作品名:奇妙戦歴〜ブルース・コア〜
作者:光夜
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「う〜ん、このままここに居ても何も無いし・・・葵、外に行ってくるよ」
そう言って立ち上がったのはシンだった、図書部として表向きはほんの感想文を書いているがその感想を三枚書いたところで暑さに限界を感じて涼みに行くついでに情報を捜しに出ようと考えた。
「うん、いってらっしゃい」
葵に送られてシンは部屋から出た。
「外に行くか」
情報集めも大切だが何より今は涼みたい、そう思い外へと歩みを進めた。
「外も暑いか・・」
外も部屋と代わらず暑かった、仕方なく体育館の影で涼むことにした。
「ん、あれは・・・孝太」
体育館の影には先客がいた。孝太は剣道の防具を着たまま木に寄りかかっていた。
「よう、斑鳩こんなとこまで探索か?」
シンに気づいた孝太が顔だけ向けた。
「ああ、そんなところだ。孝太は何をしているんだ?」
「副部長と一戦交えたんだよ」
手の防具を外した、竹刀で打たれたのか赤く腫れていた。
「負けたのか?・・・」
シンは腫れた手を見て聞いたが本人は手を振って言った。
「いや、勝ったよ、コンマの差で俺の面勝ち」
「そうか」
隣に腰をおろし涼んだ。体育館では剣道部の掛け声が聞こえた。
「この間転校してきたと思ったらもう夏休みか」
「なんだよ突然?」
シンは孝太を見た。
「いやなに、物静かそうな奴かと思ったら実は絡みやすい奴なんだなと思ったんだよ」
「そう言うお前だって結構俺に悪態ついてたじゃないか」
「そうか?」
お互い顔を見合わせ笑った。
しばらく黙っていたがシンが戻ると言って立ち上がった。
「じゃあな部活頑張れよ」
「ああ」
歩き出したシンを孝太が呼び止めた。
「あ、ちょっと待てよ斑鳩」
「ん、なんだ?」
振り向くと孝太も立ち上がっていた。
「試合しないか?」
「・・・・・」
シンは何も言わず孝太を見た、目にはやる気の色が見て取れた。
「なぜ」
孝太は竹刀を肩に乗せて言い返した。
「強い奴に対しての闘争本能かな?」
口もとには笑みがあった。
「それだけじゃないだろう」
孝太は参ったなと言う顔で言った。
「お見通しか、お前に協力したいそれだけだよ」
その言葉に嘘偽りが無い事を知ったシンは。
「解ったその勝負受けよう」
ピンポンパンポン
『ただいまより十分後に体育館で斑鳩 進くんと藤原 孝太君による剣道の練習試合を始めます興味のある方は見学にきてください。繰り返します・・・・』
校内に放送が流れた、この放送は当然図書部にいる二人にも聞こえた。
「葵、どう言うことだろう?」
唯は首をかしげた。
「さあ?でも面白そうだし行ってみようか」
「そうだね」
二人は部屋を飛び出し体育館へ走った。
いつも授業以外人の出入りがない体育館は現在登校中の生徒で溢れていた。
「すごい人数だね」
葵が周りを見渡した。その中心に二人の姿が見えた、二人とも壁際で座っていた。
「葵、いたよ二人とも」
「あ、シン君」
葵はシンに、唯は孝太のところへ走った。
「孝太!」
人ごみを掻き分け唯は孝太の所へ来た。
「どうした唯?」
「どうしたじゃないわよ、これ一体どういうこと?」
周りを指差して唯は怒鳴った。
「いやな、部長に斑鳩と試合の許可を取ったまでは良かったんだけどな、どこかのバカが聞き付けて校内中に知らせたんだな」
人事のように孝太は言った。
「そのバカってだれよ?」
「あいつ」
孝太の目の先には銀がいた、ちゃっかりと審判席に座って。
「青山君!」
「そういう事、じゃあ行くわ俺」
そう言って立ち上がった孝太の目は真剣だった。
「孝太・・・・しかたないなーもう」
「悪いな唯」
「まったく」
文句をいう唯の顔はどこか嬉しそうだった。
「シン君、やっほー」
葵は唯とは逆に明るく呼んだ。
「どうした葵、怒鳴りにでも来たのか?」
「まっさかー、それよりも頑張ってね」
葵の顔を見たシンは怪訝な表情をした。
「理由は聞かないのか・・・」
葵は笑っていた。
「うん、だってシン君には考えがあるんでしょ?だから止めない」
「葵・・・ありがとう」
シンは立ち上がった。しかし葵はシンのおかしな所を指摘した。
「あれ、防具は?」
「いらないよ」
「あらら・・・・」
二人はお互いに前に出た。観客は二人の違いを口々に喋った。
「おい、斑鳩の奴防具着てないぞ」
「あれで当てられたら痛いだろうな」
「斑鳩君、頑張って―」
声援やどよめきを浴びて二人は止まった。
「おいおい、俺の応援は無しか?」
文句をいう孝太を銀がなだめた。
「まあまあ、それよりも斑鳩君本当に木刀だけで良いのかい?」
「ああ」
「解った・・・お互いに礼!」
銀が指示すると二人は礼を交わした、同時に回りは沈黙した。
孝太は前に、シンは腰に木刀を構え身を低くした。
「はじめ!」
皆息を飲み目を凝らした・・・がシンは木刀を振りぬいた形で孝太の後ろにいた。
「・・・・・」
孝太は動けなかった、だが頭には確かに木刀が触れた感覚があった。
「え、あ、い、一本!」
銀の判定に室内中の生徒が感性を上げた。
「すげー、見えなかったぜ!」
「ああ、早すぎだよ」
「キャー―斑鳩クーン」
口々にシンを誉める声が聞こえた。
二人は礼を交わして壁に戻っていった。
「やったねシン君!」
「ああ、でも孝太もすごいよ・・・」
「え、何で?孝太動けなかったじゃない」
「いや・・・・」
シンは笑いながら孝太を見た。
「あーあ、残念だったね孝太」
壁に寄りかかった孝太に唯は呆れながら言った。
「自信はあったんだけどな」
「仕方ないよい一撃だったもん」
その答えに孝太は黙った。
「孝太?」
唯は孝太を覗く、気づくとシンと葵が目の前にいた。
「大丈夫か孝太」
孝太は立ち上がった。
「よっと、大丈夫かっておまえが手加減したんだろ」
「いや、一回で倒すはずだったよ」
「ん、ああ」
この会話に葵が入ってきた。
「ねえシン君」
「ん?なんだ葵」
「話が見えないんだけど、さっきの勝負あれ一回の攻撃できまったんじゃないの?」
その答えは孝太が出した。
「あれはな、二回攻撃したんだよ、一回目は俺が止めた」
「え、そうなの!私には一回にしか見えなかったよ」
唯は驚いて孝太を向いた。
「そうなのシン君?」
葵が聞いた。
「ああ、一回目は止められたからすれ違いざまに面を当てたんだ」
「おおーさすが斑鳩君だね」
関心の声は後ろから聞こえた、振り向くと銀がたっていた。
「あの一瞬で二度も攻撃するなんてすごいな、うんうん」
一人で頷いていたがやがて気づいた目の前どころか体育館には誰も居なかった。
「あららら・・・」
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