作品名:奇妙戦歴〜ブルース・コア〜
作者:光夜
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 職員室にはほとんど生徒が訪れる事は無い、それはなぜか?嫌みな先生がいる、タバコ臭い、居心地が悪いなどの理由がここ『田町第三高等学校』の生徒達の意見だ。当然問題を起こせばその生徒達は職員室に呼ばれこっぴどく叱られる、更に行為を重ねれば脅しを貰うおまけ付きだ。
 ではどんな事で職員室に呼ばれるのか?たとえば・・・・・・・・

 「大バカものー!」
 職員室で窓が割れんばかりの声を目の前の四人に浴びせた教師、四人の内三人は余りの大声に目を瞑った。
 「一体何を考えているんだお前達は、授業中外に飛び出した生徒がいるなんて本校創立始まって以来初めてだ!?しかもその中に今日来た転校生が混ざっていたなんて・・・説明しなさい斑鳩君」
 そう職員室には進を初め葵、唯、孝太の四人が立たされていた。
 「・・・・・」
 進は教師の質問に答えない。
 「黙ったままじゃ分からんだろう!なんとか言ったらどうなんだ!」
 あんたは少し黙ったらどうなんだ、孝太はそんな表情をしていた。
 「あ、あの、先生?」
 「何かね坂本君?」
 少々気迫に押されながら葵は口を開いた。
 「あのですね・・・・私が斑鳩君を連れ出したんです」
 この答えに進も含め唯と孝太が葵を見た。
 「それは本当かね坂本君?・・・・ならば何故連れ出した?」
 葵は睨みにも動じずマイペースに喋った。
 「えっと彼に早くこの町に馴染んでもらうため怒られるのを覚悟で連れ出しました、唯と孝太はそんな私を連れ戻しに来たんです」
 その答えを聞いた教師は顔をかしげた。
 「はて?斑鳩君の家の住所はこの町のはずだが?」
 「・・・・・・・」
 見ると進はもう葵を見ていなかった。
 「はぁ、もういい・・・・坂本君は反省文を一週間以内に私に提出する事、以上」
 「失礼しました」
 そう言って四人は職員室を出た。
 「葵、何で俺たちをかばったんだ!元話と言えば斑鳩が勝ってに出て行ったんだろう?」
 職員室を出た所で孝太は溜め込んでいた不満を吐いた。
 「そうだよ、私と孝太は連れ戻しに行ったんじゃないよ。昔から葵は一つの事に夢中になると周りが見えなくなるから心配になって追いかけたんだよ」
 孝太も唯のセリフに頷いていた。
 「ありがとう二人とも、でも本当のこと言ったら怒られると思って」
 そのセリフに二人は黙った、たしかに化け物と進が戦っていたなんて誰が信じるだろうか。
 孝太は怒りの矛先を進に向けた。
 「それよりも問題は斑鳩おまえだ、解るように答えろ!何なんださっきの化け物は!?それにそんなもの持ち歩いたら銃刀法違反だろ!」
 進は怒鳴る孝太を無視して葵に言った。
 「・・・・・・お前はもうこれ以上かかわるな絶対に・・・・」
 それだけ言って教室に戻っていった。
 「こらー!俺を無視するなー!」
 進に無視されて孝太は怒っていた。
 「まあまあ落ち着いて」
 そんな孝太を唯はなだめた。
 「斑鳩君ってこの町の出身なんだね」
 「うん、そうみたいだね先生言ってたし」
 葵は少し考えてから言った。
 「よし!斑鳩君の家を見つけよう、そうすれば昼間の事が何か解るかも?」
 この言葉に孝太は呆気に捕られながらも抗議した。
 「何言ってんだよ葵、またあんな化け物とかかわりたいのか!?」
 孝太の怒鳴り声の横から唯が止めに入った。
 「無理だよ孝太、今の葵に何言っても」
 唯の言う通り葵は目を輝かせながらワクワクしていた。
 「よーし、がんばるぞー!」
 そう言いながら張り切って教室に戻っていった。
 しかし教室に戻ると進の姿は無かった。
 「あれ、斑鳩君は?」
 葵が教室を探していると窓の方を見て唯が言った。
 「あ、校庭にいるよ斑鳩君」
 「え、どこどこ?」
 見るとカバンと袋を持って校門から出て行く進の姿が見えた、それを確かめると葵は急いで教室から飛び出した。
 「追いかけてどうする気―!」
 校庭に下りた葵に唯が教室の窓から大声で言ってきた。
 「えーっとねー!・・・・追いかけながら考える!」
 そう言ってまた進を追いかけて走って行った。
 「・・・・ホントに良くがんばるよね、葵・・・・・」
 唯は葵のいなくなった校庭を見続けていた、ふと後ろから孝太が呆れた調子で言った。
 「そうだな、それほどあの化け物の事が気になんだろ」
 校庭を見ていた唯は孝太の方を向いた。
 「私はそれだけじゃないと思うなー葵が張り切っているのは」
 「あ?どう言うことだよ唯?」
 いまいち理解できていない様子の孝太。
 「さーねー?・・・・まあそれはさて置き、これから孝太はどうするの?帰る?」
 「そうだなー行く所があるからその後帰るかな」
 「じゃあ私も行く、どこ行くの?」
 「別について来なくていいよ、たいしたとこに行く訳でもないし」
 「いいから、いいから」
 そういって半ば孝太は唯に引っ張られる形で教室を出て行った。唯も葵に負けず劣らず強引な所があるようだ。


