作品名:Three Stars and the Earth〜他星への進出〜 中巻
作者:キラ
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12話 泥の星
T
誰かの声がする。遠い…頭の奥の奥で。
「完成だ…U-Puの完成だ!」
U-Pu!?今はU-Pu2だろ?おかしいな…俺か、あっちのどっちかが寝ぼけてんのかな?
「これで戦争は終わる…我々連合軍が勝つ。帝国軍は敗戦、大打撃を受ける。中立軍は…この際しょうがない」
連合軍?帝国軍??中立軍???何だそりゃ????味方が…SPEとフェリスターの住民で、敵が…DDD軍じゃなかったっけ?
「よし…発射地点は大西洋、北緯50°西緯15°口径810o高射カノン砲で発射せよ。爆心地はヨーロッパ帝国、ロンドンだ」
高射カノン砲?ヨーロッパ帝国??ロンドン???ここはフェリスターのフェアサイド…今はどこか分からないけどとにかくあの砲弾は大砲で発射されたんじゃない。起爆装置で着火されたんだ…。
場面が変わった。
ここは山と木々で囲まれた建物の中だった。
「博士!博士!!とうとう…USAとJAPがあの砲弾を造ったとの情報です!早くあの超物体の改良を!!!」
ここでもU-Puか…それはともかくUSAとJAPって何だ?あの砲弾を造ったのはDDDだろ?
「落ち着け…落ち着くのじゃ。我々はもうそのことを予測して超物質の改良、増加はもうすんでおる」
「何だ…良かった」
「今はその超物質の配置場所を検討しているのじゃ。この超物質の中に入れなかった民々は…本当に申し訳ないのう」
「そうですね…」
今度は場所ではなく時間だけが進んだらしい。
「急げ!時間が無い!この超物質の配置はヒマラヤ山脈、ダッカ東方面、コロンボ南方面、チェリー・シー(紅海)、スエズ・クナル(スエズ運河)、メディタ・レイニアン(地中海)東地区、ブラック・シー(黒海)、カフカス山脈、カスピ湖(カスピ海)南地区、スタン砂漠の外周に張れ!今すぐにだ…」
そうか…ここは地球なのか…俺は…地球に帰ってきたのか…そして…地球はU-Puの恐怖に怯えさせられているのか…。
「博士!設置完了いたしました!」
「そうか…我々の任務は終わった。後はこの超物質の強度の強さを祈るだけだ…。ム、爆風が来たぞ…この…‘サイコ・バリア・シールド’よ…がんばってくれ――――
サイコバリアリールド―――まさか…それは!!!!!!
――――ドギャアアアァァァァァァン……
U
サフィアは目を開けた。辺り一面真っ暗、地面は泥の様にネチョネチョしている。
そう、サフィアは死んではいなかった…。しかし今はU-Pu2の爆心地にたまっていてまるで富士山の様な山になっている。
「は…み、みんなは!?…そ、ソフィヤーーー!」
叫んだ瞬間、微かに足元が光った。泥状の物体を書き分けるとそこからアナ、シャスナやその両親、その他色々が掘り出された。掘り出されたみんな…特に王と女王はガクガクブルブルだ。
サフィアはため息を吐いた。…どうやらみんな無事の様だ。ただし、ソフィヤやマスー達、宇宙船は見つからない。
もっと奥深くにいるのだろうか…。
それとも―――…
「アナ…異常無し?」サフィアがなんとなく尋ねた。
「大丈夫です。サフィアさんがすぐ助けてくれたので…。それより私達以外のSPE隊を探さなければ!」
アナはまだSPE隊がこの山の一部になっていないと信じている様だ。
「探すにはまず光が必要です…シャスナ、起き上がれますか?」アナがシャスナに手を差し伸べた。
「はい、大丈夫です」シャスナが応えた。
「早速ライトアイテムを使うことになりそうですね…シャスナ、そこで『SKフラッシュ』と2回言って」
「え、あ、はい。『えすくふらっしゅえすくふらっしゅ』…わぁ!」
シャスナが驚いたのも無理は無い。いく時か光を失った風景にいきなり光が宿り、目に差し込んだからだ。
アナ以外(もう慣れているのだろう)…は全員目を隠した。
「凄いです!シャスナさん。3つの光の霊が…え?…3つ???」
サフィアはチラッと手を開いた。目の前には真っ白な光の霊が2つ、真っ赤な人魂が1つ…?
