作品名:Three Stars and the Earth〜他星への進出〜 中巻
作者:キラ
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22話 SPS

あらすじ…サフィア達は3Dとの戦いで敗北と言う結果になった。しかし、みんなが無事と言うのはリンとブラットが彼らを救ってくれたからでこそなのである。そしてサフィアは敗北し、気を失っている間にSPSに行け…と言う夢を見、]・スペースファイターの運転をしていたリンに事情を話すと快くOKを出してくれた。
この話は宇宙戦闘機がそれから5日後にSPSに着いた時から始まる。

T

1460年 6月22日 SPS中央宇宙航空滑走路
サフィア達はSPSに着き、まず最初にやった事はSPEの制服である黒いローブを着る事だった。
このローブ、今は涼しい夜だからまだいいもののこれは冬用なので昼に使用するのはかなり無謀な事だといえよう。
彼らは宇宙戦闘機から出てSPSの地を踏んだ。今のところサフィアの見た星の中で一番発達し、一番大きい都市であった。と言うものの‘SPS’と言う都市はこの星そのものなのだ。
つまりSPS他の国がなく星丸々一つが一つだけの国の惑星なのだ。S☆Pに入っている署の全てをここに集結させているのだから仕方がないと言えばそうなのだが…。
とにかくアッと驚くほど科学が進歩していて空にはエア・カーが飛びかい、陸にはホバー・バイクがスイスイ浮きながら動いている。建物と建物の間にはエア・パイプが通ってあり、人がその中を物凄い速さで移動している。
「これが…SPSか」
サフィアがぼうっと辺りを見渡している。
「さて、まずは地球省を探して所長に許可証をもらわないと。そうしなきゃ移動がしにくいからね」
ソフィヤが言った。
「お、ソフィヤはん詳しいんやな」
ネオンが言った。
「ええ、前に一度お父さんと行った事があるの。お父さんいなくなる前に今の隊長にSPSの歩き方を教えなかったのね。まあしょうがないけど」
ソフィヤが言った。
「早く行こうじゃん。ここに突っ立ってちゃあの死神さんに迷惑じゃん」
と、ロッジャーはリンとブラットを指差した。
かなりの疲労が溜まっている彼女らの姿はついさっきまで運転してたのかどうかさえ分からないほど老けて見えていた。例え死んでいる死神でも十日間も休まないと身体がもちませんよ。
「そうだなァ、早く行くだべさ。ちょっと都会が嫌いなオラが言ってんだぞォ」
スーが恐々言った。
「ああ、そうだな。じゃあ…ソフィヤ、先頭よろしく」
「え?私もそんなに覚えてないのよ。さっき言ったのはもう数年前の事ですもの」
ソフィヤがすまなそうに言った。
「そんな…じゃあ色々調べて探しながら行くか」
サフィアが眉間に皺を寄せながら言った。
「ああ…私…場所…知ってる…」
「だ、誰誰誰だぁァァァ!!!幽霊かァァァァ!!!」
スーが行きなり叫んだのでSPEのみんなが1mほど後退した。周りにいた人々は怪しそうにスーを見た。
スーは赤面しながらもその声の元をたどった。するとそれはリンであった(と言うとスーの予想はやや正解だった)。肩にはグッタリとしたブラットを乗せていた。
「私…ずっと前…DDDにいた頃ここにスパイに行った事があって…地球省なら何度か見た事があるから分かる…わ」
リンが萎びた声で言った。
「大丈夫ですか?リン?無理しなくてもいいんだよ」
シャスナが心配そうに言った。
「大丈夫…私は…一秒でも速くSPEに入隊したいの…だから…みんなついて来て」
リンがゆっくりと歩き出した。
みんなも心配そうに後について行った。

