作品名:RED EYES ACADEMY U 脱走
作者:炎空&銀月火
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「コンコン」
西村の呼ばれた意味もなく広い部屋に、小さなノックの音が響いた。
「どうぞ」
彼女の声に応えて、ドアが開く。入ってきたのは係員に付き添われた凛。係員のように見えて、その実体は彼女のボディーガードに近いが。
部屋の中へ留まろうとする係員に、出て行くよう合図し、凛へ座るように呼びかける。いつもより厳重な警備体制に、凛は少し戸惑っているようだ。
 きょろきょろと落ち着かなげにあたりを見回す凛をしばらく観察した後、西村は話を切り出した。
「半年ぶりですね。潮沢さん」
そう言われて初めて凛は目の前に座る西村が誰だか気づいたようだ。驚く彼女を無視して話を進める。
「今日、あなたをここに呼んだのは、また同じような理由ですよ」
同じような理由、という言葉に敏感に反応を示す。一瞬で引きつった顔を何とか押し隠すように微笑んで、凛は問いかけた。
「というと、やはりまた異動ですか」
「はい」
西村の返事に途端にグッタリとなる凛。彼女にとって、異動と言うのはあまり良い思い出のあるものではない。以前、異動直後に行われた試験で突発的事故に巻き込まれ、大けがを負ったのだ。
「まあ、そんなに構える必要はありません。もう、異動後のテストはありませんから。安心して下さい。それに異動と言ってもそんなに環境が変わるわけではありませんよ。活動内容は殆ど同じですから」
テストがないと聞いて安心したのか、ホッとした表情を隠せていない。もっとも、本当に衝撃を受けるだろう事実はまだ話していないのだが。 彼女は苦笑した。
「異動は今週中に。そして、異動先は…」
とそこで一旦言葉を切り、凛の様子を伺う。彼女の心配をしているのではない。彼女の体の、とりわけ細胞の心配をしているのだ。
(ここで下手なことを言って心理的ストレスを与えすぎては困りますからね…)
更に見たところ彼女は少々疲れ気味のようだ。総合戦闘科からの報告では体力、瞬発力、動体視力などを含めた戦闘力は半年前と比べて飛躍的に上がったとのこと。だが、いくら身体能力が高くても、彼女の中身は普通の十三歳の子どもだ。ちょうどストレスに敏感になっている年頃だろう。
 そう考えた彼女は、無理矢理“やさしい笑顔”なるものを作り、柔らかい声で切り出した。
「異動先は、特殊暗殺部です」
「え……」
やはり、ショックを受けたか。更に続ける。
「そして、これが正式な異動命令書です。すぐに準備してください」
「……」
驚きから冷めないまま、無言で書類を受け取った凛は、上の空のまま応接室を出た。


中書け
えー、かなり間が空いての更新です。ってか、これ見てくれてる人いるんだろうか・・・?
現在、REA4を執筆中なので、かなり遅れてますね。さあ、がんばって乗せよう。


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