作品名:自称勇者パンタロン、ずっこけ道中!
作者:ヒロ
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 そして伝説は終わろうとしていた……。

 俺は草むらの影から遺跡の入り口を見て頭を抱える。マジかよ、何であいつらがいるんだ〜!?

 アルゴス大森林の奥深く、ミラノ遺跡に到着した俺達は遺跡に入るため入り口に設置されていた受付に向かおうとしていた。だが、その途中で俺はとんでもない奴らを見つけたのだ。

「アルガニスタン帝国最凶最悪の軍団、黒竜騎士団……。しかも俺の班のメンバーどもがいるじゃねぇか……」

 灰色の魔術師ニコル、沈黙の暗黒騎士ゼルド、慈悲無き牧師メイスン。奴らは俺がかつて黒竜騎士団第七特殊部隊にいた時に一緒に組んだメンバーだった。奴らは受付のジジイと何か話をしている。何であいつらがいるんだ?ここに来ているのって紫竜騎士団じゃなかったのかあ?!

 何度か俺はあいつらと任務についたことがあるが、あいつらの無茶苦茶なやり方についていけなくて途中で逃げ出したのだ。特に灰色の魔術師ニコル、こいつはとんでもねぇ。マジでイカれてやがるんだ。

 俺は無抵抗なモンスターを八つ裂きにし返り血を浴びてケタケタ笑うあいつの顔を思い出しブルブルと震えた。

「ねぇ、お兄ちゃんなんで僕達こんな所に隠れるの?」

「バカ!顔を出すな!頭を下げて隠れていろ!」

 俺はリアンの頭を慌てて押し付ける。み、見つかってないだろうな……。

 俺は草むらの影から入り口を見る。奴らはもういなかった。遺跡に入ったのだろうか?

 とにかく、見つかったらヤバイ、俺が八つ裂きにされちまう……。

「リ、リアン、わりい俺ちょっとトイレ行って来るわ」

 そう言って俺はその場をそ〜っと離れると、リアンが見えなくなった所でダッシュで駆け出す。

 悪く思うなよリアン、あいつらに見つかるとマジでヤバイんだ。お前もさっさと村に帰るんだぜ。生きてれば、またチャンスはやってくるからよ。

 俺はリアンのいた方向をチラリと見て手を合わせ謝る。

 その時、俺は足を引っ掛けられ思いっきり転んだ。そして固い何かに勢い良く激突する。

「い、いって〜」

 思いっきり打ち付けた鼻を押さえながら、俺は目の前にある黒い鉄の靴に気がついた。どうやら俺がぶつかったのは人間だったようだ。

「す、すまねぇ」

 そう言って俺はぶつかった相手を見上げた。そこには巨大な斧を抱えた暗黒騎士ゼルドが立っていた。

「ど、どっひゃ〜!!」

 驚いた俺は後ろに飛び跳ね、また何かに当たる。

 振り向くとそこには真っ黒な聖書を持ち佇む慈悲無き牧師メイスンがいた。

「ぎょえ〜!!」

 あまりの驚きに俺は腰を抜かしてしまった。その場から逃げ出したいが体が思うように動かない。

「やぁ、久しぶりだねパンタロン!」

 こ、この声は……。

 俺は声のした方を見る。そこには子供のような笑顔を見せる灰色の魔術師ニコルがいた。

「げぇ!!ニ、ニコル!?」

「そんな泣くほど僕達と再会できて嬉しいの?僕もとっても嬉しいよ。だって、また楽しいオモチャが手に入ったんだからね」

 そう言うとニコルはケタケタと笑う。その目は笑ってはいなかったが。
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