作品名:此処に兆一・命動章
作者:七木ゆづる千鉄
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茂野河号は七地球順幹線の中心に辿り着き、其処から時空の穴に入った。今度穴から出たところが最初の目的地になるのだが、その前に天河・億次郎・兆一・京が四人で何かひそひそ話をして、そして兆一が突然、
「定の、不定!」と叫びながら「不定の定」と逆の動作、「不定の定」の印を腹から額へぶつけた。
すると、兆一の姿が黄金色の霧状になり、そこに京が「天通拍手」、するとそこに一人の赤ん坊が出て来た。兆一が赤ん坊に変身した?そして億次郎はオリジナル・ガンダに変身。
「今回、笙子君の捜索はこの形で行く」と天河。そのままの姿だと奴等、ヨロズを万和に戻しかけた連中に目を付けられるので、この変装で行くという。そこで他の面々も、自分のガンダ石を使って今までの自分とは違う自分に変装した。しかし京だけは変装せずそのままの姿で行くことになった。面々が変装しているところを見たヨロズが「その方がいい」と言ったのである。
そして茂野河号は空間の穴を抜け最初の星へ到着した。この星は自分達の星のことを「地球」と言っているのだろうか?
茂野河号が着陸しようとしている所は、その星で最も大きい湖だった。その回りには店が建ち並んでいる。此処でこの人々とどう会話をするか、兆一と京の登場である。
先ず兆一が泣き喚く赤ちゃんの役をして、京がそれをあやす母親の役をする。誰かがきて言葉をかけてきた。「××××」一体何語だ?誰も解らなかったが、「『赤ちゃんの具合はいかがですか?』だよ」と皆の心に響く声がした。これは兆一の声!兆一は泣き喚いている振りをして、実は冷静に彼らの言葉を、自らのウルトラ・リンガルを駆使して通訳をしたのだ。
「はい、一寸愚図っていて困っているんですけど」京のこの日本語が相手に通じるのか、誰もが心配したが、そのあとの相手の返事に皆は驚いた。
「それじゃあ、私が抱っこしてみましょうか?」完全な日本語である。これも兆一のウルトラ・リンガルの力。自分達の言語は相手の言語、相手の言語は自分達の言語に一発変換して伝えてしまうのだ。
「よくその赤ん坊の格好でこんなことができるなぁ」この億次郎の言葉に、
「逆だよ。赤ん坊の姿だから直ぐ相手の言いたい事が解ってしまうんだよ」と兆一。
これからどうしようか?と思った一同はその声をかけてくれたおばさんの家に厄介になることにした。宿代は兆一のガンダ石から出る黄金で賄う事にして。
そして、そのとき「事件」は起こった。茂野河号が停泊していた湖に突然嵐が巻き起こり、そこに見た事もない形の宇宙船が降りてきたのである。
「と、とうとう地球にもUFOがやって来たぞ」街の中で誰かの声がした。どうやら此処も「地球」に間違いはないらしい。それにしてもこのUFOは一体なんだろう。笙子と何か関係があるのだろうか?
UFOから、頭が蟹のような足二本、腕二本の直立宇宙人がやってきた。よく見ると肩に自分の小さい分身を乗せている。そして自分達は十倍の大きさになり、分身を街に向かわせた。
「我々は何処までも大きくなれる。お前達との交信は小さい分身で十分だ!」とでも言いたげに。街には恐怖の嵐が吹き荒れていた。このことはこの地球中の至る所にも知らされたようだが、何処も「対処不能」の返事ばかり。街中絶望の空気が満杯だった。
「よし、此処で俺達がやらねば誰がやる!」と叫んだ兆一。その胸にはどんな作戦があるのか?
「オリエンテーションでやった演芸・『ちっくい大行進』を行くぞ」
この天河の号令と共に、演芸『ちっくい』大行進が始まるのである。
演芸:ちっくい大行進
(中と善三郎が仁王立ちしているその間に、正座して遥がいる。)
中:(遥を見下ろして)「おい!おまんは何で俺達がこうしているか解っているのか?」
善三郎(歌舞伎の台詞のように)「解ってぇ、いるのかぁ?この野郎ぅー!」
(ここで宇宙人の間から大爆笑が起こる)
遥:(か弱い声で)「わ、解りません」
中:「言っている矢先からその声、どういうこんだ!」
善三郎:「どういうこんだ、どういうこんだ!」
中:「おい、おまん」
善三郎:「おい、おまん!・・・って誰のこんだ?」
中:(善三郎を指さして)「おまんのこんだ!俺が合図を出すまで暫く黙れ!」
善三郎:(気を付けをして無言で応答)
中:(遥を指さして)「おまんには気合いというものが全くない!これからおんだあ(俺達)がそれをたたっ込んでやる!解ったか!」
遥:(小声で)「はい」
中:(善三郎に合図を出す)
中・善三郎:「ちっくい!」
(この後暫く、兆一の「はい」と二人の「ちっくい!」が続く。しかし段々兆一の声が大きくなり、やがて二人が兆一を挟んで踊り歩きをしたその時から)
二人:「ちっくい、ちっくい」
遥:「はーい、はーい」
(このとき三人の体がだんだん小さくなっていく。宇宙人達はそれに合わせて分身の大きさを小さくしていく。三人のやりとりが数回流れた後)
遥:「ぶぁさ、左場・折り!」(「左場読み剣」の後で右手の剣を折る、変化技「左場折り剣」をやった後で、何かが応援団一同の身体に降り、三人以外の体が大きくなる)
太鼓の音一回の後、
全員:「でっかいだぁ!」
このあと自分達よりも大きくなった茂野河応援団を見た宇宙人は恐怖の声を上げて宇宙船に戻って行った。此処で兆一が心の声で宇宙人たちに聞いた。
「お前等、笙子についてなにか知らないか?」
「ショウコ?ああ、消子の事ですか?彼女なら今生まれそうになっている所です。助けてください、あれが生まれたら我々も危なくなってしまう」
生まれそうだって?笙子はもうこの世にいるじゃないか、と言いかけた中・善三郎に順子が突っ込みを入れた。「もどきだって言ってたじゃない!」そしてこの後全員で話し合った結果、UFOには億次郎・兆一・京の三人がついていく事になった。乗り物は「いらない」とのこと、億次郎はオリジナル・ガンダ・兆一は赤ん坊ゆえの念能力の極み・京は新人間としての念能力の極みでそのままで宇宙空間に行けるという。帰りは笙子を乗せてミニ茂野河号で帰ってくるから心配は要らないよ、と言いながら宇宙人のUFOについて行った。そこで待ち受けている笙子は、一体どんな風に変わっているのだろうか
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