作品名:奇妙戦歴〜ブルース・コア〜
作者:光夜
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 その頃葵と唯は二人を見失っていた。
 「二人とも足速すぎて追いつけないよ、何処行ったんだろ?」
 「この角で悲鳴が起こった後飛び出す影は見えたんだけど・・」
 そこは植木鉢をシンと孝太が倒した所だった、ここで葵はシンを見失ったのだ。
 二人は所々を捜していたがやはり見つからない様子だ。
 「ここにはもう居ないみたいだね、向こう行ってみようか?」
 葵はまさにシンと孝太が走って行った方向を指差した。
 「そうだね」
 唯も同意しその路地へ駆け出した。そこには車やら自転車やらの残骸が散らばっていた。
 「ドンピシャかな?・・・あれ?何あれ」
 「カメラ・・・もしかしてマスコミ!」
 二人の目の前にはカメラやテレビ局の車やらで埋め尽くされていた、野次馬や被害に会った人達もいる。
 「こちらはTTVテレビです。見てくださいこの惨劇を、突如としてここ『田町』を襲った化け物は町を破壊して人々に被害を出しています。事件の発端はあちらに見えます『四子神公園』の中にある大岩が壊されてから化け物が出てきました、一体どんな関係があるのかは今現在警察が総力を持って調べています。ではここで被害に会った人達の話を聞いてみようと思います。」
 そう言ってリポーターはマイクを五十代半ばの男性に向けた。
 「この状況どう思われますか?」
 男性は少し怒っているようだ。
 「どうもこうも無いよ、いきなり空から降って来て私の車を壊したんだまだローンが残っていたのに・・・でもそういえば学生二人が走っていったような気が・・・」
 「どんな学生でしたか?特徴は?」
 「え?そうだな二人とも『第三高校』の制服で刀みたいな長いものを持ってあっちの方へ走って・・・」
 「他には?」
 これを聞いた葵とハッとした。
 「やっぱりこの先に二人がいるんだ」
 「でもこのままマスコミが進むと二人も見つけられちゃうんじゃ・・・不味いよねそれって」
 二人は顔を見合わせ頷いた。そのとき避難誘導させる警官隊が走ってきた。
 「ここは立ち入り禁止にします、すぐに立ち退きなさい」
 警察が相手では野次馬もその場にいるわけにもいかずすぐに団体で非難した。
 「よかったこれで誰もいなくなるね」
 葵と反対に唯は怪訝な表情を浮かべた。
 「それは違うみたいだよ葵・・・」
 「え?」
 見ると警官相手にマスコミがもめていた。
 「早く立ち退きなさい、ここは危険だぞ!」
 警官の注意にマスコミのリポーターは威勢良く反発した。
 「何よ!少しくらいいじゃない報道の自由を守るのが警察でしょう、真実を見つけて皆に知らせるのが私大野 寛子(おおの ひろこ)の役目よ!」
 「ああ解った解った、だから早く立ち退きなさい」
 寛子の威勢も警察は取り合ってはくれなかった。その様子を見ていた唯があることに気づいた。
 「あ!もしかしてあの人」
 「どうしたの唯、あの人がどうしたの?」
 「大野って内のクラスの春香さんのお母さんじゃないかな?」
 葵も思い出した様子だ。
 「あそうか、そういえば大野さんお母さんがリポーターって言ってたね」
 二人が言う春香とは本名大野 春香(おおの はるか)といい同じクラスの女子で学級委員をしている二人の友達だ。親がリポーターをしているという事でよく芸能人のサインをねだられている所を見たことがある。
 「じゃあ余計不味いじゃない!二人の事制服まで知られちゃって公にされたら警察に捕まっちゃうかも!」
 想像が飛躍した葵は慌てた。
 「落ち着いて葵、ともかく早く知らせないと」
 葵は頷き周りにある残骸に隠れながら警官達の監視をくぐりぬけた。しかし寛子はそれを見逃さなかった。
 (あれ?あの二人春香の友達の・・・)
 「ほら早く立ち退きなさい!」
 「もう解ったわよ、行けばいいんでしょ行けば」
 カメラマンを引き連れて寛子はセンター街から出た・・・と思ったらカメラ片手にユーターンした。
 「あ、君待ちなさい!」
 追いかけようとした警官は仲間のカメラマンに押さえられた。
 「よし、島田お前も行けカメラマンだろ」
 「はい」
 男は走り出して寛子に続いた。

