作品名:RED EYES ACADEMY V 上海爆戦
作者:炎空&銀月火
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「はぁ…」
あき倉庫の裏で、凛は膝を抱えて座り込んだ。
あれから、一年が経った。その間、なんとか見つからないように必死で人間に混ざり、別人格“小牙”を演じ続けた。
 それが今、崩れた。
(結局、レッドアイズってなんなんだ?)
脱走からすぐに、自分の能力が他人と違うことに気が付いた。普通に走ったつもりでも他人を遙かに凌いでしまう。よほど力を押さえないと、すぐに違いが現れる。
 そこで考え出したのが、錘だ。
凛は、手足を戒めているリストバンド―中に十キロと二十キロの錘が入っている―を見つめた。
 腕を動かすと、中に入った鉄塊がジャラリと重たげに音を立てる。
(結局、あの妙な反応…確か、狂戦士化だっけ…も、夢の中で…)
フッとあることに思いついて冷笑を浮かべる。
―まるで、獣の自分をつないだ鎖じゃないか…。
「何を考え事してるんだ?」
考え事は将志の声で途切れた。
「あっ。はい。もう次の準備ですか?」
一瞬で小牙に戻る。快活でよく動く少年を完璧に演じきる。
「いや、俺もちょっと考え事だよ」
「はぁ…」
それからしばらく沈黙が続いて突然また将志が口を開く。
「俺な…」
「はい」
「実は暗殺者だったんだ…」
「…!」
驚き、咄嗟に身構える小牙を放って置いて将志は続ける。
「それでさ、かなり色々やってたんだけど、嫌になってな。脱走したんだ」
「…」
「そうそう、あまり言っちゃいけないんだが、司乎と麗香の両親も何者かに暗殺されてるらしい」
「……」
「世の中物騒だな。お前も気をつけろよ、小牙」
「はぁ…」
反応に困ってなんとも言えない小牙をあとに、将志は立ち上がった。
「じゃあな。片眼、司乎達に見られないようにしな」
驚いて顔に手をやる小牙。右目のカラーコンタクトが外れ、紅い瞳が露わになっていた。
思わず硬直した小牙を見て、将志は笑う。
「大丈夫さ。俺も、似たような物だから。司乎達には絶対に見られたらダメだぞ。…あいつから聞いたんだが、あいつの両親を殺したのも…」
一瞬、将志の瞳が揺れる。言っていいのかどうか迷っているのだ。
 しばらく迷った後、将志は残酷な事実を告げた。
「…緋眼の奴らだったそうだ」

“アカデミー殉職者リスト6”
犠牲者:夏・伽羅
死亡年月日:二〇〇一年九月二五日
詳細:重要機密にまで迫った人間、呉・寡舎とその関係者を掃討中、何者かにより殺害される。死亡者の当時の年齢は一五。ターゲットの息子、呉・司乎と幼い頃から暮らさせ、幼なじみとして信用させていた。アカデミー北京支部のCクラスキメラ。呉・司乎の生死は不明。現在も逃亡中と見られる。
犠牲者:奢・嶺漢
死亡年月日:二〇〇一年九月2二五日
詳細:上記に同じ

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