 進は学校の帰りにある坂道を下っていた。両側に木々が並ぶ舗装された坂道だ。

 てくてくてく

 「・・・・・ん?」
 後ろからの気配に進は気づいたようだ、進は手に持った袋の口を緩めた。

 ササ、ササ、

 進が少し後ろを見ると木陰に隠れる影がひとつ、しかし木の横からメモ帳がはみ出ていたのを見て袋の口を閉めた。
 (・・・・・・またか、関わるなと言ったはずだが・・・・・)
 そう、木の陰に隠れているのは葵だった。葵は進の後を追いかけて家をつきとめようとしていた。
(こうして後をつけていればその内斑鳩君の家にたどり着くはず、そうすれば勢いにかこつけてあんな事やこんな事を聞き出せる・・・・・・・・・はず、よしがんばるぞー)
 自分に勢いづけて進の監視を続けようとしたが。
 「あれ?斑鳩君がいない、どこどこどこ?」
 見ると彼方先に進の姿があった。
 「あ〜!待って―!」
 大声を上げて進を追いかけて行った。
 それにして、後をつけてるとは思えないほどの大声を上げるとは・・・・

 一方その頃
 「お、ここだ唯俺の行きつけの店『八十七(エイティーセブン)』」
 「いつも行くカジノ専門店だよね、私来るの初めてなんだ。でもなんで八十七なの?」
 「入れば解るよ、行くぞ」
 孝太は店のドアを開けた。

 チリン〜チリン〜

 ベルが鳴り来客を知らせる、店の奥のカウンターには新聞の端から覗く老人の目がある。
 つまり店の主人の年齢が八十七歳という事だ。
 「解ったおじいさんの年齢がお店の名前なんだ?」
 だからもうそれは説明したって・・・・まあいいか
 「そういう事、よぉじいさんまた来たぜ」
 老人は新聞を畳むとカウンターに置き孝太に向かって笑いながら言った。
 「フォ、フォ、フォ、来たな若いの。今日は彼女も一緒か?」
 「え、あ、ち、違うよ!そう言うのじゃなくて」
 「フォ、フォ、フォ、フォ」
 唯の慌てる姿を見て老人はまた笑った。
 そんなやり取りを気にとめず孝太は棚からサイコロを出した。
 「そいつが欲しいのか?」
 「ああ、」
 サイコロを見た唯が首をかしげた。
 「あれ?それ何も書いてないよ」
 見ると孝太が取り出したのは六面が何も書いていないサイコロ三つだった。
 「ああ、これなら何にでも使えるからな」
 「そうなんだ」
 カウンターに置くと老人がトランプを取り出した。
 「それじゃあ始めようか、わしが切るからお前が引け、偶数か?奇数か?」
 そう言ってトランプを扇形に広げ孝太に出した。
 「偶数だ」
 一枚カードを引いて表を見る『クラブの2』のカードだ。
 「2か、税込み合計で2割引じゃよ」
 そう言ってレジを操作した。
 「安くしてくれるの?」
 「ああ、じいさんの趣味でな偶数か奇数をあてて出た数字の数だけ割り引いてくれるんだ、気さくな爺さんだろ?」
 「うん、サービス抜群だね、でも十を引いたらどうするの」
 「十から上は割引無し」
 「フォ、フォ、フォ、フォ」
 老人は笑いながらも手際よく袋に商品を入れ交換に料金を受け取った。
 「毎度、また来なさい。お嬢ちゃんも連れて」
 「うんまた来るねおじいちゃん!」
 孝太の代わりに唯が元気良く答えた。

