鋭い、赤い目で彼女を睨むと再び口を開いた。
「ただ、配属先に少し拒絶反応を示しました。特殊暗殺部隊というのがショックだったようで…」
「まあ、当たり前でしょう。十三歳の少女が、そうすんなりと特殊暗殺部隊に配属されることを喜びはしませんわ。それに、あなたの言い方だとまさかとは思いますが、単刀直入に“暗殺”と言ってしまったのではないでしょうね。」
呆れた口調で女性が立ち上がる。そしてカーテンの奥にいる人物に向かってまくし立てた。
「だから私は言いました。こんな五十代のおばさんなどではなく、一番年齢も近く、彼女の次に新しいオリジナルの私にお任せ下さいと! そんなに直接的に言ってしまうと、今後彼女のアカデミーへの忠誠心が揺らぐかもしれないのですよ! ただでさえ、反抗期に入りかけたと言う報告が総合戦闘部の方から入ってきているというのに!」
「お静かに! われらが宗主の御前です!」
議長からの強い制止の声を、静かな声が遮った。
「これは私の選択だ。ラウス・レナード。四番目の本物よ。それとも、我が命に逆らうのか?」  ーテンの奥の人物が初めて声を発した。落ち着いた、しかしそこはかとない不気味さを秘めた声。大きな声ではないのに、広い会議室に静寂の波紋を陥れた。
「私の浅慮でした。申し訳ございません」
 恥じ入ったように彼女は深々と頭を下げ、席に座り直した。西村の視線を痛いほど感じるが、感じないふりをして、次の議題にはいるのを待つ。
 結局、不気味な静寂を帯びたまま、アカデミー最高幹部会議は終了した。

「西村」
会議が終わり、他の議員達が立ち去ったあと、再びカーテンの奥の人物が声を発した。声をかけられた西村は、深く頭を下げたまま指示を待つ。
「四番目の本物の事は気にするな。そなたを五番目の本物との連絡役に指名したのは私の考えあってのこと。多少彼女との相性のズレがあったとしても、最終的には私の筋書き通りにうまくいくハズだ」
「わかっています。それに、四番目の本物の気持ちも私にはわかります。年も近いし、世界に五人しか存在しない仲間の中で、もっとも境遇が似通っています。やはり気になるのでしょう。」
「そうであろうな。二人とも両親を亡くし、幼い時からアカデミーで訓練を受けている。殆ど同じと考えて良いだろう。しかし、五番目にはもっと大きな存在意義がある。そう、ある意味では我らよりも遙かに大きな意義がな…」
一瞬宗主の目に真紅の光が宿り、声に狂気が混じる。しかし、次の瞬間には消え失せ、事務的な冷たい声で西村に次の指示を下した。
「五番目は現在、非常に不安定な心理状態だ。間違っても脱走などしないよう、気をつけておくのだ」
 はい、と返事して深く頭を下げる。そして、彼女は無言で部屋を出た。


中書くなら
はい。連続して更新してます。なんかなぁ・・・このときと今と、小説かく手順がだいぶ変わりましたからねぇ・・・へったくそだなぁ・・・。今読むと、構成に論理性も何もないですね。めっちゃくちゃ。
 昔の見てると今はちょっとは進歩したのかな?と思えてこなくもないです。

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