サフィアの見た所それは火種と言う小さいが威力のある罠だ。
「は…離れて!危なぁァァい!」サフィアが回れ右して『後ろに下がれ』と言うポーズをした。
危機一髪、全員が火種の半径10mに離れた瞬間、それはぽっと燃え上がり…音だけでは検討もつかないほど広い範囲に散らばり、消えて言った。
「火を使う…も、もしかして!ブレインの仕業か!?」サフィアがハッと言った。
「ハッハッハッハッハッハッハ!ようやく気付いたか!ムシケラどもめが!」
サフィアが後ろを振り返った。そこには…いた。火の邪神…通称炎邪と呼ばれる男…ブレインが立っていたのだ。
「お前が…なぜここにいるんだ!」
「ムシケラが…それはこっちのセリフだ。私はこの星を任されたのだ。もう何をやっても良い。妖精を潰したりあのマッサージを何十回使っても良いのだ」
マッサージとはU-Pu2の事らしい。
「お前…何をやっても良いと言ってもそこまでする事は無いだろう!お前らのせいで…何億と言う妖精の命が奪われて逝ったんだ!」
「うるさい!ムシケラの癖に…生意気だ!言葉をつつしめ!」
「お前が独裁した星が滅んでいるのに独裁者だけ生きているのか、そりゃこっけいだわさな。…あれ?そういえばお前、何も守る物が無いのに何で生きているんだ?」
「あのマッサージの事か…お前らはゴミ袋が無きゃ死んじまうなんて本当にムシケラだな。全く、人間と言う‘物’は貧弱な生物だ」
「…お前の手下であるDDD兵やドロイドはどうなんだ?」サフィアがやや怒りを抑えながら尋ねた。
「DDD兵?ああ、愚か者の奴隷達か。あいつらはたかがU-Pu2の破壊っぷりを見たかっただけなんだ。威力の事なんてな〜んにも考えちゃいねぇ。そして、最終的には殺すつもりだったんだ。もちろんお前らもだ、ムシケラ…まずは一番のチビザコ。お前だ…みんなの所へ逝きな!『バーニン・ダイ』!!!」
ブレインの手と口から緑色の炎を吐き、ブレイン1mで3つ炎が合わさり、シャスナ目掛けて襲ってきた。
「シャスナさん!シールドを!」アナが叫んだ。
しかし、シールドはSKフラッシュよりも高レベルの技。シャスナが使える訳が無い。
幻聴だろうか…遠くから声が聞こえる。
―…には…せない…
――シャス…指一ぽ…させない…
―――シャスナには…指一本触れさせない!
――――ばちいいぃぃん!!!
…
……
………
………う…どあっちぃィィ!!!!!
「ロ…ロッジャー!」シャスナが叫んだ。
ロッジャーだ…なぜかロッジャーがいるのだ。しかし、どうやってこの爆風を乗り越えたのだろうか。
今、そのロッジャーはパチパチと尻尾に火をつけながらドタドタと駆け回っている。
武器のブーメランは燃えているがなぜかブーメラン本体は焦げていない。
「ロッジャー!一体どうして…」サフィアが普通に訊いた。全く、鈍感ですなぁ。
「それは後で…アツツ!」ロッジャーがピョンピョン跳ねた。
「ロッジャー…助けてくれてありがとう。これ、鎮火剤と火傷薬を混合したお薬。塗ってあげるね」
シャスナはロッジャーを仰向けにし、尻尾周辺にその薬を塗ってあげた。
ロッジャーの火傷はやはりひどかったがなぜかこれ異常無いほど幸せそうだ。
「フッフッフッフ、再開は済んだかな?さっきはしくじったが今度はそうは行かない。今度はここの‘元’統領よ、逝―――
「待て!…私が先だ!」
まるでバーンと音が出るかの様な太い声が響いた。
「ア…アナ!また口調が…こりゃかなり怒ってるな」サフィアがボソッと言った。
「この星はもう滅んだが…せっかくの助かった命を無駄にする気か!もうこの星にいた種族が絶滅するのも時間の問題なんだ。その短い時間をお前は…」
「フ…フハハハハ!!!阿呆のムシケラが!お前には私に立ち向かうほどの武器があるのか。え?もうチビザコに全てを授けちまったんじゃないのか。え?」
「……ニヤ」アナが今までに無い不気味な笑みをした。何かを見つけたような…。
「まさか…む、無茶だ!逃げろ!」
サフィアが叫んだ。が、アナは動かない。
「と言う訳で…逝け!『バーニン・ダイ』!!!」
ブレインの手と口から緑の炎が出、今度はアナに襲い掛かった。
しかし、まだアナはまだ動かない。
――死ぬ気なのか?
そうサフィアが思った瞬間だった。
――――バチィィィィン!!!
