作品名:Three Stars and the Earth〜他星への進出〜 中巻
作者:キラ
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20話 闘争

あらすじ…サフィア達は死神のエケトリック…変わり者のステアリン・グリセリルらにディマクラスターの王との会談を申し込まれる。
そしてサフィア達はそこの星に行き、サフィアはそこの中心地となるパビリオン・オブ・エンピラーでその星の皇帝アストロと女帝ウルフとの会談をする。
しかし、その内容とは地球への侵略を意味している物であった。
サフィアは瞬時にそれを見破り、アストロは激怒。戦闘が開始される。
サフィア達は上空から遠くに逃げようとしたが飛行艦の威嚇弾によって散らばってしまったのであった。
シャスナはそれで深い樹海の中に落ち、奇跡的に軽い怪我のみで済んだ。
彼女は樹海にある洞窟でブラットと出会い、リンと言う死神の元に行く事になるのであった。


T

シャスナとブラットはこの針葉樹の樹海を空を飛んで抜けた。
今は林を抜けた草原を猛スピードで飛んでいる。
「ブラットさん、あなたって空飛べるんですね」
シャスナが言った。
ブラットは苦笑いをして言った。
「そりゃ…僕の翼を見てよ!そして、今いる所を見てよ!僕の翼はこんなにたくましい。そしてここは空。飛べなきゃ僕がここにいるのって幻なの?…違うよね?そうだよね!」
ブラットがおもしろおかしく言うのでシャスナはプッと吹き出してしまった。
「そ…そうよね!あなたは猫じゃないんだものね!あなたは妖魔のブラック…ブラック・ウィング・キャットだもんね」
シャスナが笑いをこらえながら言った。どうやらツボに入ってしまったようだ。
「シャスナ、蛇行飛行だよ…」
ブラットが呟いた。

U


それから数10分後、2人はパビリオン・オブ・エンピラーの裏側1q辺りの民家の陰に着地した。
ちらりと宮殿の方を見るとうようよとドロイド達が見回りをしている。
スティックストライクとショートナイトはもちろん、ポニードラゴンとオクトスパイダーも点々といる。
「リンはどこだろう…さっき見た時はアストロの側にいたはずだけど、そのアストロさえこのドロイドがいちゃ分からないよ…」
シャスナが呟いた。
すると、ブラットはひらめいた様に言った。
「そうだ、ここから東に40m位歩いた所にパビリオンまで誰にも見つからない地下通路があったんだ!昔、僕とリンが偶然見つけたんだよ」
ブラットはそう言うとてくてくと東の方へと歩き始めた。
シャスナは急いで、でも静かにその後をついて行った。

ここが入口なんだ。
ブラットが壁にはってある色あせたポスターを指差した。
そのポスターには『銅座・ラルィー』と書いてあった。
「何?その‘どうざ・かるぃー’って…。それに、なんでここが入口なの?」
シャスナが不思議そうに尋ねた。
「銅座・カルィーとは、あそこの通り…銅座通りって言うんだけど、そこのカルィー…ライスとルーの辛い食べ物なんだけどそれが凄く有名だったんだ。今はラーマンって言う麺とスープの丼が美味しいんだって。それより、ここが入口って事だけど…それはこのポスターの右端に…ほら、『何でも引受会社求@この裏』ってのが小さ〜な文字で書かれてない?そう、このポスターの裏には何でも引受会社ってのがあってそこの裏道がパビリオンの下水道とつながっていて…とにかく中に入ろう」
ブラットは周りにドロイドがいないか確かめて、ポスターの右端に書かれている小さ〜な文字に触れた。
すると、粘着テープで塞がれていたポスターと壁の間から空間が生まれた。
そして、2人はその空間の中に引き伸ばされる様に吸い込まれていった。

