作品名:くらげ
作者:青井 翠蓮
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『ねぇ、レイディ。あなた、この間の図鑑って紫苑さんにもらったんじゃなくて、交換したんじゃない? あの螢石(ほたるいし)の飾釦(かざりぼたん)と......』
『えっ? 』
『レイディ、あの飾釦すごく気に入っていて、いつも手首に下げていたのに、この頃つけてないでしょう。それに彼、鉱石収集家(コレクタ)らしいし。あれだけ大きな螢石の産出地は海上街(シティ)よね、海上街(シティ)のあったP地区(ブロック)はもう失われているわ......だから。』
『まいったな。珊瑚(コオラル)には隠しごと出来ないな。』
『......ずっと、隠してるつもりだったの?』
『そんなつもりじゃなかったんだよ。ただ螢石を手放したことは後悔してないんだ、本当にね。だって図鑑は手に入らないけど、小さい螢石ならD地区(ブロック)の悠久の東(オリエンタル・イースト)に行けばまだ手に入れることが可能なんだから。』
『......でも...... 悠久の東(オリエンタル・イースト)は砂漠化が進んでいて、居住撤退命令が中央管理局(セントラル・ユニオン)から出ているわ......』
『......いいんだよ珊瑚(コオラル)、気にすることはないさ。僕はジェリイフィッシュがどんな生き物か見てみたかったし、もちろん君にも見せてあげたかった。だからこれは僕の意思なんだ。珊瑚(コオラル)は何も気にしなくていいんだよ。』
『......じゃあ、これ。』
『ん? ピアス?』
『えぇ。月涙石(ムーン・ストオン)のピアス片方貸すわ。新しい螢石を手に入れるまで、鎖に通して使って。』
『ありがとう、珊瑚(コオラル)。』
どこまでも広がる黄色い砂。森林伐採。雲も存在しない赤茶けた空。ドォムの中でしか生きられないおとなたち。試験管から産まれるこども。荒廃が進む空間の中、母なる電子頭脳はジェリィフィッシュが空を漂う夢を見る。それは終末への前奏曲、、、
『ねぇ、珊瑚(コオラル)。僕この頃よく考えるんだ。どうして昔、海にいたジェリイフィッシュが今は秋の空にいるんだろう−って。どうして、この世界から海が失われてしまったんだろうかって?』
『そうね......海がどうして失われたかは紫苑さんの領域だから私には分からないけど、ジェリイフィッシュのほうは想像することはできるわ。』
『想像? どう思うの?』
『......そうね、きっと海にずっといたから、海に飽きちゃったんだと思うな。それに秋って満月がとってもきれいでしょう、きっと特等席でお月見したかったんじゃないかしら......この考えっておかしい?』
『ううん。珊瑚(コオラル)らしくて僕は好きだよ。』
純粋を装うこと。偽ること。すべてが試験管の中からのプログラム。母なる頭脳は新しい世界のため、すべて初期化(イニシャライズ)する。それだけがこの世界の秩序。
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