作品名:マリオネットの葬送行進曲
作者:木口アキノ
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一眠りしたら、もう既に、昼近くになってしまっていた。
カーテンの隙間から漏れる一筋の光が、リオンの頬に落ち、彼女は目を覚ます。
「ん……」
起きあがろうとして、右脚がしびれているのに気づいた。原因は、すぐにわかる。
リオンの隣で、未だ瞳を閉じている……ミューズだ。
ロボットなんだから、一緒に眠るのはやめて欲しい。
睡眠など、必要ないだろうと言ってやった事はあるのだが、「リオンが寝ている間ヒマなんだもん」という理由で、ミューズは、無意味な睡眠を取るのだ。
リオンは、自分の右脚に乗っかっているミューズの脚を避け、しびれた部分をさする。
「あれ、もう朝」
ミューズが、むっくりと起きあがる。さすがに、普通の人間のように、寝ぼけたりはしない。
「朝というか、昼。早く用意しなきゃ、アストログローバル社の出荷時間に間に合わないわよ」
「はーい」
2人は、軽くシャワーを浴びて、出勤準備をする。
ミューズもシャワーを浴びるのは、彼女の皮膚は、皮膜化すると、全く人間のものと変わらない為だ。
G.O.D本部に着いたら、すぐに着替えるので、2人とも、軽装で家を出る。
一応、自動車を利用して出勤するが、距離がそう遠くないので、あっという間に到着する。
地下車庫に駐車し、更衣室直結のエレベーターに乗り込む。男女別になっているので、この時点で衣服を脱ぎ始めるせっかちな人もたまにいるが、2人は、そういった事はしなかった。
更衣室で、体にフィットした動きやすいボディスーツに着替え、その上に、宇宙港クラスターの作業員のツナギを着込む。
「先に装備室に行ってていい?」
着替えの終わったミューズが問う。装備室に行って、武器の用意をしようと思ってのことだ。しかし。
「今日は、行く必要ないわ」
「え、だって、そうしたら……」
「忘れたの?今の私たちには、武器の持ち出しは制限されているのよ。行った所で、拳銃1個程度しか貰えないわ」
不思議そうなミューズに、着替えを終えたリオンは、
「行くわよ」
と声をかける。腑に落ちないという表情のまま、ミューズはリオンの後について行った。
リオンはそのまま駐車場に戻る。彼女が向かったのは、自分たちがいつも使用している車ではなく、「シャノアール運輸」と書かれたワゴン車。
車の横には、ロイが立っていた。今日は、彼の相棒である、風我流(フェン・ウォーリウ)が一緒にいた。薄暗い地下駐車場なので、ウォーリウは黒髪に見えるが、光に当たると、濃い藍色である。生い立ちも、実年齢も不明との事であるが、ロイより年下である事には間違いなさそうだ。その姿には、まだ、子供らしさが残っている。
「ちゃんと積み込んでおいたよ」
ロイは、車のトランクの扉をコン、と軽く叩く。
「ありがとう。でも、フェンにまで手伝わせなくても良かったのに」
「や、コイツが、リオンに会いたいって言うから」
ロイが、親指でウォーリウを指し示す。
「何言ってんだよ!」
即座に反論するウォーリウを、ミューズがじ〜、っと見つめる。
「ねえ、リオンは、この子範疇内?あたしには無理だな〜」
「え?」
ウォーリウは何を言われたのかわからなく、きょとんとしたが、リオンはあえて説明せず、
「おかしな事を言っていないで、さっさと行くわよ」
と、ミューズを車に乗り込ませ、自分も乗車する。
「ありがとう、ロイ。恩に着るわ」
軽く手を振り、リオンは車を発進させた。
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