V

――ようこそ、何でも引受会社へ――
シャスナが目を覚ますと目の前には仮面を被ったマントの人と……何やらよく分からない生命体がいた。
「ここは…どこ?」
シャスナがほげっと言った。
マントの人がニヤリと笑った(仮面を被っているがオーラで感じたんだ…よな?)
「おや、譲ちゃん…ここがどこだか分からないのに来たのかね?ここは『何でも引受会社求xである。そして、私はここの社長…タイタニーである」
何でも引受会社…ついに来てしまったのか…。まさかとは思った。冗談かと思った。
――しかし、本当だった。
この会社は階段がない…どうやら1階建らしい。いや、ここは1階なのかどうかさえ分からない。
それにしても変な所だ。
床が何しろ広く、天井は妙に狭い。床には血の様な赤い絨毯が敷かれ、天井には変な物体や面白そうな物が吊り下がっている。
その時、なにやら変な生命体の方がこっちにやって来た。
「この会社は他の人に危害を加える事以外なら何でも引き受けたり道具を貸し出したりする会社でアールよ。あ、言い遅れましたが我輩の名はファウンドでアール」
ファウンドがうにゃうにゃ言った。
「さて譲ちゃん…何か頼みたい事はあるかね?」
タイタニーが言った。
「あ…あの、ブラットはどこにいますか?彼がいないとどこに行けばいいか分からないの」
シャスナがややオドオド言った。
「ブラットがいないと分からない?そんな事ありません。あの猫が知ってて私達に知らない物は無い」
タイタニーが言った。そして――
「僕は猫じゃない!妖魔ブラック・ウィング・キャット…略してブラットだ!」
ブラットがおなじみのセリフを叫んだ。
「ブ…ブラット!…どこにいたの!?」
シャスナがほっとしたようにため息をついて言った。
「いや…シャスナの脇にいたけど…やっぱり僕ってチビ?…おッと、それよりこの人達、根は本当に言い奴なんだけどちょっとお節介…いや、かなりお節介な所が痛いんだよな」
ブラットが少し…いや、かなり言い過ぎた為、ファウンドがブラットの両ほっぺたをビローンと延ばしている最中にタイタニーが言った。
「全く、嫌味な猫だ。それはそうと、どうせパビリオンまで行くつもりなんだろう?」
「な…なんで分かったんですか?」
「それはだな…私の超能力――」
「ひはうほ…ほのほ〜へふほはんへいはよ(違うよ…この小説の関係だよ)」
ブラットは自分のほっぺたを伸ばされているのにまた余計な事を言ったのでファウンドはさらに3pほどブラットのほっぺたを伸ばした。
「ほえ〜」
ブラットのほっぺたがびよ〜んとなっている間、タイタニーが笑いながら(仮面その物が笑っているが)言った。
「譲さん、どうせだからこの間にドロイドの行動の秘密を教えてあげましょうか?」
「え…知ってるんですか?」
シャスナが目をキラキラしながら言った。
「もちろん、私達何でも引受会社汲ヘ今現在の宇宙全体の事以外ならどんな事でも知っています。ついでに、ここから言う事は例え私が絶対知ってなさそうな事でも言ってしまいます。小説の関…オホン、失礼。それでは言う」
「ドロイドはサークルピラー他超人工知能が付いている者以外は全て指令局からの指令で動かされている。そして、指令局は絶対にドロイド以外の機械ではできない。超人工知能を持ったドロイドや人間でしか指令局に‘なる’事ができないのだ」
「指令局が破壊されるとドロイドも動かなくなる。そして、指令局が戦意を失う時もドロイドは止まってしまうのだ。ほら、ライトスターの出来事、覚えてるか?あの時、フィーが指令局だった。そして、フィーが叫んだ時、ドロイドが動いた。フィーの両手足が斬られた時…戦意を無くした時、ドロイドの活動は止まった。どうだ、つじつまが合うだろ?今回もきっと…この知識が役立つだろう」
「ついでに言うが、指令局が操られている事もある。その場合、言い聞かせるんだ。その人が操られるまえの事を…」
…タイタニーのアドバイスは3分間位続いた。その間にブラットも解放された(まだ頬が赤いが)。
「じゃあ…ここら辺で‘失礼’します。…イタタタタ…全く、時間の無駄だよ…シャスナ、行こう。こっちだよ」
ブラットがひーひーとほっぺたを押さえながら最後の余談を言った。
「じゃあ…ありがとうございました。またいつか、機会があれば逢いましょう」
シャスナが手を振ってブラットの後について行った。
「譲ちゃん、また逢おう!」
タイタニーが言った。
「…チビ黒猫のバーカでアール」
ファウンドがあかんべえをした。
そして、呟いた。
「社長、未来の事は言ってはいけないって約束でアールよ?」
「フッフッフ…。平気さ…たった数時間後の未来の事なんだから…」
タイタニーの仮面がニヤリとした(元々ニヤリ顔の仮面だが)
ファウンドは苦笑いをした。細かい事は気にしないでアール…と言っているかの様に…。
有限会社『何でも引受会社』はこの世のどこかにある…。きっと、今、現在、ここら辺にも…。

