作品名:自称勇者パンタロン、ずっこけ道中!
作者:ヒロ
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――ピーピーピー。
遺跡内に甲高い音が響き渡る。こんなことになるなら、リアンと一緒に行ってやれば良かった。あいつ、無事に村に帰れたのかなぁ。
俺は目を固く閉じながら置いて逃げてきたリアンの事を考えていた。
「結局、ゴミはゴミか……。少しでも利用価値があるかと思った僕がバカだったんだね」
ニコルがそう言いながら手に魔法力を高めているのが分かる。
いよいよ俺も最後かと思ったその時だった。
――パンパカパーン!オメデトウゴザイマス!アナタハミゴトトウセンニアタリマシタ!
宝箱の警告音が鳴り止んだかと思うと、突然軽快な音と共に一本調子の感情の無い声が部屋に響き渡った。
何事かと思い目を開けてみると、宝箱が七色の眩しい光を発しながらゆっくりと開いていくのが見えた。
「本当に当たりやがった……」
「……うそ」
ニコルも驚いて宝箱が開くのをボーッと見続ける。ゼルドもメイスンも呆気に取られたままだ。
宝箱が完全に開いたと同時に七色の光は収まり、部屋に静寂が戻った。メイスンがゆっくりと宝箱に近づき中身の一つを手に取る。
「……なんだこれは?」
メイスンが手にした物は長方形の小さい箱だった。俺とニコルも駆け寄り宝箱の中身を物色する。
「こ、これは……!」
――ショウヒンハ『ペロリーメイト』イチネンブンデス!
その答えは宝箱が代弁した。その宝箱には、どんな病気や重症も一瞬で治すという伝説の回復アイテム、ペロリーメイトがぎっしり詰まっていたのだ。
ペロリーメイトはその劇的な効果から一時期、冒険者の間だけではなく一般家庭から王家の者達まで幅広く使われていた。だが、体に合わない者には様々な副作用を与えてしまうため、まもなく発売中止になってしまった。その話は俺が生まれる前の話、もうかれこれ三十年程前にもなる。
だがペロリーメイトを超える効果を持つ回復アイテムは、その後世には出ず、治療不能の重病人や重傷者達が、死ぬくらいなら多少の副作用は仕方ないと、今でも欲しがる人が耐えない。しかも世に残っているペロリーメイトは数が少ないため大変希少価値があがってしまっている。その価値は一個で城が買えると言われているほどだ。
それがこんな大量に手に入ったと言う事は、下手な財宝よりも凄い物を手に入れたことになる。一体城が何個買えるんだ?もしかしたら国を一個丸ごと買うこともできるかもしれない。
「僕は信じていたよ、パンタロン。君はいつかやる男だって」
ニコルが今まで見せたことも無いような笑顔を見せた。しかも目が本当に笑っている。マジで嬉しいんだろう。とりあえず、俺は殺されずにすんだ訳だ。俺も思わず笑みがこぼれる。
「……このペロリーメイト、賞味期限が切れているぞ」
メイスンがボソリと呟いた。
その瞬間ニコルから笑顔が消えた。
俺の笑顔も凍りついた。
そして俺の伝説が再び幕を閉じようとしていた……。
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