作品名:奇妙戦歴〜ブルース・コア〜
作者:光夜
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「いったたた、ここは一つ下の階・・・か」
シンは運良く鉄骨に落ち落下を免れた。上を見れば屋上に大穴が・・・
「って降ってくるのかよ!!」
後ろへ跳び落下してきた「コア」――――――へアディス――――――のフットプレスを避けた、がこの行動によりシンの後ろが無くなり鉄骨に背中をぶつけた。
ヘアディスは状態をなおしシンを見た。
「前は怪物、後ろは壁か・・・・いいだろう楽しもうぜ」
刀を構え睨む、今にも一触即発の状況、だがお互いに次の相手の動きを待つ。時間にして一分。
(・・・・階段を上がって来る音?)
動けない今のこの状況で新手が来れば間違い無く不利になるだろう。
(なら・・・先に真横を通過する新手を!)
と考えたと同時に何者かが頭を出した。
シンはヘアディスを見た状態で刀を横に振った。真一文字に振った刀はターゲットに見事に向かって言った、これで首さえ落とせば完璧だったのだが。
「何?」
刀は金属音を響かせて止まった。
シンは刀を止めた相手を横目で見た、初めに目に入ってきたのは。
「アタッシュケース・・・お前はあの時の」
アタッシュケースを下ろした彼の顔を見て数時間前歩道橋で見た人物の顔と合致させた。
「また合いましたね、斑鳩君」
「なぜ俺の・・・」
名前を、と言おうとしたが彼―――ローゼン―――が口に指を宛てて止めた。
「今はそれよりも目の前の敵、僕は上に行きますよ」
「お、おいちょっと待てよ」
シンの静止に振り向きもせずローゼンは答えた。
「いいえ止まりませんよ、一人で二匹は大変でしょうけどあなたの実力なら勝てますよ・・・たぶん」
「二匹・・・?」
と同時に上から何かが降ってきた、黄色いガラス球・・・・ちがう。
「もう一つコアが!」
ビー球・・・もとい黄色いコアは周りにある鉄鋼材を吸収して鳥のような形に変形していった。
「プテラノ・・ドン・・・?」
その姿を見たシンは古代翼竜のプテラノドンを思い浮かべた。
コアの姿に見とれているシンをローゼンの一言が現実に引き戻した。
ローゼンは止まらないと言ったがいつの間にか立ち止まっていた。
「何を見とれているんです油断していたら負けますよ、黄色い下等の「コア」でも『イグニス』は強いですよ」
どうやら呆けているシンを見て危なっかしいと思い立ち止まったのだろう。心配された当の本人は。
「イグニス・・・?」
聞きなれない言葉を耳にしてシンはローゼンを見ていた。
「そのダイ・・・「コア」の名前です、ちなみにあちらの頑丈そうなのはヘアディスと言うんですよ」
丁寧だが面倒くさそうに説明をした。
「解ったらもう行きますよ、仕事がありますから」
階段を上ろうとした時シンが呼び止めた。
「待て」
静止の声に素早く返事をした。
「なんです!?あなたに構っていると上の友達が危ないですよ」
「おまえ、名前は?」
「・・・ローゼン=フェルドです。自己紹介なんて余裕ですね」
「まあな、上の奴はもっと根性があるかもあるかもしれないぜ」
「期待してますよ」
それだけの会話を済ませローゼンは屋上へ向かう、ただ顔はいつもの笑顔に戻っていた。
シンは改めて目の前の敵を見た。
「二対一かしんどいな・・・」
右には羽ばたきながら上下に動いているイグニス、正面は妙に怒りを顔に出しているヘアディスがこちらを見ている。
(・・・・無視されたのがカンに触ったのか?)
どうやら察しの通り無視された事に頭に来ているようだ。
「グォォォォォォォォオオ」
突然ヘアディスは吠えながら突進してきた。
「なっ!」
牛のように硬く大きな頭を突き出しながら突進してきたヘアディスを刀で受け止めた。
ガキィィィィンと金属がぶつかるような音が響いた、音から頭の硬さが見て取れた。
「ぐっ・・く、くそ!」
カタカタと刀が振るえている。突然の出来事にシンはもう一体のコア―――イグニス―――の存在を頭から抹消していた。
「キィィィィィィ!」
甲高い声の後イグニスはシンに向かって急降下していった。
(斑鳩がどうなったのか気になるが・・・)
穴を見ながら孝太はシンの安否を気遣っていたが激しく首を横にふり目の前の敵を見た。
「グゥゥゥゥゥ」
低く唸りながら値踏みをするように孝太を見た。
「ゥゥゥゥ・・・フ!」
唸り終わると今度は鼻で笑った、この態度(たぶん挑発)に直球型の孝太はカチンと来たようだ。
「い、いま鼻で笑ったな!」
「グゥゥゥフフ・・・」
更に簡単に挑発に乗ってきた孝太を面白がるように笑い始めた。
「ふ!ふざけるなぁぁぁぁぁ!!」
我慢しきれなくなった孝太はコアへと走りジャンプ。
「うらああああ!!」
大きく『斑匡』を振り下ろした。
ここまでは計算通り、コアはこのまま腕の刃で孝太を弾き飛ばそうと考えていた・・・が。
「グア?」
突如振り上げた『斑匡』を孝太が止めたのだ、訳がわからずコアは孝太を見た。
「へへ」
笑いながら孝太はコアの目の前に着地、いつの間にか『斑匡』は縦ではなく横に構えられていた。
「俺の勝ちだあああああ!!」
勢い良く『斑匡』を振った切っ先からはあの三日月型の刃がしかも赤い・・・いや紅い色をしている今までに無い色だ。
コアは何とか刃を防ごうと素早く自分の武器である右腕の刃をぶつけた。
