作品名:奇妙戦歴〜ブルース・コア〜
作者:光夜
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朝、地球のほとんどの生物が目覚める時間。だが日はまだ低く町に人の姿は無い、朝日に照らされた窓辺にイスに座っている少年が一人・・・シンだった。
「・・・・・・」
目を開けたままじっと動かない、前の夜からこの体制を保つ事六時間精神を集中させていた。
無言のまま立ち上がり制服に着替えた。窓の外を見ると日は少し光を強めていた。
同じ時刻誰もいない商店街を走る影が・・・こちらは孝太だった、手には『斑匡』が握られていた。
空き地に入った孝太は『斑匡』を鞘からだし日に当てた、日が反射し地面を照らした。
「よし、始めるか・・・」
『斑匡』を前に構え素振りを始めた、よく見るとシンから預かった赤い鍔をはめてある。
「はっ!はっ!・・・はあー!」
孝太の素振りは剣道の時とは違い重そうな振り方だった。重そうと言うか実際に重いのだ、それも『斑匡』全体がである。どうやらこの赤い鍔は刀にはめると刀全体の重量が増える特殊な物らしい。
「はあ、はあ、はあ・・・・はっ!」
力をこめて一振り、空気を断つように見事に振り抜いた。と、孝太の胸のポケットからもう一つの鍔が地面に落ちた。
「はあ、はあ・・・・これは使ってないな・・・・」
緑色の鍔を拾い眺めた。おもむろに『斑匡』につけた赤い鍔を外した。と、同時に刀がいきなり軽くなった。
「うを!?・・・むちゃくちゃ軽いなこれ・・・」
驚きながら孝太は『斑匡』に赤い鍔をつけた。
「・・・・・・・・・・・・あれ?」
そのまま時間が過ぎて行った・・・・
六時過ぎ唯は目を覚ました。
「ん・・・・ふあん?・・・・」
寝ぼけた目のまま時計を見た、六時五分約束の時間まで時間があまり無い・・・が。
「あと・・五分」
と言ってパタッとベッドに顔をうずめ二度寝に入った・・・・これでいいのか?
「よきかな、よきかな・・・・くー」
などと寝言を立て幸せそうな顔で寝息を立てた。
所変わって葵の家、制服に着替えた葵は作ったお弁当をカバンに詰め家を出た。
「いってきまーす」
葵は静かな商店街を歩いた、この時間たぶん豆腐屋以外の店は開いていないだろう。それよりも朝の気持ちよく涼しい風を感じ葵はご機嫌気分でいた。が、この静寂を壊す声が後ろから響いてきた。
「きゃー!遅れるー!」
「え?唯?」
そう後ろから駆けて来たのは二度寝をして時間ギリギリに家を出た唯だった。唯も葵に気づき駆け足で止まった。
「あ、葵、よかった〜これなら遅れないかも」
そう言って駆け足を止めた。葵はどうしたのか聞いた。
「えっとね・・・えへへ、ちょっと寝坊・・・かな?」
「それで慌てたの?」
「うん」
遅れを気にするでもなく二人は学校へ歩いた。校舎へ入ると宿直の先生以外誰も居らず二人は『図書部』兼『秘密部屋』へ入った。
「やっぱりこの時間だと誰もいないね葵」
「そうだね・・・・あれ?」
カバンを机に置いた葵が横を見て何かに気づいた、唯は葵の視線の先にあるイスを見た。そこには通学用カバンが置いてあった。
「カバンがあると言う事は・・・」
「孝太か斑鳩君がいるって事かな?」
二人は顔を見合わせ頷いた。
「じゃあ私は孝太を捜すから・・・」
「うん、私はシン君だね」
と言う事で二手に分かれて捜索を開始した。
唯はまず下から捜そうと考え一階へ下りた。が、唯の捜索はここまでだった、なんと校庭の方から孝太が歩いてきたのを目撃したのだった。
孝太は下駄箱で靴を履き替え唯を見た。
「よお唯早いな」
孝太は唯の所まで歩いた。唯は納得して頷いた。
「と言う事は・・・葵が『当たり』かな」
一人で納得する唯に孝太は軽く頭を叩いた。
「何よ孝太〜?」
「こら、何を納得してんだ?何を」
そのまま孝太は階段へ歩いた。唯も追いかけて孝太の横へ付いた。
「実はね孝太・・・」
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