作品名:奇妙戦歴〜ブルース・コア〜
作者:光夜
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その光景を見るレンズが光る。覚えているだろうか、葵と唯の後を追ってきた大野 寛子とカメラマンの島田の事を、瓦礫に隠れて四人を撮影しているのだ当然シンはこの事に気づいているが様子を窺っているのだ。
「なんだったの今の?・・・カメラ回した!」
寛子はカメラを見た。
「あ、はいちゃんと録画しましたよ、それにしてもすごい映像が取れましたよ大野さんオカルトだかなんだか解らないけど・・・」
「そうね明日のトップ記事間違い無しよこれは、早速局に戻りましょう警察が来るわ」
「はい」
四人に見つからないように瓦礫に隠れながらその場を立ち去ろうとした時寛子がいた瓦礫が崩れた。
ガラガラと崩れ大きな音が出た、当然四人はそこを見た。
「何だ?まだ何かいるのか」
孝太は警戒したがシンがそれを否定した。
「違うよ、でも『コア』より厄介かもなこれは」
「あ!あの人さっきの!」
「大野さんのお母さん!」
瓦礫のそばには寛子と島田が四つん這いでこちらを見た。
「見つかった、どうします大野さん?」
シンはその状況を確かめた。
「ビデオカメラか・・・・マスメディアだなあんた等」
「正〜解、じゃという事で」
立ち去ろうとする二人を孝太が止めた。
「待て!」
呼び止められて止まった。
「あ、あははは」
四人に睨まれて寛子は笑うしかなかった。それを見た唯が心配顔で聞いた。
「撮ったの?今の・・・」
「い、一応」
孝太が続く。
「で、それをどうする気だ。・・・まさか」
立ち上がり開き直ったように寛子が胸を張って答えた。
「当然流すわ、新聞にも載せる・・・って言ったら」
体を乗り出し孝太は睨みつけた。
「邪魔をするなら・・・斬る!」
ひるみながらも寛子は態度を変えない。
「じゃ、じゃあどうすればいい?」
「テープをよこせ」
寛子が何か言おうとした時島田が孝太に怒鳴った。
「冗談じゃない、こっちは生活がかかってんだ渡すわけないだろ」
慌てて寛子が島田を制した。
「あんたは黙ってて、ややこしくなるでしょう」
「はい」
島田はしょげながら黙った。一部始終を見ていた葵が訊ねた。
「あの、どうしても駄目でしょうかそのテープ・・・」
「そう言われてもねーこっちも商売だしね」
葵は頭を下げた。
「葵!」
唯と孝太は同時に叫んだ、そんなことする必要は無いという意味をこめて。
「お願いします、それを皆に見られたらシン君や孝太や唯が何て言われるかと言うか、えっとその・・・親にも迷惑がかかるし、それに春香さんだって悲しむよ、自分の友達をお母さんが売ったなんて知ったら・・・」
「あ・・・そ、それはそうかも知れないけど・・」
自分の娘を引き合いに出され寛子の心が揺らいだ。その様子を唯と孝太は小声で言った。
(葵の奴駆け引き上手いな、このまま行けばテープもらえるかもしれないぞ)
(そうだね、もう少しだね)
葵は説得を続けた。
「だから・・だからお願いです今回だけは」
葵は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
が、もう少しで取引成立というところでシンが口を挟んだ。
「葵、もう止めろ」
「シン君?・・・」
皆がシンに注目した。
「大野さんだっけ?早くここから出て行け警察が来るぞ」
「え?テ、テープは」
寛子を尻目にシンは立ち上がった。
「公にしたければすればいい、俺たちはそんなのに構っている暇は無いんだ。被害が拡大する前に体を休めないとな、行くぞ三人とも」
孝太は問い掛けた。
「本当にいいのか、俺は構わないが二人はどうする」
振り返り答えた。
「無関係と言えばいい、もともと俺の責任だ。どの道一週間以内に何とかするさ」
「あっそ、じゃあいいや俺も行くわ」
「シン君が言うなら私もついて行くよ、乗りかかった船だし」
シンは笑った。
「ありがとう葵」
孝太は唯に聞いた。
「唯はどうする?下りてもいいぜ」
「何言ってるのよ!付きあうに決まってんでしょ、まったく」
そう言って皆に続いた。
残された寛子と島田はたたずんでいた。
「どうします?大野さん」
「どうもこうも生活のため情報を売るわ」
「だ、誰にですか?」
「ライバル局にでもかな」
「仕方ないですね、はいテープ。言い訳は考えときますよ」
「ありがと」
四人は『四子神公園』に戻っていた。
「さてと、とりあえず病院かな?」
「あ!医療道具なら私が持ってるよ」
葵はリュックから救急箱を取り出した、だがリュックより大きいのはこの際置いておこう。
「で、でかいなこれ」
「いいからいいから」
孝太の疑問もそっちのけで葵は包帯やらバンソウコウやらを取り出した。
「じゃあお水汲んでくるから、孝太行くよ」
「お、俺もか?怪我人だぞ俺は」
「いいから早く来なさい」
「いててて!ひ、引っ張るなよ」
強引に引っ張られて二人は水を汲みに行った。
「さてと俺も手当てをっと言っても疲れてるだけなんだよな」
「そうだね、お疲れ様」
「ああ」
葵は別に何を聞くまでも無くシンの隣で座っているだけだ。
「本当によかったの?テープ」
「いいんだよ、(葵の泣き顔は見たくなかったからな)」
「ん?何か言った?」
「あ、いや何も」
慌てるシンを葵は不思議そうに見た。
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