………
……………
「な…に…防がれたダト?ア、阿呆のムシケラめガ…何をシタ!?」
「ハッ…私は何もやってないぜ」
まるでアナはしてやったり…と言う笑みを浮かべている。
その時、ブレインは見てしまった。大きな翼に2つの刀…。
「ま…サカ…あの男ナノカ?鳳…凰…」
一瞬、誰もがそう思った。(鳳凰を知っている人のみですが)しかし、それは別人であった。
「大丈夫だった?アナちゃん」
「ソ…ソフィア!」
みんながほぼ一斉に言った。(あ、もちろんソフィヤを知っている人のみ《ブレインを覗く》ですが。やれやれ、しつこいですね)
そう、ブレインの攻撃を防いだのはソフィヤだったのだ。しかし…なぜに翼が生えているのだろうか。
「翼?ああ、なんか知らないうちにバサッと生えてきちゃった。ブレイン、今日と言う今日は許さないわサフィア!」
「ああ、俺も戦うぜ。だがな…相手はあの時より更に強くなっている気がする。油断するな」
「分かってるわよ…私だってそんなにアホじゃありません!」
ソフィヤがプクっと頬を膨らまし、少し笑ってすぐに戦闘モードに切り替わった。
ソフィヤは自分の刀…少し前は父、鳳凰の愛刀だったと言う秘刀、ハリケーンを2本抜いた。
ハリケーン…通称針剣は2本で1つの二刀流の刀である。
刀の力が上達すればするほどそれに応える刀で、最上級になると刀を抜いた瞬間周りにいる敵だけを吹っ飛ばすと言う神秘的な刀でもある。
サフィアも自分の剣、フェニックソードを引き抜いた。
フェニックソードは一風変わった剣で両方の側と先端に刃が付いてあり、柄の付け根と面の上方に目のようなマークが付いてある。
そして何よりもその剣は重量1.5sもあるのになぜかサフィアだけはまるでキーボードを持っている位軽く感じるのだ。
彼らは身に見えない合図を出し、違う方向に一斉に走り出した。
まず、サフィアが正面から攻撃するフリをした。ブレインの炎を避けるだけだ。
そして、背後からソフィヤが攻撃を仕掛けた。この作戦は不意打ち作戦だったのだ。
しかし…それは失敗となってしまった。その攻撃を左手一本で防がれてしまったのだ。
ソフィヤがハッと息を呑んだ。なんと肩がありえない方向に外れていて中指以外の指全てが異様に伸びているのだ。
「そ…そんな」ソフィヤの手がなぜかガクガク震えだした。
その時、刀を掴んでいた左手に銃弾が打ち込まれ、痛さで手を離した。
「だ…誰だ!ムシケラどもガァァ」ブレインが吠えた。
「今だ!ソフィヤ、斬るん―――
遅かった。ブレインが吠えている真にもブレインはもう片腕でソフィヤの首を掴んだ。
2人が声を呑んだ。ブレインの手が…伸びている。ソフィヤが宙に浮いた。もうブレインの片腕は2mにもなっている。
「3度目…いや、4度目の正直だ!今度こそ逝けぇぇぇぇい!!!」
ブレインの右腕…ソフィヤを掴んでいる方の手から緑色の炎がソフィヤの顔を包んだ。
ソフィヤが声にならない悲鳴を上げ、それが遠くまで響いた。
その瞬間、空からブレインの右腕に何かが落ちてきた。
ブレインの右腕が切れ、ボトリと炎に包まれたソフィヤが落ちた。
腕を切った何かの正体はネオンのサンダーラッシュであった。
「ダメや無いか…彼女をひどい目に合わせちゃあかんで」
ネオンがサフィヤに向かって静かに言った。
「あの〜さっき銃弾撃ったの、オラなんだがなぁ…」
スーが細々と言った。
今ここに、久しぶりに全員が揃ったのだ。
しかし、そんなことは誰も気にしなかった。
みんな、じっとソフィヤを見つめている(ブレインは除く)。体が燃え、もだえている。
数秒後、シャスナが鎮火剤を彼女にぶっ掛けた。火は消えたがそこにな生々しい火傷が残っている。
サフィアの体が以上に熱くなった。
本当にむごい…むごすぎる。戦争は…。
V
―――誰かの声がした。
サフィアが始めて地軍隊(デス・フェニックス)と戦った時に聞こえたあの声だ。
ただ、とても懐かしい、堂々した声になっていた。
「サフィアよ…今、とても苦しい状況だな。ソフィヤの痛みを自分が味わいたい…そう言う気持ちだろう?でも、それはお前にとって良いことなんだ。人は、苦しんで苦しんで…人となるのだ。苦しみをあじわ無い人間は人間ではない。ロボットだ…」
じゃあ…ソフィヤをこのまま見殺にしろと言うのか?