 二人は苦戦していた、最初四体しかいないと思っていたが別な所にも隠れていた『コア』が一斉攻撃を加えたのだ。
 「くそ、これじゃあキリが無いぜ斑鳩」
 「まあな」
 シンは冷静に周りを判断していた、何かがおかしい事に。
 (おかしい、こんなに沢山の『コア』は存在しないはず、何処かに原因があるはずだこいつらを・・・『ダミーコア』を動かしている親が)
 既に十三体目をシンは倒していた、及ばずながらも孝太も十体は倒しただろうその時孝太も異変に気づいた。
 「斑鳩、こいつらさっきの植木鉢より手ごたえが無いぞ・・・っつーか『コア』ごと砂になってんじゃねーか!」
 「そうだな、おかしいなこれは・・・・仕方ない試し切りだ」
 巨人は更に増殖して二人に向かってきた。
 「俺は疲れた、後は任せるよ斑鳩」
 「たく、もっと頑張れよ孝太・・・といってもこれで終わらす!」
 いつもとは違い刀を自分の横に構えた。
 「グオオオン!」
 一気に巨人達は飛びかかってきた、当然休んでいる孝太にも。だが孝太は動こうとしなかった、シンが何をやるのか解っているからだ。動けばそれだけ迷惑を掛けることになることは目に見えていた、即席でできたとは思えないほどのチームワークだ。
 「今作ったばかりだが何とかなるか。散り花開花『青』」
 シンが叫ぶと刀の刃が青く光りだした。
 「はっ!」
 力を入れると同時にシンは巨人の大群の後ろにいた。
 ドシャアアと巨人達の体は砂と化した。孝太に向かってきた巨人も砂となっていた、孝太は歩き出しシンの方へ向かう。見ると刀の色が青からいつもの鉄の色に戻っていた。
 「刀の色変わっちまったぞ、どうしたんだ」
 シンは疲れた表情で説明した。
 「はぁ、はぁ・・・それはな・・・はぁ・・・『コア』を吸収して得る能力は一時的なものなんだ」
 説明よりも孝太はシンの体を心配した。
 「わかった、それよりも少し休め。もうでて来そうに無いぜあいつら」
 シンをその場に座らせると後ろから二人を呼ぶ声が聞こえた。
 「シンくーん」
 「孝太―」
 後ろを向くと葵と唯がこちらに走ってくるのが見えた。
 「葵・・・か?何でここに二人が・・・」
 衰弱したシンの目はかすんでいたそのため四人を狙う気配に気づかなかった。
 「仕方のないやつらだな斑鳩・・・ん?」
 唯一気配に気づいたのは孝太だった。
 「おーい二人ともー」
 近づいてくる唯達に孝太は叫んだ。
 「来るな二人とも!戻れ!」
 「え?」
 二人は立ち止まった。その時瓦礫が人為的に空へと舞い上がった、落下場所は・・・唯と葵の場所。
 「危ない、唯!」
 「キャアアアアア!」
 とっさに葵は唯を突き飛ばし避けた、と同時に瓦礫が落ちてきて砂煙を上げた。
 「葵!・・・」
 「唯!二人とも大丈夫か!」
 徐々に煙が晴れてきた、葵が片手を挙げて無事を主張した。
 「よかった・・・」
 シンは安心してはいるが瓦礫が飛ばされたところを見ていた。
 「孝太・・・あそこだ!」
 「何?・・・あ!」
 見ると先ほどの巨人達を操っていた犯人らしき『コア』がいた。しかしその姿はどうだ、まるで神話に出てくる『ケンタウルス』そのものだ。
 「何だあいつ?足が・・・馬?」
 孝太は立ち上がり構えた。シンは座ったまま休んでいた。
 「まるで『ケンタウルス』だな、どこにそんな知識があるんだこいつら」
 「斑鳩、お前はそこで休んでろ。こいつは俺が相手になる」
 シンは孝太に言った。
 「解った、だが『コア』を確保しようと思うな、一撃で狙え」
 「了解」
 三歩前に出て孝太は剣道のように『斑匡』を構えた。
 「おりゃ!」
 走って前に出た、しかし『ケンタウルス』の長く強靱な足に阻まれ上手く懐へ行けなかった。同じリズムで前足を孝太に向けて攻撃してきた、これに孝太は『斑匡』で防ぐのが精一杯だった。
 「クソ、何だ・・・こいつ」
 その時前足の片方が孝太を襲った。