U

地球省は意外にもすぐに辿り着いてしまった。
地球省は他の建物に比べると小さいがどの建物よりもきれいだった。これはソフィヤ曰くS☆Pの中でもかなり最近にSPEができたからだと言う。
地球省の入口である扉には扉番(ヒツガイ)が端と端に1人ずつ立っていて手にはレーザーガンを持っている。
「私達はSPEの者だ。立入を許可してほしい」
サフィアが言った。
「…証拠品を」
扉番の1人が言った。
彼らはSPEの制服であるローブとその腕に付いている『SPE』と印が付いた腕章を見せた。
「…そこの人は?」
と扉番はリンを指した。
「ああ、あいつは入隊を許可したいと望む者だ」
サフィアが言った。
「フム…なるほど。了解。立入を許可する。」
扉番が何やら通信を行うと地球省の門が開いた。
そして彼らはサフィア達に向かって敬礼をした。
サフィア達も扉番に向かって敬礼をした。
省にはいるとすぐにロビーがあり、とても豪華だがシンプルな作りになっていた。前方に受付、左方にソファー、右方に廊下とエア・パイプがあり、床は全て赤い絨毯、壁は絵画ガ何枚も飾ってあり、天井にはシャンデリアに似た電気器具が光っていた。
「ようこそ、SPEの皆様。御用件は何ですか?」
受付にいた受付譲が言った。
「この人をSPEに入隊させてから総務長と話がしたいんです」
サフィアが言った。
「入隊させたいという方はこちらですか?(とリンを指差す)」
「はい、そうです」
「ではまずここの省長に会ってこの方を入隊許可とS☆Pセンタービル立入許可をとる…と言う事ですか」
「はい、そうです」
「分かりました。省長と連絡して許可をとりますからここに名前を書いて個紋を押して下さい」
個紋とは、簡単に言えば家紋が全ての家ではなく10歳以上人に与えられる物で自分がデザインした物が個紋として使う事も出来る。今で例えれば個人個人で使われる印鑑のような物である。

「…省長の許可がとれました。省長室は最上階の46階にあります。それではお気をつけて」
受付譲がお辞儀をした。サフィア達は敬礼をした。
「ふー…なんか久々に人と長時間話した気がするな」
一行が廊下を歩いている時、サフィアが力が抜けた感じで言った。
「え、あれで長時間なの?」
「え?ああ、そうだよ。俺しゃべるのあまり好きじゃないからなぁ…」
その時、彼らは廊下が行き止まりになっている事に気が付いた。
そして壁には貼り紙が貼ってあった。
"この壁に行きたい階の数字を思い浮かべながら触れて下さい。*はっきりとそれだけを思い浮かべて下さい。変な場所に行く可能性があります
「…こんな移動手段は初めてだなぁ」
スーがぽかんと言った。
「とにかく…今行くところは46階だから…46を思い浮かべればいいのね」
ソフィヤが言った。本当に言っただけだった。
「…あれ?ソフィヤはん。早く行きなはれ」
ネオンが言った。これもただ言っただけだった。
「全く…しょうがないなあ。おいらが行くよ」
ロッジャーがため息をつきながら壁に手をつけた。するといつの間にかロッジャーの姿が消えていた。
「…そう言う事なのか。意外にあっけないけど…ロッジャーは一体どこに?」
「なんか壁に溶けていったような気がする」
「よおし…じゃあ今度はワイが」
ネオンが壁に手を一気に押し出すと…跡形もなく消えていた。
「行っちゃった…」
「じゃあ後は一斉に行くか」
サフィアが言った。彼らが手を伸ばした時、スーが言った。
「あの…やっぱ怖い…」
「じゃあロビーで受付でもしてな」
サフィアが叫んだ。そして、みんな壁に手をつけ、それに吸い込まれていった。スーは廊下の行き止まりにたった一人だけになった。すると急に心細くなった。
「ま…まってよぉ〜46ッ!46〜ッ!」
彼はそう言いながら壁に触れた…いや、触れようとしたがそこには壁がなく、スーは転んでしまった。起き上がってみるとそこには大きな扉がとサフィア達がいた。
「待ってたぜ。スー。じゃあ行こう…この扉の奥に地球省省長がいるんだ」
サフィアは 前方にある怪しいほど巨大な扉を見た。
そして、扉を力一杯押す。
ギギギ…と油の刺さっていない機械の様な音がし、扉が開いた。

