作品名:転生関ヶ原
作者:ゲン ヒデ
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 それから、二十日後、家康は、高台院が去った西の丸に移った。
 その晩、家康の愛妾・お万の方を夜伽させたが、男女の営みを終えた時、
「大殿、孝蔵主から、日本書紀をお読みになられたら、返してもらいたい、と頼まれました。それから殿の感想を、高台院様に伝えたいと……」
 この愛妾は、横恋慕した代官に夫を殺され、領主・家康に訴え出たところ、見初めた家康が側室にした経緯があったが、妙なことに、高台院の側近女官・孝蔵主の親戚である。家康は、この関係を利用し、お万の方を足しげく宝蔵主に会いに生かせ、豊臣家を支えるため、諸策をしているように、高台院に吹き込まれるように計っていた。

「高台院は、しつこい方よ。愚にもつかぬ転生話を信じて、わしにまで、それを押し付けようとは」
「来月中ごろにも、京にまいりますが」
「分かった。明日、暇を見つけて読むから、控え部屋に用意しておけ」
 家康はうんざりした気分で、目を瞑った。

 夜中、家康は夢を見る。
 自分の首から下が、木の台になっている。すぐ、首実検をされている死者になっていると気づく。
 ススキが風に揺れた空き地の向こうから、髪を伸ばし始めた僧が、ミズラの髪をした十八、九の若者を連れて来た。この僧、錦の衣を羽織っている。よこの若者は、日本武尊の絵とそっくりな軍装だが、どこか石田三成を若くした容貌である。
 立ち止まって、この中年の僧は、自分を見つめ続ける。やがてため息をつき、上を見上げた。涙を堪えて、身震いをしている。しばらくして顔を下ろし、(大津の宮近くに稜を作り、丁重に納めるように)と言うと、布らしいものが掛かり視界が消えた。

 そこで、目が覚める。横の愛妾は寝息を立てている。
 家康は思った。
(高台院の話からの連想の夢か。首実検される大友の皇子とは、験が悪い。……三成が高市の皇子になっていたが、……正夢でなく逆夢で、わしが勝つということに思おう)
 無理に自分に言い聞かせて、眠りについた。


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