作品名:RED EYES ACADEMYT
作者:炎空&銀月火
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コンコン
「どうぞ。」
中から響く聞き慣れない声。
―校長じゃないな・・・。
首を傾げながら部屋へ入る。
「失礼します。」
何度も見慣れた風景。ここに来るのは3回目だ。その原因は…。
―レシカとレシカとレシカだ!
ただ、その時と違うのは、ソファーに座っているのが校長ではなく、見知らぬ年老いた女性であること、そして凛が一人で校長室に来たことだった。
「そこに座りなさい。」
女性が口を開いた。少ししわがれた声。だが、口調は高圧的だ。そしてその存在は見る者に畏敬の念を抱かせる。
 言葉に従って女性の近くの椅子に腰掛ける。椅子は女性の座っている目の前にあるので必然的に彼女の顔を観察してしまう。
 年齢は60歳ぐらいか。ただ、顔に刻まれた皺が深く、精神的には年齢より年を取っているように見える。眉間に深い皺が在ることから、この女性がかなり苦労してきたことが伺える。凛と同じ東洋系の顔立ちで、体格はやや小柄。
「今日はあなたに話があるので無理を言ってここを訪問したの。」
女性が口を開いた。そして衝撃的な事実を告げる。
「あなたに特例措置を与え、飛び級でこのアカデミーを卒業してもらう。そして、その後、このアカデミー関連の組織に配属することになった。そのことを伝えに来たのよ。」
 凛は驚きつつも納得していた。サクセサークラスの生徒はエリート中のエリート。いつ現場に出されてもおかしくはない。女性は続けた。
「あなたにはそれだけの能力がある。アカデミーの職員として働くのは早いほうが良い」
―うわー、この人上層部だ。オーラ出してるよ…。
 凛の考えを読み取ったのか、女性が笑う。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私は西村京子。アカデミーの幹部会議のメンバーです」
―幹部会議!すげぇ…。
 アカデミーの中で最高位にある機関だ。組織の行き先はここで決められる。
「それで、アカデミー卒業の件に関しては了承して頂けるんでしょうね?」
「えぇ。もちろん。しかし本当に私などが・・・。」
「では、話は終わりです。後で資料がそちらへ届くと思うので目を通しておくように。」
 凛が立ち去るのを、血のように赤い目が追っていた。
 
バタンとドアが閉まるのを見送って、西村は振り返った。
「もう出てきていいですよ。彼女は承諾してくれました。」
その言葉と共に、どこからともなく人間が現れる。その数5人。それぞれがライフル、あるいは拳銃を装備していた。年齢はおよそ18〜20歳ぐらいか。そんなに年のいった集団ではない。しかし、ただの武装集団でないことは彼らの洗練された動きから感じられた。そして彼ら全員の特徴、それは西村と同じ、赤目であるという事。
 彼らの中から一人の女性が進み出て、頭を下げた。
「彼女にはなんと説明したのですか。」
「一応、真実に近いことは言っておいた。予想通り冷静に動いてくれました。さすがフィフス・オリジナルです。もっとも彼女にはまだこのことを知らせていませんがね」
「では、一週間後から潮沢凛、ハデス・リコルダー、レシカ・アンドリューの三名は私の部隊に配属されるということは決定ですね。」
「ええ、言っておきますが彼女達はまだ13歳です。過酷すぎる訓練はしないように。」
 分かりました。失礼します。
 敬礼して彼らは凛とは別の扉から出て行った。
  
「期待していますよ、五人目のオリジナル。」
彼女は微笑むと、手元に置いていた杖を持って椅子から立ち上がり、その場を去った。

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