 カラン、カラン

 来た時とは違う音でベルが鳴りドアが閉まった。
 「フォ、フォ、フォ、フォ、あの小僧も色を知る歳か・・・」
 店を出て歩き始めた所で孝太は何かに気づき立ち止まった。
 「おかしいな」
 「何が?」
 横から覗く唯、孝太は袋を開けて中を確かめた。
 「やっぱりな、あのじいさん・・・・・ほら」
 袋から中身を出した、買ったサイコロとは別にガラスで造られたダイアモンドが入っていた。
 「綺麗なキーホルダーだね?」
 「サイコロにしては重いと思ったら・・・・・サービスのつもりかよまったく」
 そう言うと孝太はキーホルダーを唯に渡した。
 「え、孝太?」
 「やるよ、じいさんもそのつもりで入れたんだろ」
 孝太はそれだけ言って歩き出した、後ろから唯が追いかける。キーホルダーを大事に握りしめて。

 一度見失いかけながらも葵はぴったりと進の後ろから尾行していた。
 坂を降りたところで商店街とは逆に進は歩いて行った。
 (あれ、そっちはつこう止めじゃなかったっけ?)
 葵の言う通り進が歩く先にはフェンスが在り通れなくなっている・・・・が

ガチャン、

 (え?)
 鍵が掛かって要ると思われたフェンスの扉を開き中へ入っていった。
 追いかけるため飛び出そうとしたが・・・・・。

 ガチャリ、

 進は鍵を占めて本当の通行止めにした。
 「そ、そんな〜・・・・・どうしよう・・・」
 進の居なくなったフェンスを見つめながら葵は途方にくれた。
 「これでいい・・・・・これで・・・」
 ポツリと呟いて進は歩き出した。

