作品名:転生関ヶ原
作者:ゲン ヒデ
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 西軍が集結しだした大垣城を攻めることを考えているとき、ふと家康、
(もし、三成が、高市皇子の生まれ変わりだとすると、不破の関・関ヶ原に親しみをもつが……、大垣城を素通りして、大坂を目指す振りをすれば、関ヶ原で待ち受けるかも……)
 家康の読み通り、関ヶ原に移動、布陣した西軍との戦いは九月十五日の早朝霧が晴れ出す頃始まった。
 最初、家康は、桃山という地名にいた。天武天皇のご在所で、桃を献上して、勝利を得られた縁起のよい地、との近隣の者の説明に、家康は機嫌をよくしたが、見通しの悪さで、さらに前進する。
 
 戦いは、最初から西軍が優勢であった。形勢逆転の鍵をにぎる松尾山の小早川秀秋は、じっと動かなかった。秀秋に寝返りの密約をさせた黒田長政に使者をだしたが、(今、我が身は戦いの最中、いまさら秀秋には構っておられぬ)の返事がもたらされた。
 
 家康は、松尾山を見つづけ、
「あれほど、恩義をあたえたのに……金吾(秀秋)に、謀(たばか)れた。 謀(たばか)れた……」爪かじりを始めた。この行為は、幼児のときに親との縁が薄かった者の癖だそうだ。
 心は、幼児に戻っていた。そして、前世の意識ががわき起こる。
(叔父ごに追っ手を差し向けるのを躊躇したのが、失敗の元。この後生の、勝つか負けるかの時、決断をせねば!)
「鉄砲隊を松尾山に近付け、鉄砲を撃て! 小早川秀秋に、味方か敵になるか、決断させるのじゃ」
 家康は、心の奥底から起こった、指図に酔っていた。

 家康からの威嚇の鉄砲に驚き、小早川の軍勢は、西軍を攻めた、まもなく、西軍は総崩れとなっていた。

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