「そりゃもちろん違うさ。大丈夫、ソフィヤは死なない」
サフィアはホッとした。
「そこでだ。サフィア、君に一つ力を与えよう。トライブレスの超(サイキ)の中の五神の力の1つ『冷神』を呼び起こす力だ。全てを冷やし、凍らせる事ができるのだ。左手首が神手首となる時、それを発揮するだろう」
サフィアはコクッとうなずき、サイキブレスを使うための構えをした。
!!!―――サイキ―――!!!
サフィアはまだソフィヤの怒りが失せず、体が異常に熱い。しかし、左手首…サイキブレスだけは異様に冷たい。
これが冷神か…そうサフィアは思った。
そしてサフィアとブレインが一斉に叫んだ。
みんなのために…負けない―――SK・フリーズ!!!
アハハハ…サフィア、今度こそは…この星と同じ運命にしてやる―――デス・ディメン・ダーク!!!
サフィアの手から青白い冷気が、ブレインの手から青黒い炎が放たれ、ちょうど2人の中間辺りでぶつかった。
シューシューと言う蒸気が上がる音が耳をつんざく。しかし、彼は諦めない。ブレインも負けてはいない。
「俺たちはムシケラなんかじゃない!」
少し冷気が炎の方へ動いた。
「そこがムシケラなんだ!言い訳などせずに男なら立ち向かえ!」
また炎と冷気が同じ長さ位まで戻り、さらに5mほど前進した。
蒸気の音が激しくなる。
「みんな、祈るって知ってる?それは、目に見えないのよ。見えないなら意味が無いって言ったらそこまでだけど…。でも、なぜかそれが後押しとなることがある魔法にもなるのよ」
シャスナは2人が格闘している背後で言った。
「それで…なんなんや?」ネオンが慎重に言った。
「私達も祈りましょう。それが本当に魔法なら…サフィアが勝てるって事」
シャスナは両手を交差し、目をつむった。
冷気が1mほど炎に立ち向かった。
「な…に…」
「なるほど…行けそうやね、頑張れ!サフィア!」
ネオンがエールを送った。
それと同時に冷気が前進し、炎と同じ距離に並んだ。
もうサフィアは体力に限界だった。
しかし、誰かが背中を押しているような気がした。なので何とか持ちこたえる事ができた。
「オラも応援するだ!」スーが合掌した。
「さあ…我々も祈りあの救世主様の援護をしましょう」生き残った妖精達が祈った。
その時、遠くから光がやって来た。その光は宇宙船の光であった。
「遅れてスマンッス!サフィア殿…がんばってくだされ!」来て早々、マスーが言った。
「こうしちゃいられない。我々も応援だ!フレーフレーサ・フィ・ア!!!」SPEのみんなの大合唱だ。
「ふい…オイラはまだ戦えない。だからオイラの分まで頑張るじゃん!」
はげた尻尾を上に向けながらロッジャーは精一杯の声で叫んだ。
もうサフィアの手から出た冷気はブレイン手前1mにまで行っていた。
「サフィ…ア…」ソフィアが微かな声でつぶやいた。
しかし、その声は遠くにいるサフィアの耳元にも聞こえるほど澄んでいて清らかだった。
「がんば…って…」
ソフィヤの両手は今、硬く握られていた。
「―――もう一度言う」サフィアがあえぎながら言った。
「俺たちはムシケラなんかじゃない…固い友情で結ばれた…
!!!―――――仲間なんだ―――――!!!
