作品名:奇妙戦歴〜ブルース・コア〜
作者:光夜
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シンを捜している葵は屋上へ足を運んでいた。
「シン君だとしたら上だよね」
転校初日からシンは屋上で過ごしていた事が多いのを葵はよく知っていた。だから考える事も無く葵は屋上へ向かっているのだ。
ドアを開けた葵は辺りを見回したがそれらしい人影は見受けられなかった。
「あれ?居ないのかな・・・・あ」
ドアを開けたところからは見えなかったが角の壁際に足が見えた。
「シ〜ン君・・・・あら?」
葵が壁際にいるシンを呼んだがシンは壁に刀を持って寄り掛かったまま目を閉じていた。シンの横に座って目の前で手を振ったがどうやら寝ているらしく反応が無い。
何を思ったのか葵も一緒になって寝ようと目を閉じた。
(朝早かったし私も少し寝よう・・・)
気温は春並で丁度よくすぐに葵は寝入ってしまった。
部室では孝太と唯が葵が帰ってくるのを待っていた。
「遅いな・・・葵」
「遅いね・・・葵」
孝太は葵がなかなか帰ってこない事にいら立ち貧乏ゆすりをしていた。間もなくしていら立ちに限界を覚えた孝太が立ち上がった。
「たくしょうがない、行くぞ唯」
「え、行くって何処に?」
孝太を追いかけて唯も廊下へ出た。
「ねぇ孝太」
「ん、何だ?唯」
廊下を歩きながら孝太は唯を見た。
「葵が何処に行ったかわかるの?」
孝太はこの質問を聞いた後階段の前で立ち止まった、唯もその階段を見た。
「どうせ屋上だよあそこしか行く所が無いからな」
「あ、そっか。そう言えばいつも屋上に居たもんね斑鳩君」
「そーゆう事、葵もそれ知ってるから上に居るだろうよ」
そんな会話をしながら二人は屋上へと上がって行った。
日も高くなり屋上の気温が少し高くなった頃シンは目を覚ました。
「・・・・寝てた・・・のか。ん?」
シンは左肩が重いのに気づいた、横を見ると葵が片にもたれかかって寝息を立てていた。
「え!なんで葵がここに?」
立ち上がろうとしたがそんな事をすれば葵が倒れてしまう、起そうにも気持ちよく寝ている葵の顔を見るとそんな気も失せてしまった。
「仕方ない、起きるまで待つかな・・・」
シンは寝ていたときと同じ格好のまま空を見上げた、随分と日が高くなっているのに気づいた。
(今何時だ?孝太と唯はもう来てるだろうな・・・)
などと考えているとタイミングよくドアが開いた音がした。
「えーと・・・ああ居た居た、唯ちょっと待っててくれ」
「うん」
唯を入り口で待たせ孝太はシンの所へ歩いた。
「斑鳩、葵も来ているんだろ?さっさと下りて来い・・・・・ん?」
孝太は斑鳩の現在の状況を見て口が止まった。
「ああ、おはよう孝太・・・はは」
そんな孝太にシンは参ったと言った表情で笑った。
「・・・・・何やってんだ?葵がお前を呼びに言ったんじゃないのか?」
「さ、さあ?こっちが教えてほしいかな・・・」
孝太は頭をかいたあともう一度シンを見た。
「邪魔して悪かったな、終わったら早く下りて来いよ」
そう言って出口へ歩いていってしまった。
「え、待ってくれ孝太何とかしてくれ」
シンは動けない体制のまま孝太に助けを求めた。が。
「知らん・・・・唯、下りるぞ」
「え?二人は?居たんでしょ?」
唯の背中を押しながら孝太は階段を下りた。
「なんか取り込み中らしいからほっとこう」
「そうなの?」
唯を納得させ部室へと戻って行った。後にはまたシンと葵の二人だけが残された。
「どうすればいいんだよ・・・」
がっくりと頭だけを下げた、顔を上げもう一度葵を見た。
「・・・・・・」
葵の寝顔を始めて見るシン、それもこんな間近に。シンは肩の重みなど忘れしばし葵の寝顔に見入っていた。楽しい夢でも見ているのか葵の顔が笑顔になった。
「葵・・・・・」
小さな声で呼んでみる。
「ん・・・・」
目に力を入れながら葵の目が開いた、辺りを見回しながらシンの顔を見て止まった。
「あ、シン・・・君?」
意外に距離が近い事に疑問を抱き自分の顔に当たっているシンの肩を見た。
