作品名:此処に兆一・運動章
作者:七木ゆづる千鉄
← 前の回  ■ 目次
七地球環状線も、此処まで来ると誰も乗っていないようで、ふう、と安気した茂野河応援団一同をアナウンスが待っていた。
「次は、水河です。降りた際は溺れないように十分注意して下さい」
 何で、今度だけ「野」が入ってないんだ?と善三郎が疑問をしたが、それは駅に着いて直ぐに解った。何と、水河には野原がないのだ。駅から出ると、直ぐ海の中に真っ逆さま。一同は次から次へと海の中に飛び込んだ。
 それにしても水奈美は一体何処にいるのか?億次郎が「何処だ?」と聞いても「来ないで!」と返事が返ってくるだけだ。
「水奈美?わたし、加奈子よ。此処にいるコウイチ君が金野河の汚れた魂をこの石の中に入れて来たから、お願い。答えて」この加奈子の問いかけには、
「いいわ、出して」と素直に反応をする水奈美。そこでコウイチがガンダ石から金野河の罪人を出すと、次から次へと出て来る者達が、水河の海の中で赤子に変わって行く。コウイチはその赤子を一人ずつ又ガンダ石に入れて、木野河へと送ると言って駅へと泳いで行った。
 これを見ていた億次郎はこう問い掛けた。
「水奈美、お前は優しいな。加奈子の願いをちゃんと聞いてくれるなんて。そんなお前が、どうして俺達には会おうとしないんだ?」
「お、お父さん・・・」水奈美はそういって少し口ごもったが、こういい加えた。
「もう、始めるのはこりごりよ!お母さんだって今はもうこの世にいない。そんな傷つけるだけの関係なんて、始めないほうがいいのよ!」その言葉には、どこまでも広がる「絶望」が見て取られた。これに対して億次郎は、
「零子がこの世にいない?」と先ず一言。水奈美の「え?」との返事を待ってさらにこう続けた。
「あいつだったら、まだ元気でぴんぴんしているよ。ほら、あの線路の向こう側、金野河と反対の方向の向こうの・・・」
「向こうにあるのはただの『闇』よ!」
「違うんだよな、その『闇』の更に向こうの、見えて来ないか?七番目の地球、「戊野河」が。其処にいるぞ。此処にいる兆一の妹、笙子と一緒にな」
「向こうって、そんな所は何処にも・・・」
「じゃあこれをもって見てみろ」億次郎は水奈美に自分のガンダ石を渡した。すると水奈美の表情が一変、
「あ、お母さんがいる。横にいる子が・・・笙子ちゃん?」この言葉の後で号泣した。それは悲しみの涙ではない。喜びの涙だ。此処で億次郎が一言こう聞いた。
「これでも、未だ始めたくないって言うか?」
 水奈美の返事は、
「ううん、もう始めたくないなんて言わない。その代わり、私も連れて行って。お母さんがいる、その戊野河に」
 これに驚いたのは中と善三郎の二人、此処をほって置いていいのか?との問い掛けに答えたのは兆一である。
「ちゃんと会わせないと、此処に居る加奈子ちゃんも含めて四人も安心できないじゃないか。此処は加奈子ちゃんが留守番するからいいね」と加奈子に振ると、はい、と返事が返ってきた。そして茂野河応援団一同と水奈美は駅へと戻り、七地球環状線の列車へと乗り込んだ。そして発車してから暫くして、辺りが真っ暗になり、こんなアナウンスが流れた。
「当線はエネルギーを使い尽くしました。これにて運動を停止します」
 運動停止とはどういうことか?これから兆一達はどうなるのか?全ては次章で明らかとなる。次章・「乱動章」を待て!

← 前の回  ■ 目次
Novel Collectionsトップページ