 ドカ!

 「ぐわあ!」
 「孝太!」
 後ろで見ていた唯が叫んだ。孝太は起き上った時お腹に激痛が走った。
 「うぐ!・・・くそ、肋骨にひびでもはいったか」
 力なく起き上がり『ケンタウルス』を見据えた。
 「グオオオオン」
 「くそバカにしやがって!これくらいでやられるかよ」
 孝太は心の中で自分を悔やんだ。
 (本当に勝てるのか・・・こいつに・・・俺は斑鳩の役に立つのか?)
 その時何かが頭をよぎった。男の姿だ。
 (親父・・・そういえば昔言われたっけ「集中しろ」って口うるさかったな親父は・・・)
 孝太は何故か笑っていた、自分でもなぜ笑っているのか教えてほしいくらいに。
 (ははは・・・集中か・・・剣道の時もそうだっけ・・・・ん?)
 孝太はもう一度相手を見た。
 (そうか、別に拳銃を持っているわけじゃないんだ。刀を『斑匡』を持っているだけで他は剣道と何ら変わりないんだ、何でこんな簡単な事わからなかったんだ)
 『ケンタウルス』は動かなくなった孝太を見て様子をうかがっていた、どう出たらいいか考えているようでもあった。
 「集中か・・・・よし」
 孝太は周りを視界から消し『ケンタウルス』以外の物を排除した。
 (集中・・・集中・・・)
 「グウウウ!」
 孝太の殺気に気づき蹄を鳴らした。
 一歩また一歩と孝太は『ケンタウルス』に近づいた。
 「グアオオオオン!」
 痺れを切らした『ケンタウルス』は孝太へ突進した。
 「集中・・・集中」
 目の前まで近づき上から足が振り落された。
 「面!」
 孝太は『斑匡』を振り落し前へ大きく一歩進んだ。

 ズバン!

 切り裂く音がしたと同時に『ケンタウルス』は砂と化した。
 「はああ、はああ、はああ、」
 孝太は気づくと大きく肩で息をしていた。一瞬の出来事に三人は唖然としていた。
 「はああ・・・あいつは?」
 後ろを孝太が見ると砂の塊があった。
 「倒した・・・のか・・・俺が?はは」
 そう言うとその場に倒れた。
 「孝太!」
 唯が孝太を起こした。
 「ちょっと孝太大丈夫!?」
 孝太は目を開けた。
 「おお、唯か・・・はは・・何とかな。けど打撲してるかもな」
 そう言うと苦痛の表情を見せた。
 「なら早く病院行かなきゃ!」
 「そうだな・・・けどもう少しこのままでいさせろ疲れてんだから」
 「うん・・・」
 しばしの休息、シンはというと。
 「おーい生きてるー?」
 シンの顔を葵が突いていた、シンは横になり空を見ていた。
 「孝太は成長したなーこの二日でよくやってるよ」
 「はは、そうだね・・・立てる?」
 シンは体を起こし葵に言った。
 「無理だな・・・筋肉が痙攣してる、まあ少し休めば大丈夫だろう」
 「そっか、じゃあここで待ってるね」
 「ああ」
 四人は一時その場で休息を取った。
 (しかし、余計な奴等がいるな)


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