 「ねえ孝太、ここ入ろうよ」
 「ん?」
 孝太が唯の指差す方を見るとゲームセンターがあった。
 「ゲーセンか・・・・・よし入るか」
 「うん」

 ガ―――――

 自動ドアが開き二人は中に入った。中は冷房が効いていて涼しかった。
 「どれをやるんだ?」
 孝太が聞くと唯はあたりを見回し・・・
 「あれにしようよ孝太」
 唯が決めたのはゲームセンターの定番UFОキャッチャーだった。
 「これか、えーと二百円、二百円」
 孝太がコインを入れると機械が動き出した。
 「孝太、孝太!あれ、あのネコ捕まえて!」
 唯が注文したのは丁度真中に白いネコがあった。
 「あれか、よーし・・・」
 狙いを定めてキャッチャーを降ろすと。
 「すごーい!取れた取れたよ孝太!」
 見事にネコの人形を取った、それに唯は大喜びだった。
 「そんなに気に入ったのかそれ?」
 「うん」
 先ほど取ったネコのぬいぐるみを大事そうに抱き抱えていた。
 「ありがとね孝太」
 「ああ、ゲームは得意だからなこんな事でいいならいつでも言えよ」
 「うん」
 それからしばらく孝太と唯の二人はレースにダンスと色々とゲームを楽しんでいた。
 「ふう少し休むか、俺飲み物買ってくるよ唯は?」
 「オレンジジュース」
 「解った、ちょっと待ってろ」
 そう言って孝太は外に飲み物を買いに行った。
 「さーて、孝太が帰ってきたら次は何をしようかな」
 次に遊ぶゲームを探していると後ろから誰かが声を掛けてきた。
 「かーのじょ、ひとり?」
 唯が向くと若い男が二人・・・ナンパだ。
 「結構です!私人を待っているので!」
 強気で言う唯だったが。
 「じゃあそいつがくるまでの間俺たちと遊ぼうよ」
 「だからいやだってば!もうどっか行ってよ」
 嫌がる唯にしつこく言い寄ってくる男二人から離れようとした。
 「いいから付き合えよ!どうせ暇なんだろ?」
 そう言って男の一人が腕を掴んだ。
 「痛い、痛いってば!」
 「まずはここを出ていい所行こうぜ」
 「そーそー」
 腕を掴んだまま歩き出そうとした時。

 ガツン

 「いってー!」
 唯の腕を掴んでいた男の頭に中身入りの缶が投げつけられた。
 「だ、だれだてめー!」
 男達の先には飲み物を買って帰ってきた孝太がいた。
 「孝太!」
 「何やってんだ、その腕はなせよ」
 「何だ彼女の連れか?腕ってこのことか?」
 男は握っていた腕を締め上げた。
 「い、痛い!離して!」
 「この!」
 孝太が殴りかかろうとした時もう一人の男が制した。
 「まあ待てよ兄ちゃん、どうだ勝負しないか?兄ちゃんが勝ったら彼女返してやるよ」
 「いいなそれここのゲームでやろうぜ、ゲームはは選ばせてやるからどれでも好きなのを選びな」
 (ち!勝手な事を、だけどあっちは二人に唯が人質か・・・・不利だな、仕方ないこれしか方法がないようだな)
 考えをまとめて孝太は男達に言った。
 「解った、それじゃああれにしようか」
 そう言って孝太が指差したのは現在ゲームランキング一位の座にあるガンシューティングゲーム『ハンティング・ゾンビ』、銃型のコントローラーを画面に向けて画面から向かってくるゾンビを打ち倒して点を稼ぐゲームである。
 「いいんだなあれで?」
 「ああ」
 四人は機械の前に立ちコインを入れた。
 「こっちは二人で一人に設定するからそっちは普通でいいぜ」
 ハンデを説明する男達を無視して孝太は黙ってゲームの設定を始めた。
 「おい!聞いてんのか!?お前は一人プレイだっての!」
 設定を続けながら孝太は言った。
 「いいよ、俺も二人分やるからそっちも二人ぶんでいいよ全部で四人プレイだ」
 この提案に男二人は笑い出した。
 「ははははは、何言ってんだよ正気か?言っとくの忘れたけど俺たちはこのゲームの上位ランクに入ってんだぜ」
 振り返った孝太は笑っていた。
 「いいから始めようぜ・・・・・ゲームをよ」

 ビ――――――!

 開始とともに男達二人は連携プレイで得点をたたき出していた。
 「おらおら!どんどんいくぜ――――!」

 ガン!ガン!ガン!

 男達の画面では次々とゾンビが打ち倒されていった。
 「どうしたそっちの調子は?・・・・・・・・え?」
 孝太の方を向いた男の手が止まった。
 「おいどうしたんだよ、早く撃っ・・・・・な!」
 もう一人も孝太を見て手が止まった。

 ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!

 孝太は男達が二人で打つ何倍も早くゾンビを打ち倒していた、単発音しか聞こえな二人と違い孝太はマシンガンのように撃っていた。
 「孝太がんばれー!」
 唯が後ろで応援していた。
 「な、何止まってんだ早く撃て!」
 「あ、ああ!」
 そう言われて男達は画面に眼を戻し撃ち始めた。
 「がんばれー!」
 唯の応援もますます強くなっていった。



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