作品名:トリガー
作者:城ヶ崎 勇輝
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 参議院内部。一つの角を曲がるたびに1分隊(8〜12人)が2人に攻撃を仕掛けてきた。
紅い絨毯が延々と続く、その中で、何人もの人が絨毯を染めたのだろうか。
何度敵の挟み撃ちで命を落としそうになったか…。トリガーの人並み以上の機動性とチーの精密な銃さばきによって危機を脱した。
クラックエイジ分隊の一人が手榴弾の安全ピンを抜き、思いきりこちらに投げつけた。が、敵の手の爪先から10cmの所でチーのスナイパーライフルから撃たれた7.62mm NATO弾によってそれは打ち抜かれた。
その一発で敵分隊は壊滅状態になった。
「でかした…さあ、行くぞ」
トリガーが合図を送ると2人は隙を見せずに走り出した。

    〜トリガー〜 屋内戦

もう、何人の仲間が殺され、何人の敵が死んだのかも分からない。もちろん、トリガーとチーも何人の心臓を撃ち抜いたことか…。目的が一体なんなのかさえわからなくなりかけていた。
その時、トリガーのズボンの右ポケットが振動した。
それは、司令官から渡された小型トランシーバーであった。司令官が呼んでいるらしい。
彼は小型トランシーバーを口元に当てて応答した。
「こちら、トリガー。どうぞ」
“おお、やっと返答が来た”
司令官のほっとしたような声が無線を通してわかった。
しかし…やっと返答が来た?確かこれが初めてのはずだが…?
“みんなのトランシーバーと繋げてみたんだが、誰も反応がなかったのだ。もしかしたら…君が最後のシューティング隊なのかもしれん。どうぞ”
「私だけではありません。チーがまだいます。どうぞ」
トリガーはいたって冷静な口調で答えた。しかし、心の奥底は暗黒の闇雲がぎっしりと、一瞬にして立ちこめた。
“良いか、よく聞け。君たちの居場所は発信機によってわかっている。今から最短ルートを教える。20m進んだ所にある階段を上れ。そして、最上階に着いたら右にある扉を進み、そのまま真っ直ぐ行け。そうすると参議院本会議場がある。そこで、ゆっくりと話せるようになったらまた連絡しろ。城崎はもう目の前にいる。司令官終わり”
「了解。トリガー終わり」
階段を駆け上がりながら、トリガーは通信を切った。
「なんやて?」
隣のチーが不思議そうに言った。
「どうやら…俺たちが死んだ瞬間、このミッションは失敗になるようだ。だが、ボスの居所もうすぐらしい」
いたってクールに、トリガーは言った。
「……よし、なんなら、アタシの最終手段、とらせてもらうで」
チーはその意味の意味を理解したようで、愛用のリボルバーをいじった。トリガーにはその意味が全くわからなかった。
「よっしゃ。あたしのM24スナイパーライフルは機関銃の要素も入りはったんやで!」
つまり、M24自体の威力と射撃命中度を落とさずにスナイパーの短所である連射ができない事を見事に補った、ある意味無敵のライフルとなったのだ。
この機関銃はただ一つしかなく、Drハカセなるものが作ったらしい。
「おいおい、もっと早く使えよな」
「そりゃアカン。銃弾がもったいないんや。1分間毎に700発やで。大阪人はけちけちしとるとか言うけんけど…」
「確かに、お前の言うとおりだな。今回に限っては」
トリガーがチーをちゃかした。2人はさっきよりもだいぶ気が楽になった。
その時――最上階へ行く最後の階段を上ろうとしたとき――重機関銃5機と軽機関銃数機、ピストルを持つ敵員が十数人待ち構えていた。今までの戦闘で最高の人数である。
銃弾がチーの右ひじと左太股をかすりながら戦闘は開始された。
「オラオラオラオラかかってこいやー!!!」
チーはひるむことなく、雄叫びを上げながら機関銃のようなスナイパーライフルで連射した。
どうやら情報としてチーの銃は連射不可能としてクラックエイジに広まっていたが、この場を見て敵軍は恐怖と混乱に飲まれた。
そして、1分もしないうちにこの戦闘は終了した。
「ふう…やっぱこれ、気持ちええわ〜」
チーはサワヤカな笑顔を見せた。
「なんか『セー○ー服と機関銃』をリアルで見ているようだな」
出る幕がなかったトリガーが失笑した。


 “閣下!城崎閣下!反乱軍の残党2名がもう参議院本会議場の目の前にいます!し、しかも、女の方がパワーアップしてます!特に銃がッ!”
 ここは国会議事堂参議院のどこか。暗く広い部屋の中央にぽつんと玉座が立っている。
そして、その玉座に居座っている者こそ、クラックエイジのボス、城崎勇一である。
今、無線のような物で参議院本会議場前――シューティング隊との戦闘が行われている唯一の場所――と交信しているところだ。
「焦るな。ネズミの1匹や2匹、すぐに処理できるであろう。どんな武器を持っていても所詮人間は人間。銃弾が直撃すれば、それで終わりさ」
冷たい城崎の声で彼は身震いをした。
“し、しかし…そのネズミらは我々が持っていない何かを身につけているようですよ…。あ、そのネズミが来…ウグホァ!!!…ツーツーツー”
彼からの通信は途絶えた。しかし、城崎はニヤリと笑って言った。
「あいつらには勇気と自信で満ち溢れているようだな。しかし、私には到底かなわんのだ。勇気と自信がどんなにあろうと…」

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