作品名:RED EYES ACADEMY V 上海爆戦
作者:炎空&銀月火
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「…一年ぶりだ」
「ああ。そうだな」
「レシカ。お前は見ているだけで良い。…私が、ケリを付ける」
「しかし…」
「行くぞ!」
凛の声と共に、二人の姿がかき消える。否、存在はあるが、その早さ故、目に映らない。
「らぁぁぁあああああ!」
凛が雄叫びを上げ、跳躍。やや遅れて、黎も空中に飛び出す。
二人の腕が交錯した。
バァァアアン…。
爆発音のような音を立てて、空気が揺らぐ。その戦闘に、レシカは圧倒されていた。
―これが、オリジナルの戦い。
「相変わらず、速いな」
「……」
会話の合間にも、至る所で四肢が交錯し、強烈な音を立てる。
突き出された手刀を手の甲で弾き、凛は一旦後ろへ飛んだ。
「…私も、この一年間色々と鍛えてきたんだ。実力、ためさせてもらう!」
「なら、その錘を取れ」
「…ばれてたか」
フッと笑って、Tシャツの下に手を回す。カチリという音と共に、床に大きな袋が落ちた。
「人間に混じるには、この位しないといけないらしい。… 両腕に十キロ、両足に二十キロ。そして胴体に三〇キロ。この重さになれていたら、外した時どうなるだろうな?」
そしてまた踏み切り、交錯。錘から解放された力は、強烈な速度を込めて打ち出された。
「ああぁぁあああああ!」
左手の人差し指、中指を伸ばし、黎の喉元へ。その目標がフッと消え、腹部に飛来した拳を、待ちかまえていた右手が捕らえる。
「せやっ!」
かけ声と共に右手を跳ね上げ、ひねりながら投げる。右腕に強い痛みを感じると同時に掴んでいた物を床にたたきつけた。
「…やるな」
黎の指は凛の右手を貫通していた。対する黎も、背中から地面に叩きつけられ、息がつまる。
「…利き腕が使えなくなったんじゃ、勝負が悪いな…」
笑いながら、フェイント。しかし、それを黎がかき消した。
「お前の利き腕は、左だ」
それを聞いた凛の顔色が変わる。左利き、と言うことは今までレシカやハデスにさえ話したことがない。
「…何故、お前が知っている」
「……」
そして再び攻撃が始まった。
勢いよく踏み込み、その力に乗って手刀を突き出す。ギリギリのところで避けられ、その手は空を掴んだ。
―かかった。
黎が避けた方向には、下から蹴り上げられた凛のスニーカーが迫る。予想外の出来事に、黎は対応できなかった。
ガンッと鈍い音を立ててスニーカーが頭を打つ。黎の目から一瞬意識が飛ぶ。よろめいた黎に、更に足払いをかけ、床に転がす。
転倒した黎は、意識が朦朧としているのか起きあがれない。凛が、構えを作り直す。―指刺法の構え。
「うらぁあぁあああ!」
パンッ!
凛の叫び声に被さって、銃声が響く。凛の手から血が噴き出した。
「レシカ!」
「手を…出すなと…」
「私達の任務は五番目の本物奪還。それだけでしょう!」
なら、私も加勢した方が速い。
そう言おうとしたレシカが、止まった。
凛が、ゆっくりと立ち上がる。心持ち、さっきより赤みの増した瞳が強い光を放つ。
不思議な緊張が立ちこめた。
“手を、出すな。退け”

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