「あ、ごめんシン君!いつの間にか寄り掛かってて、動けなかったでしょ?」
顔を離しシンに謝る、その顔は照れているのかどこか赤くなっていた。
「ああ・・いやそんな事は無かったけど・・・寝顔も見れたし・・・」
「え?・・・」
「あ!いや、結構楽しそうに寝ていたな〜って・・・」
寝顔を見られた事が恥ずかしいのか顔を真っ赤にして下を向いてしまった。シンも葵も会話のないまま十分が過ぎた時孝太達が呼びに来たのをシンは思い出した。
「あ・・・・・そうだ!孝太達が呼んでいたんだっけ葵行こう!」
「あ、うん」
二人は急いで下へ下りていった。廊下の角を曲がり掃除用具入れ・・・では無く部室の入り口へ葵から入った。シンも後から中へ入ったが入り口のすぐ前で葵が立ち止まっていた。
「どうしたんだ葵?」
「あれ」
そう言って葵が指を指した方には見慣れた顔、孝太と唯・・・それだけでなくなんと銀の姿もあった。二人は顔を見合わせた、なぜ誰も知らないこの部屋に銀が居るのだろうと。
顔を見合わせている二人に唯が気づいた。
「あ、二人ともやっと来た!」
送れてきたことに不機嫌なのか起こりながら近づいてきた、ただ不機嫌なのはそれだけではないようだ。
「どうして銀がここに」
「そうなの聞いてよ二人とも」
不機嫌そうに唯は二人に説明しようとした時孝太も近づいてきた。
「やっと戻ってきたかお二人さん」
孝太の態度に唯は頭を押さえて言った。
「つまりね、孝太が原因なの」
『孝太が?』
二人同時に喋って孝太を見た。見られた孝太は申し訳なさそうな顔で頭をかいた。
「すまん二人とも、さっき水を飲みに言った時後を付けられていたんだ銀に」
「はあ〜・・・」
唯は片手で顔をふさぎため息を出した。そんな事はお構いなしに銀は話し掛けてきた。
「やあ、おはよう二人とも」
銀は何事も無いように挨拶をしてきた。
「後を付けたんだって銀」
シンは銀の目を見た。銀は首を横に振って否定した。
「僕はそんな事はしないよ」
「じゃあどうしてここに来れたの?」
葵も一緒になって聞いた。銀が言うにはシンと何か勝負でもしようと『図書部』を捜していたら偶然にも水飲み場で孝太を見つけ声を掛けようとしたら意外と孝太の足が速く結局追いかけたらこの部屋の前まで来てしまったと言う事なのだ。
「でもこの学校にこんな部屋が在ったなんて驚きだな」
銀はまわりを見回してた。イスに座っている孝太が銀に話し掛けた。
「銀、まさか他の奴に話したりしないよな?」
銀は孝太に笑顔を向けた。
「さあ?どうでしょう?」
孝太は拳を握った、銀もイスに座り四人を見た。四人とも暗い顔をしていた。銀は頷き言った。
「はは、冗談だよ冗談。誰にも言わないよ」
これを聞いた四人の顔が元に戻った。
「本当か銀!?」
孝太は身を乗り出して聞いた。
「だって用具入れが入り口って事は秘密の部屋なんでしょ?誰かに言ったら意味が無くなっちゃうじゃないか」
銀の解釈を聞いた四人ははあ〜と息を吐いて胸をなでおろした。
「それよりもさ斑鳩君」
「な、何だ?」
今度は何を言うのかとシンは緊張した。
「今からさ、短距離の勝負でもしないかい?暇でしょうがないんだ」
何だそんな事かとシンは軽く承諾した。
「そうと決まればすぐ校庭へ行こう斑鳩」
張り切って出口へ向かう銀をシンは呼び止めた。
「ちょっと待ってくれ青山今日は無理なんだ」
「え?そうなの?」
残念そうな顔で銀は振り返った。
「あ、ああだからそうだな・・・いつがいい?」
「いつでもいいよ、約束はしたんだし。じゃあ時間が出来たら声をかけてよ」
そう言って銀は部屋から出て行った。
「何だったんだ?」
孝太は出口の方を見ていた。
「今日は朝から忙しいな、随分と時間を無駄にしたようだ」
シンは時計を見た、時刻は午前八時三十分予定より一時間半も損をしてしまった。無駄にした時間を取り戻すために孝太が指揮をとった。
「よし、じゃあ今日の予定をたてるから皆イスに座れ」
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