V

一番最初に目に…いや、鼻に入ったのはコーヒーの香りだった。
「え?ま…まさか」
サフィアは妙にあの人の姿が思い浮かんだ。
そう――あの、コーヒー好きでおかしなゴーグルをつけている‘あの人’である。
「ク…来ると分かっていたぜ。サヒア、ソヒヤ、ロッザー、ナオン、スゥ、そしてリン」
彼はサフィアの前方にある大きなデスクに置いてあるマグカップを手にとり、それに入ったコーヒー(ブラック)をすすりながら言った。
「エ…エーレ…。なんでこんな所にいるんだ!」
サフィアが驚きと何かが混ざった感情を込めて言った。
「ク…言葉を慎みたまえ。サヒア」エーレはマグカップをまるでワインの入ったグラスを廻すように動かしながら言った「あんたらは地球省の省長の前にいるんだ…。省長ってのは隊長なんかよりも偉いんだよ」
「あ…スイマセン。エ…省長」
サフィアが謝った。
「えっと…」ソフィヤがサフィアの耳元で囁く「あれが例のエーレね。それにしても運命師なのになんでここの…省長?なの?」
「それは宇宙船で言っただろう?彼は運命師じゃない。束縛者である俺の未来を知っている特別な人なんだよ。きっと」
サフィアも彼女の耳に囁き返した。
「どっちにしろ第三者が聞いたら同じ様に見えるわね」
この時スーが凄いクシャミをしたので彼らはみんながいる事を思い出した。
「えっと…今日ここに来た理由は2つあります1つ目は――
「DDDがやって来てアンタらが負け、それを警告するとかなんかで2つ目はそこの死神ちゃん(と言って彼はリンの方を見た)…をSPEに入れたい…だろ?」
エーレがニヤリと言った。
「な…なんやって?」ネオンが目を丸くして言った「サフィアはんはまだここに来た理由を言って無いはずやろ?なのに…」
「ク…教えてやろうか?いや…もう言ったはずだ。‘来ると分かっていたぜ’ってな。つまりあんたらの事はほとんど全て分かるんだよ…。それよりあんたら、敗北の味を知っているか?そして、どんな意味があるか知っているか?」
エーレがいきなり話題を変えたのでサフィア達は何を言えばいいのか、何を突っ込めばいいのかが分からなかった。
「え…意味が分からないじゃん」ロッジャーが今の気持ちをまとめて言った。
「ク…そうか。敗北の味ってのはなあ、コーヒーの味だ。地獄のように暑くてにげぇが…その後味にはほのかな香りやうっすらと甘みがあるんだよ…」
そう言って彼はまたコーヒーをすする。
「あの…やっぱり意味が分からないじゃんよ」ロッジャーが引き続き今の気持ちをまとめて言った。
「やれやれ、そこまで説明するのか…。つまり敗北と言うのは悔しいさ。つらいさ。だが、それによって何か分かった事がないのだろうか?あったはずだろう?そう言う事だ」
エーレは一気に言うと一気にカップの70%はあったコーヒーを一気に飲み干した。
「あ、確かに…ドロイドはたくさんいて強いけど特定の人物を戦闘不能にすればドロイドの機能も停止するって事が分かったよね」シャスナがハッとして言った「それに3Dの戦い…明らかにチームワークがなさそう。なんと言うか…バトルのタイプが似てる感じがする」
「おお!さすが我らのシャ――」
ロッジャーが言おうとする前にスーが拳銃のグリップで殴り、彼はバタッと倒れた(この時みんなはあれ…8話三参照…の仕返しだと思った)。
「ク…分かってるじゃねえか」エーレのマグカップにはいつの間にかコーヒーが入っていた「さてと、本題に行くぜ。まず一つ目のDDDの警告。これはS☆Pセンタービル最上階の総務署に直接訴えた方がいい。二つ目の死神ちゃんをSPEに入隊させたい。誰かを入隊させるには隊長、又はこの俺が許可をしなければならない。が、この場合は別だ」
彼は漆黒の渦が巻くコーヒーをすする。
「な…なんで…ですか?」
弱りきっているリンが精一杯の声を出して言った。
「それはだな…死神ちゃんは死神ちゃんだからだ。条約上死神は危険エイリアンに指定されていて総務長の許可を得なければ入隊は許されないのさ」
「そ、そんな…」
リンはクラクラしていた身体が余計に揺れ、危うく倒れそうになった。
彼女が倒れなかったのはスーが彼女の身体を支えたからであった。
「ク…気を失うのはまだ早いぜ。死神ちゃんよお」
エーレはコーヒーの香りを嗅ぎながら言った。
「じゃあS☆Pセンタービル立入許可証を発行してくれるんですか!」
サフィアが嬉しそうに言った。
「ク…誰が発行するなんて言った?オレは許可証を持っていない」
エーレがマグカップを置いて真っ直ぐ彼らを向いて言った。
「え…えぇぇぇェェェェ!?」サフィアらが同時に言った。
「なんと言うか…私もリンと一緒に……」
ソフィアがふらふらしながら言った。
「ク…人間はいつでも悪い方悪い方へと考える」エーレがもう1個のマグカップにコーヒーを注ぎながら言った「オレは許可証を持っていない…としか言ってない。オレが許可証だ!」
彼はそのマグカップを前に突き出した。
「!!!…え、あの…意味、ワカリマセン」
ロッジャーが冷や汗を掻きながら言った。
「やれやれ、そこまで説明するのか…」
エーレは微笑しながらコーヒーの香りを楽しんでいるようだ。
「!!!…あの、それもさっき言ったじゃん」
ロッジャーが苦笑いをしながら言った。
「クゥ…つまり、俺も行ってやるさ。S☆Pセンタービルにな!」
エーレが叫んだ瞬間、彼はマグカップを前に突き出し…それは宙を飛んだ。
ひゅうぅぅゥゥ…すこん
「う…」
サフィアが呻き声をあげた。
そして、額から黒い血が流れ出た。
「キャ…キャアアアアアアァァァァ!!!」
次にソフィヤの悲鳴が聞こえた。
「ク…焦るんじゃねえ。よく見ろ、額にマグカップがくっ付いてるだろ?…コーヒーだ。ソヒヤ」
と、エーレはサフィアの額を指差した。
この光景はまさに奇跡だろう。マグカップはまるでのりで貼り付けられた紙コップの様に額にくっ付いているのだ。そして、チョロチョロとコーヒーが滴り落ちている。
「…クッ、サヒア、おごりだ。‘エレンブレンド42.195’だ」
「な、なんやそりゃ」ネオンが笑いながら言った「小数点のコーヒーなんか初めて聞いたわ」
「…あの」サフィアが倒れかけながら言った「こんな美味いコーヒー…初めて飲みました。苦味と酸味と香りと甘味が絶妙ですよ!」
「ク…元気出せって事さ。さあ行こうぜ、S☆Pセンタービルに!」
エーレは何のへんてつもない壁を指差した。
「何もないと思ってるのはオラだけかァ?」
「これは…」エーレはスーを無視して言った「S☆Pセンタービル直通のエア・パイプが通ってある。壁を触れればあっという間に受付だぜ」
エーレはお手本と言うかの様に壁の前に立ち、それに触れると地球省一階からここへ来た時のように姿が無くなっていた。
「よし、今回は一斉に行こうか」サフィアがみんなに言った「一斉の…せ!」
彼が言うとみんなは壁の中に消えて行った。
「…って行ったら触ろ…あれ?みんなは?ス、スーまでいないのかよ!…アホらし…おーい、みんな〜!」
サフィアは長々と独り言を言って壁に触れた。
吸い込まれて行く様にサフィアは壁の中に消えていた。