紅い刃は貫通することなくコアのはと鍔迫り合いをしていた。
「なんで・・赤いんだ?」
どうやら『緑』という鍔は使用者のテンションにより異なる色を出すのかもしれない、しかし孝太はというと。
「まあ言いや、もう一回」
少し離れた所でもう一度孝太は『斑匡』を振った、今度は白いいつもの三日月が飛び出た。
キィィィィンと空気を切り裂く音を出しながら白い三日月は紅い三日月とぶつかった。
次の瞬間コアの手元で三日月が爆発した。
「ギャァァァァァァ!!!!!」
爆発と共に断末魔の叫び声が屋上に響いた。
煙が晴れる、そこのいるのは右腕こそあるもののその刃は刃と呼べる部分が爆発により吹き飛んでしまっていた。
「おまえ動きはいいけど頭は悪いみたいだな」
へへ、っと孝太は得意げに笑った。
「ウウ〜〜〜〜!!」
「なんだ怒ったか?だったらかかって来いよ!」
『斑匡』を構えボロボロになったコアを睨みつけた。
「ウウ〜〜〜!!!」
「へへっ」
一触即発のこの状況を見ている目があった。作業用大型クレーンの先端に立っている少年――――イリスだ。
「オフィスードがやられているとはな・・・・」
オフィスード、それがあのコアの名前だろうか・・・
イリスは懐に手を入れると針のようなものを取り出し狙いを定めた、狙っているのは孝太と睨み合いをしているコア。オフィスードの方だ。
シュッと勢いをつけて針をオフィスードに目掛けて投げた無駄の無いフォームだ。針は狙い通りオフィスードの背中に刺さった。刺さったと同時に針はオフィスードの体へ吸い込まれていった、いや針の方が中へ入ったと言った方が正解か。
「グウゥゥゥゥゥ・・・・」
効果はすぐに出てきた。孝太が壊したはずの右腕が見る見る内に元に、もとい針のような槍の形に変わっていった。
「おいおい、有りかよそんなのって・・・」
「ウォォォォォォォォォン!!」
高々とオフィスードは吠えた、そんな状況でも孝太は慌てない。
「単に刃が針に変わっただけじゃねーか、同じように砕いてやるよ!」
気合を入れ『斑匡』を腰に構え横一線に振った。
「行っけぇぇぇぇぇぇ!」
切っ先からは緑色の三日月が飛び出た、当たれば上と下が綺麗に二等分されるだろう、だが――――
「ウウウウ・・・」
オフィスードは針となった右腕を三日月目指して突き出した。そして衝突。
三日月は針に一刀両断され左右へと分かれ消えてしまった。
「そ、そんな『緑』の刃が消されるなんて・・・・・」
在り得ない光景を目の当たりにして孝太は『斑匡』を下ろしてしまったこの機会を見逃すほどオフィスードは甘くは無かった。
シュンッと孝太の前からオフィスードが消えた。
「あ・・・」
気づいた時には遅すぎた。普通人間の反応速度は脳から電気信号を使い光と同等の速度で物事を分析するがオフィスードの早さはそれをりょうがしていた、既にオフィスードは孝太の横に移動している。
「アアアアア・・・・」
低く唸り右腕の側面でなぎ払うように孝太を吹き飛ばした。
「うあああああ!」
勢いに任せ孝太の体は瓦礫の山に飛び込んだ、砂煙が上がりガランガランと瓦礫が崩れ落ちる音がする瓦礫の中に孝太がうな垂れるように倒れていた。
「う・・・ああ・・・く、くそ・・・なんて力だ」
たった一撃で孝太はボロボロになっていた立ち上がり『斑匡』を構えようと腕を動かしたとき激痛が孝太を襲った。
「ぐあ!!!?」
どうやら瓦礫に突っ込んだ時に体中をぶつけてしまい怪我をしたようだ。
(アバラが二、三本・・・・打撲もしていそうだな・・・・ち!)
次の考えを巡らそうとオフィスードが要る所へ目を向けた、がそこにオフィスードの姿は無かった。
「・・・・しまった!!」
打撲個所を見たとき一瞬目をそらしてしまったその一瞬をついてオフィスードは再度高速移動をしたのだ。
「何てこった・・・どこだ、どこから」
必死に孝太はオフィスードを目で探した。前後左右に気を配り全神経を集中させたしかしここは平面のゲームではなく三次元だ前後左右だけでは無い・・・
「!・・・上か!?」
孝太が上を見た、目の前には槍とそれをもつ巨大な影。助からない。
(ゲームオーバー・・・・か)
死を覚悟した孝太は目などは閉じない、全てを死を槍の攻撃を受け止めようとオフィスードを睨みつけた。
孝太の、
胸に、
槍が、―――――刺さらない。
ズドォォォォォン
バズーカが火を噴く音、と同時に火の塊がオフィスードを吹き飛ばした。突然移動方向を変えられた体は落下し床に叩きつけられ転がった。
「は・・・・?」
何が起こったのか全く解らない、とりあえず火の塊が飛んできた方向を見た。
「全く彼が言うほど根性が無いですねあなたは、下では帰りを待っている人がいるんでしょう?お別れぐらい言っても罰は当たりませんよ」
火の塊を撃ったのは喋っている彼のようだ。
「でも、死を覚悟したあなたはいい顔していましたよ」
ただ解るのは自分は死んではいないことと彼が笑っている事だけ。
「おまえ・・・は?」
間の抜けた声が孝太の口から出た。
「自己紹介ですか?余裕ですね彼とそっくりだ」
彼は笑ったままだ。
「僕の名前はローゼン、ローゼン=フェルドと申しますよろしくキミは?」
「藤原・・・孝太」
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