ついに冷気はブレインに触れ、強烈な水蒸気爆発となった。
「グ…グウゥゥゥゥ……U-Pu2にも勝ッタこの我ヲ…ひとまず退散ダ」
ブレインは喘ぎ喘ぎそう言うと、フ…と赤い閃光となって空の彼方に飛んで言った。
シーンとなった辺り…女王が言った。
「私達も行きましょう。あなた方の星へ」
W
それから数日後…地球時間の8月4日 宇宙船スリスタル号船内。
「やはり…あっしらが助かったのはシャスナのテレパシーのおかげッスね」
マスーが熱心に演説している。
「あのさ〜、もうその話6回は聞いたよ」ロッジャーが飽き飽き言った。
「まだこの事をお知らない人がいるかも知れないッス。だからあっしは説明するッス」
「しょうがない…みんな、聞いてるふりだぞ」サフィアがヒソヒソと言った。
「あっしはお嬢のテレパシーを聴いて、まだ見ぬ兵器、略さずに言うと電磁砲アルティメット・プルトニウム第2号砲弾の威力を想像してみたっす。初期型は星一個を丸々壊滅状態にしたと隊長が言ってたッス。だから2代目は更に強い。そう予測したッス」
「ふーん…で、どーなるの〜」SPEの誰かがグーグー言った。
「なので待機していた縦穴にいると落石なんかで閉じ込められる危険があると思ったッス。だから外に出た訳ッス。そう、これッス!この方法はまさにあっしの知能を最大限に生かした作戦ッスよ」
「ふーん…で、どーなるの〜」またしてもSPEの誰かがグーグー言った。
「この宇宙船のエネルギー源は恒星のソーラーパワーと非常用に電粒子をエネルギーとして使うことが出来るッス。そしてこの砲弾は電磁砲…つまり電粒子の塊といえるはずッス!だから砲弾の電磁を吸収、エネルギー化し、その時に電粒子以外の物は吸収せずに宇宙船をわざと避けながら通り過ぎて行くッス。それを…」
「ハイハイ、分かった分かった。十分伝わったと思うわよ」
シャスナがヒートアップしたマスーの大演説を制した。
サフィアはこの数分後、治療室にいるソフィヤの元に向かった。
最近ずっと頭から離れない事をソフィヤに告げたいのだ。
そう…あの夢の事だ。U-Puだのヨーロッパだの…とにかくサフィアの知らない事だらけだ。
それ所かなぜあの夢を見たのかも疑問に思う。
サフィアは治療室に着いた。
「誰…ああ、サフィア。どうしたの?難しい顔して…」
ソフィヤはあの時よりだいぶ顔が元に戻ったがまだ少し火傷の痕がある。
サフィアはあの夢の一部始終を話した。
ソフィヤはサフィアより更に難しい、驚いた表情をした。
「な…何もかもあの戦争と同じよ」
あの戦争とは第五次世界大戦の事である。
今でもその事を口にするのも恐れている人がいるのであの戦争と呼んでいるのだ。
サフィアはやっぱりあれは現実にあったものだったのか…と思った。
「と言うと…俺は記憶を失くした前はその戦争があった時代を生きていたのか…」
サフィアは今年の6月18日より以前約15年間の記憶が無くなっているのだ。
「ま、まさか…あれから160年間位も経っているのに。って事は……」
「じゃあ何で俺はその事を知っているん――もしや…知ってるのか?」サフィアが恐る恐る尋ねた。
それでもソフィヤは黙ったままだった。そして身震いして口を開いた。
「真実は…時に人を崩壊してしまう事があるの…ある有名な作家が言ってたわ。もしこの事があなたにとっての崩壊へとつながってしまう可能性があるかもしれない。それでも良いの?」
「……俺は、真実を知る権利があると思うんだ。自分の事を知らずして他人を知るべからずってことわざと同じさ。さあ来い!!!」
「分かったわ…もし、その夢が本当に偶然じゃないとすればこの夢を見る方法はただ1つ…サフィア、あなたは幼い頃の記憶が無いのよね?この2つの謎がめぐり合った時…謎は解ける」
ソフィヤは最後に大きく深呼吸をした。
「あなたは何者かの手によって幼い頃の記憶を抜き取り、その記憶をあの戦争の記憶と塗り変えて記憶の奥の奥に閉じ込めさせたのよ。だから普通はその記憶が思い出せないのよ。しかし、この方法は物凄く危険な大手術でないとできない。そして、この高度な手術ができるのは鳥人1号…私のお父さんを創り、ブレインを創ったと噂されている…
―――――――Drハカセ
辺りがシーンとした。
サフィアは鳳凰を鳥人にした人物とブレインと言う凶悪な人間を創った人物がどう考えても同一人物とは考えるこができない。
サフィアは、これまで味わった事が無い位めまいと立ち暗みがしてソフィヤのベットにもたれかかった。
頭が真っ白になり、もう何も考える事などできる訳が無かった。
ソフィヤも、サフィアをじっと見守る事しかできなかった。
アトガキ
ドも、チャイナです。
眠いです。
最近暗いオチばっかりだな。
ん?待てよ…この中巻でブラック以外の締めくくりって…あるのか?
更に待てよ…この小説(上巻、下巻を含む)でブラック以外の締めくくりってもしかして最終回だけじゃ…。
ムムム???その最終回もなんかブラックな締めくくりだったような…(その次の作品の予告として)
ヤバイ、やばいぞ!!!
いろんな意味でやばいぞ!!!
ってなワケで眠いんでこの位にしておきます。ハイ…
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