W

S☆Pセンタービルロビーはどう説明したらいいのか分からない…あえて例えるのなら侍が何らかの方法で22世紀に行ってしまったと言えばいいのだろうか、それほどテクノロジーの発達し、広く、人が密集しているロビーであった。
「こんなに凄いロビーなら、総務長のいる部屋はどんな感じなのだろうか」サフィアは思った。
先に着いたみんなはすぐ近くにある受付に立っていた。
「…分かりました。SPEの代表者ですね」受付が言った。
「ク…そう言う事になる…な。おっと、遅れて隊長が来たぜ」エーレがニヤッとし、サフィアは顔が赤くなった。
「それでは行く前に危険物をこちらで預かっておきます。武器、防具等を渡して下さい」
サフィア達はそれぞれ個性溢れる武具を受付に渡した。が…
「えっと…そちらの省長さん、そのマグカップと…ゴーグルは武器なのでは?」受付は難しそうな機械をいじって言った。
「ク…ばれちゃあしょうがない。だが、代わりのマグカップとゴーグルを…特にゴーグルは渡して欲しい」
エーレは珍しく困っている様だ。
「え、と言うと…?」受付は?を顔に浮かべた。
するとエーレは受付とヒソヒソ話をし始めた。
「…省長にも秘密があったんやねえ」ネオンがぼ〜っと言った。
「と言うか何もかもが秘密と言った方が正しいかもな」
その時、エーレは隅に隠れてゴーグルを外した。手には彼の付けているゴーグルに似ている物を持っていた。
サフィア達は何も言わずに彼の後姿をじっと見つめている。みんな知りたい事は同じだろう。
…と思っているうちにゴーグルの取替えが済んだ用だ。彼のゴーグルのトレードマークである赤く光る横の5本線は青く輝く3本線になっていた。
「ク…よせやい。照れちまうぜ」エーレが顔を赤らめながら言った「じゃ…行くとするか。今回はこのカードを使って総務長のいるところまで行く。いいか、このボタンを押すんだ」
彼はポケットからカードを8枚出し、みんなに配って説明した。
「よし、じゃあ…」サフィアが全員に言った「1...2...3!!!」
彼が言うとみんなはカードのボタンを押すとまるでテレポーテーションの様に消えた。
「…って行ったらボタンを押そ…あれ?みんなは?ス、スーまでいないのかよ!…アホらし…おーい、みんな〜!」
再びサフィアは長々と独り言を言ってカードのボタンを押した。
空を飛ぶ様にサフィアは消えていった。

