作品名:ついてない私:番外編 ついてる俺
作者:もはもは
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次の日も、その次の日も俺のところに幸運は舞い降りた。
大きい仕事を任されたり、宝くじが当たったり、不細工な女にだが告白されたりな。あの女にデブ呼ばわりされた日のことが、まるで嘘のようだった
。なにをやっても上手くいった。この地球は俺のために回ってるんだって思ったよ。
そんなときにあの女を見かけたんだ。たしか26日だった。俺がいつもどおり帰りの電車に乗っていると、あの女が乗ってきた。俺はついつい顔がばれないように顔を背けた。
しかし、次の瞬間思ったんだ。なんで俺は顔を背けたんだ?って。だって変じゃないか。俺は軽く尻を触っただけなのに怒られて、顔に泥を塗られた。被害者はむしろ俺なのに何で顔を背けたんだ?そう考えたら、また怒りがこみ上げてきたよ。
みんなも俺だったら分かるだろ?気がついたら俺は女の後を追っていた。また気づかれてギャーギャー言われたら勘弁だからばれないようにな。
途中、女はコンビニに寄って何かを買った。そのあとも追った。何で女を追ったのか分からないが、あの女がどういう女なのか知りたかったんだろうな。途中、女はこっちを振り返ったり、急に走り出したりしたが俺の機敏な動きのおかげでばれなかった。
あいつ普通のアパートに住んでやがった。しかも一階に。女ってあまり一階には住まないだろう?やっぱりあいつは下品な女なんだな。しばらく女の家の辺りをうろちょろしてると携帯が鳴った。
「亮ちゃん、まだ帰らないの?ご飯できてるわよ?」母親からだった。
「夕飯はいいよ。適当に食べる。今同僚の家に向かってるんだ。ちょっと帰り遅くなるけど先寝てていいからね。」俺は適当に嘘をついた。あまり遅くならないようにね、と親が言うと電話を切った。
俺を不幸のどん底に追いやった女は俺の目の前に住んでるんだぜ?まだ帰れるわけがないじゃないか。
それから大分時間が経った。もう外にいるの寒いし疲れたから、帰ろうかなと思ってたときに部屋の灯りが消えた。女が2時半前くらいに眠ると俺はいよいよ女の部屋に近づいたんだ。服が何着か干してあった。今すぐにでもガラスを叩き割って首を絞めてやりたい。そう俺は思ったが、ガラスを割ったら音がうるさいので目立ってしまうと思い止めた。そのかわり女を困らせてやりたいと思った俺は干してある服を何着か盗んでやろうと思った。服を盗んだくらいじゃ俺の怒りは収まらないが、今日はこんなもんで許してやろうという俺の優しささ。服を鞄に入れ、電車が無いので、タクシーで帰った俺はまるで英雄のような凛々しい顔つきだったと思う。
家に着くと、ゲームをするよりも先に女の服を出した。そして匂いを嗅いだんだ。あの女からは想像がつかないほど優しい匂いがした。そしたら俺の息子は深夜なのに起きだしたんだ。
だから俺はあの女の服に息子の光線を発射してやったのさ。
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