作品名:探求同盟 −未来編− 桐夜輝の日常
作者:光夜
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「ありがとうございました。このお礼は後日必ず」
「とんでもありません、そもそもは子供のイジメ問題に親がでしゃばっただけで、結果的に戦国グループの吸収中止に繋がっただけですから。私たちは当然のことをしただけです」
とりあえず、大塚さんと一緒に城ヶ岬の父親は出て行った。罰金の値段を決めるのと、これまでの犯した罪を白状するのと、賄賂などを受け取った上役を教えてもらうために。
「おい、桐夜、いや、八神か?」
「どっちでもいいよ。なに、城ヶ岬君?」
僕、真、一臣さん、そして城ヶ岬修一郎、彼は不満そうな顔で僕に呼びかけてきた。
「・・・・」
「・・・・?」
「案外、親父も使えなかったな」
と、一泊置いてそう口にした。しかし、文句を言うような顔ではなかった。
「と、言うと?」
「親父が負けたからとか、事実が証明されたからとか、そんな理由で考えを改めるほど俺はおりこうじゃないぞ」
「お前」
城ヶ岬の言葉に一臣さんが怒りを表して一歩前に出た。それを僕は制す。城ヶ岬はだけどよ、と続けた。
「親父が負けたことで、ようやく自分の不満に納得できたことは、確かだ。お前が言うように、俺の母親は親父に良いように使われていたし、使っていた親父も母親を人間扱いしていなかった。それでいいのかとも思っていたが、現実に他の連中の家族仲をみて、まあ不自然だと普通は気づく。理解したくなくて、自分勝手にやってたんだろうな、俺は」
「反省、したってこと?」
「知るか、俺は俺だ。あくまで俺を形成した親父が負けて、反省してくるだけだ。だから俺の性格は変わりやしねぇよ」
「・・・・」
「だがな、親父がああなった以上、金も権力もなしだ。それどころじゃねぇってことは見りゃあわかんだろ、桐夜」
僕のことは、桐夜で決めたらしい。
「そう。じゃあもう自分勝手にクラスのみんなを巻き込むのは、止める?」
「そんなことも俺の勝手だ。ただまあ、親があれじゃあ、俺も同じことしてりゃあ同じ目にあうんだろうよ。だったら、今のうちに手は引いてやる。そういうことだ」
あーあ、つまんねぇ毎日の再来かよ、くそが。素直じゃない言葉を口にして、城ヶ岬は部屋を出て行った。つまりは、イジメも自分勝手もやめてやる、そういうことらしい。
「・・・・素直じゃねぇの」
「そもそも、城ヶ岬はそういう人間だよ。お金と権力でそうなっただけさ。まあ、基本的なクラスの役割は、気の強い悪がき程度かな?」
「・・・・僕、もう怖がらなくていいの?」
「そういうこと、というか、真はもう怖がることを止めたんでしょ?」
「あ、そうだった」
思い出したように口にして、照れたように笑った。・・・・かわいい。
「あ、一臣さん。これで学校のほうも大丈夫だね」
「おう、また助けられたな。いやぁ、前回のお前の活躍もそうだったけど、今回はだいぶオールスターだな。っていうか、お前今まで偽名だったのかよコノヤロウ」
「あははは、敵をだますにはまず味方から、とか?」
なんて、冗談を口にした。
「それじゃあお母さんたちは帰るわね。今回の手柄は一応光の物にしておくけど、次はちゃんと一人で解決しないとだめよ?」
「うん、ごめんね忙しいのに。でも、次もがんばるから大丈夫だよ」
「・・・・帰ったら訓練をする」
と、黙って部屋を出て行くかと思われた父さんがすれ違いざまにそういって、僕は背中が寒くなったのを感じた。怖いよ、父さんの訓練・・・・。
「光くん、ウチの子もよろしくっていってたわよ。今度帰ってくるから遊んであげてね」
「あ、三上さんもありがとうございました。彼も帰ってくるんですか?じゃあ、たぶんケンカします」
「あはははは、先輩と一緒で手が早いなぁ」
「三上っ」
気楽に笑う三上家の旦那さん、父さんがどすの聞いた声で呼びかけて出て行ってしまった。
「うちの子?あの夫婦にも子供いるのか?」
「うん、三上綱紀(コウキ)君って言うんだけど、いまはロンドンに留学中」
「ロンドン、すごいねぇ」
まあ、魔術の総本山はロンドンだからね。これは、言わないほうが良いかもしれない。
「一臣、私たちも帰ろう。来週食事に行くことになったから、覚えておきなさい」
「わかった。じゃあな、輝。あと、いい加減俺の名前を呼び捨てろよな」
「あはは、考えときますよ」
戦国親子も笑顔で帰っていった。さて、僕らも戻ろうかな。
「理事長先生、お騒がせしました」
「いいえ、ことがまとまって何よりですよ。これからも、たのしい学校生活を送ってください」
「はい」
理事長先生と挨拶を交わして僕は部屋を後にした。けれど、だからこそ油断してしまった。まだ物語りは終わってなどいないということを、そして、それはその日の夜に知ることになった。
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