X

サフィアが気付いた時にはあのロビーとは全く違う、前に扉がある小さな廊下であった。
「ク…サヒア、あんたはオチキャラだったか?」
エーレがマグカップを持ちながら言った(どうやらMyマグカップではない様だ)。
「え…よ、よせよ。照れちゃう…ゼ!」
サフィアがエーレの真似をした。
「ク…まだまだだな。サヒア。…さあ、扉を開けるぞ」
エーレはカードを持ちながら扉の端を親指でなぞり、カードをかざした。すると扉は機械音を発しながら動きはじめ、完全に開いた。
「さすが、S☆Pの司令塔となるビルじゃん。厳重な仕掛けじゃけんね」
ロッジャーが感心した。
「では…関心は済んだのなら行くぞ」
エーレは歩みはじめた。それに続いてサフィア達も歩んだ。
扉の奥には長い長い廊下が続いていた。どうやらここはS☆Pセンタービル総務署…SPSらしい。
「SPS総合部隊司令官…総合課…戦闘課…護衛課…SPS戦闘部隊司令官…総合課…先陣課…防衛課…凄いなあ。部屋がたくさんあるんだなぁ」
スーがキョロキョロキョロキョロしながら言った。
「SPS守護部隊…SPS護衛部隊…これが最後だな。‘SPS総務長の間’だ」
エーレはそう言うとこのドアのドアノブ辺りの所(このドアは無いが)を人差し指でなぞった。するとドアはカチッと言う音がなった。どうやら鍵が開いた様だ。
「ク…ここからが本番だ。話は俺がする。アンタらは口は慎んでくれよ」
「分かりました」サフィア達が言った。
するとエーレは無言でドアを開けた。
そこには見たことが無いデスクに銀河地図が背の壁に貼り付けてある。そして、デスクの椅子に座っている人が言った。
「よぉこそ。我輩こそがS☆P同盟の司令塔SPSの隊長でありS☆Pの創立者‘サブル・パル・シロッタント’である!コマンダー・サブル、又はシロッタント将軍とも呼ばれている」
コマンダー・サブルは背が小さくてややふっくらとした体格。校長先生のイメージが何となく目に浮かぶ。
「お逢いできて…光栄です。コマンダー・サブル」
やはり位が上なのか、敬語でエーレはシロッタントと話している。
「で、今日我輩を呼んだのは何の理由かね?」
シロッタントはとても大きな声で言った。
「…2つ、伝えたい事があります。一つ目はDDD帝國連邦と言う最近物凄い勢いで拡大している凶悪な帝国です」
「…フムフムフム。で、2つ目は?」
「2つ目はそのDDDを裏切ってこちら側に付いたこの…リンをSPEに入隊させたいんです」
エーレはリンを指しながら言った。
「???入隊の許可を得るのはチミがするんではなかったのかね」
コマンダー・サブルは顎をさすりながら言った。
「確かにそうですがこいつの場合は例外で…死神なんです。」
「なんと!…どう見ても死神には見えないが」
「彼女は死神のエケトリック…変わり者なんです」
「フムフム…なるほど。まあ、これらの件に我輩ができる事は無いだろう。以上だ」
するとコマンダー・サブルはキセルを取り出し、それを吸い始めた。
「え?…つまり…」
「我輩がやるほどの事では無い…と言う事だ。DDDが何か?そんなもの初めて聞いた。良いか、我輩は総務長である。そんなものが暴れだしたらすぐに我輩の耳に来るだろうさ。それにS☆Pは宇宙で最大の軍事機関だ。そのDDDとやらのすぐ近くにあるS☆Pがすぐに気付くだろう。よって、DDDはチミ達の思っているよりも遥かに規模が小さい。又はそんな物は存在しない!」
「嘘です!そんな事…私の母星はあいつらに…あいつらに…一瞬にして破滅されられました!U-Pu2によって!」
シャスナが突然叫んだ。
「ク…サスナ。ここは自分の家じゃない。言葉を慎めと言ったはずだろ!」
エーレがぴしゃりと言った。
「省長!あんな事言われて黙ってる方が無理です!」
サフィアが異議を唱えた。
「さ…サヒア!だが…」
「もうよい。エーレ。彼らに何言っても無駄だ」シロッタントは静かに言った「チミ達、DDDがどんなに凶悪であるか…証拠はあるのかね?もちろん証言は証拠では無いぞ」
彼は思った。そんな物…こいつらが持っている訳無いと。
