作品名:リザーボンド
作者:山田兄弟
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「俺、カッターナイフ持ってるんだ」
 バーニャはそう呟くが否や、素早く体裁を整え、強く地面を蹴った。ヤンスが呆然としてる間隙を突いて一気に間合いを縮める。
「じょ、冗談は顔だけにするでヤンス!」
「おっと、失禁してるぜ?」
 かく言う自分も失禁している事を棚に上げて、野卑な言葉攻めを敢行するバーニャ。ヤンスは失笑を隠しきれなかったが、傍らで本気の雰囲気も感じつつあった。生命への不安は徐々に彼の中で形を作り始めていた。
「ああああ」
「あの世で考えな」
 思わず一歩後ずさりヤンスを追い討ちするように、バーニャは片手のナイフを力いっぱい振りかぶった。
 一瞬の事だった。
 ヤンスの首を清清しい程に貫通したナイフは瞬く間にどす黒く染まる。生物としての急所をズタズタにされたヤンスはもはや即死だった。うなだれるヤンスの身体からバーニャが思いっきりナイフを引き抜くと、遺体は力なく崩れ去った。

 バーニャはほくそ笑み、見せしめにと医者を呼んだ。
「これは酷いですね・・・完全に手遅れだ」
 ヤンスがもう二度と蘇生する事はないと悟ったバーニャは、遺体を精肉機にかけてミンチにし、某工場のセリに破格をひっさげ乗り込んだ。後のミートホープである。

「これで奴が復活する事は無い、フフフ、アッハハハハハハハ!」
 バーニャはあたかも本来の目的を完遂したかのような面持ちで、不気味なほどに青い天空を仰いだ。
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