彼の思うとおり、サフィア達は黙ってしまった。
シャスナを除いて…。
「ある。あるわ。こんなに極悪で最低な生物…化学兵器を持っているんだから!」彼女は自分のローブのポケットをあさり、カプセルを取り出した「これはドロマニウムです。さっき言ってたU-Pu2によって破滅させられた星で作られていた‘ほぼ全ての個体を液体化させる’特徴を持っている物質です。そして、作り方はただ一つ。その星の原住民である私達をある方法で虐殺する。それだけです」
彼女はみんなに見えるようにカプセルを前に出しながら言った。(シャスナがなぜこれを持っているかと言うと、16話W参照)
「フム…なるほどなるほど。だが、DDDがもしも今の説明のように凶悪だったら、このDDDを裏切った死神をSPEに入隊させる事は許可出来ない。そうだろう?」
コマンダー・サブルはみんなに気付かれない様に顔をほころばせて言った。
「ク…引っ掛かった…と言う事だな」
エーレが言った。
「そんな…私、私…何も悪い事はやって無い…DDDだからって……――」
リンは今まで立っていられる事のできた一本の短い糸が切れ、床にかがみこんだ。
「…リン」気を失いかかっているブラットが弱々しく言った。
「総務長…。ならば彼女の入隊は諦めます。しかし…彼女はDDDのいわば亡命者です。SPEで保護し、彼女の知っているDDDの情報を我々に教える…つまり情報提供者にさせて頂けないでしょうか?」
エーレが、最後の望みとして言った。
総務長は30秒ほど考え込んで言った。
「ふぅむ…そうだな、この死神ももしここで断られたら行く場がなくなって、殺されてしまうだろうな。よし、チミの意見を受け入れる。死神はSPEで手厚く保護をし、情報を引き出し、我輩に教える。以上を護り、死神が暴れたりしなければSPEに入隊する事を考える」
コマンダー・サブルは相変わらず顎をさすりっている
「あ…ありがとうございます!」
「ただし…DDDの件は我輩には判断しかねない。よって…」
サブルは言いかけたその時、ロッジャーのポケットから音がした。
「な…無礼な!」サブルは怒った。
「ススススイマセン!!!ですがこれは腕時計型超小型立体通信機…パーソナルソルドテレフォンなんです」ロッジャーが言った。
腕時計型超小型立体通信機…パーソナルソルドテレフォンとは、腕時計にテレビ電話を立体化した物を合体したような物で通信のほか相手のデータを読み取り、伝えたり、どんな星に行ってもズレない時計と方位磁石、テレビ
送受信機なんかも搭載している。超ハイテク腕時計である。
「はい。こちらロッジャー。今SPSにいる…え?それ所じゃない?…な、なんだって!みんなが!?わかった!できるだけ早く帰還する」
どうやら地球の浮島…鳥人王国の住民達に何かが起こったらしい。
「どうやら…DDDの地球征服…と言う事なのかな」
エーレが誰にも聞こえないようにつぶやいた。
「ふむう…どうやらこれはDDD問わず緊急部隊を設置しなければならないのだろうな。よし、エーレ氏。チミは緊急地球防衛長だ」
サブルが声を変えて言った。とても真剣な目に変わっている。
「了解しました。将軍」
「我輩はSPSから1500の軍をチミらに援護させる。それから地球に一番近いSPLにこの戦いの援護隊を組ませる様に命じておく」
「…恐れ入ります」エーレがゆっくりうなずいた。
「それでは…星に願いを込めて健闘を祈る!」
サブルが敬礼をした。
エーレらもタイミングよく一斉に敬礼をした。
「では…失礼しました」
エーレ達はこの部屋を出、カードを取り出してボタンを押した。
彼らは消え、ロビーで武器を返してもらい、地球省を経由して一気にSPS中央宇宙航空滑走路まで着いた。
そこは、SPSに着いた時とは全く違う景色になっていた。


アトガキ
みんな〜お久〜♪
あ、ドも、ノベリスッス。
あと1話…追加します_| ̄|○<どうもスンマヘン
と言う事で次巻まではもう少しの辛抱ですm(_ _)m<そーりー
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