W

地下通路はここで行き止まりになっている。
そして上からは光が射している。
どうやらここの上こそがパビリオン・オブ・エンピラーらしい。
「ここで私の…アナさんの使っていたライト・アイテムの応用をするらしいわね」
シャスナはライト・アイテムをマジックミラーシールドに変え、その鏡を光ファイバーの様に細くして光が射す上の穴まで伸ばした。
これは、光ファイバーを応用した偵察望遠鏡らしい。
これで外…地上を見渡す事ができる。
ちょうど今、奇跡的にも周辺には誰もいない
「地上に上がるなら今のうちね」
シャスナはマジックミラーシールドを元に戻して穴が空いているふたを押し上げ、地上に出た。
もうここからは戦場である。油断はできない。
「シャスナ、僕は敵にばれない様に透明になるけど…良い?」
19話で言ったと思うが、ブラットは透明になって姿を消す事ができるのだ。
「ちゃんとついて来れるのなら良いけど…」
「大丈夫。空を飛んで行くから…。もしも君が危険になったら援護できる様にしておくよ」
「あれ?ブラットって戦えたっけ?」
シャスナが訊いた
「いや…戦えないけど…」
言葉を失ったせいか、ブラットの姿はみるみるうちに消えて言った。透明になったらしい。
シャスナはそれを見守って、意を決した。まず、敵に気付かれない様にリンを捜す。
そして、ブラットをそこに預けて自分はサフィア達を捜す。その後は…
その後はシャスナにも分からない。
「とにかく…行かなきゃ」
シャスナはとりあえずパビリオンの外に出ようとした(今は門の内側にいる)。
歩いている間にシャスナは自分にミラー・コートを着、ライトラッシャーを装備した。
――そう言えば…アナさんの最後の戦いもこんな感じだったって言ってたっけ?
シャスナはふと思ったが妙な違和感が彼女を襲ったのですぐに戦いの事だけを考える事にした。
その時――彼女の目の前にある人の姿が映し出された。
その人は綱で縛りあげられ、ドロイドがその綱の先端を掴んで誘導かつ逃げないようにしている。
「ロ…ロッジャー」
シャスナが思わず呟いた。
そう、ロッジャーは生きていた。シャスナと同様。
「シャスナ…ちょっといい?」
透明なブラットがヒソヒソ言った。
「上から見ると、ドロイド達の隅にロッジャーって奴の他にひいふうみい…4人いるよ」
「なんだって!?み、見てみたいけど…そうすると見つかっちゃうよね」
シャスナはブラットの言っている4人とは、もしかしてサフィアやソフィヤなのかと思って言った。
「シャスナは見なくて大丈夫だよ。僕はテレパシーが使えるって言ってたけど、僕は更に僕の見ている事をその人に伝える事ができるんだ。ウィング・キャットの特性なんだ」
「そうなの!?ありがとう!」
シャスナがヒソヒソと喜んだ。
「じゃあ行くよ…とりゃ!」
すると、シャスナの視界が急に暗くなり、また明るくなった。
<あ…>シャスナが思わず呟いた。
シャスナの目に映っている物は、地上3mほどの所から国民ホテルの入口辺りが見えた。
そこには…いた。ロッジャーとサフィア、ソフィヤ、ネオンにスーがロッジャー同様綱に縛り上げられてホテルの入口の方を向いて立たされている。
怪我は無さそうだが、彼らは至って冷静だった。
と言うのも、無理に暴れると自分の命が短くなってしまうからである。
その時、ホテルの入口がす―っと開いた。
そこから出てきた人を見た瞬間シャスナはアッと驚いた。
「ス…ステアリン…なんでそこから出てくるの?」
しかし、彼女はいつもの彼女ではなくなっていた。
表情は無表情。服は――何かの血が付いたのだろうか――赤とやや黒の混じった色になっていた。
武器であるカマは…初めて見る…。何やら改造されたらしく、先端は闇の様に黒く、浮いた輪が刃を囲むように5本付いていた。
そして、ウエストにはベルトが不気味に輝いている。
捕まっているサフィア達もこの変身ぶりに驚いているらしい。目を丸くしている。
「そ、そんな…。リンは…あんなリンじゃなかった…。なんでこんなに変貌しちゃったの?」
ブラットがワナワナ震えながら(見えていれば)言った。
シャスナも驚きを隠せないままそこで突っ立っている。
しかし、これは彼女の予定していた、
『敵に気付かれない様にリンを捜す』と『ブラットをそこに預けて自分はサフィア達を捜す』
の2つの事がすでに実現できたのだ。
更に彼女の次にやる事も大体解ってきた。
サフィア達を救出し、リンを正気に戻す。
いや、正気に戻るかは分からないし、これが正気なのかも知れない。
でも、シャスナは彼女が正気に戻ると確信していた。
ブラットが言っていた事。そして…『何でも引受会社求xのタイタニーが言った事…。
とにかくシャスナはマジックミラーシールドを何枚も出してシャスナを囲んでから言った。
「鏡よ鏡、我を映し、そして増幅せよ!」
すると鏡の中のシャスナが現実世界に飛び出し、この鏡の部屋が何十と言うシャスナ達で膨れ上がった頃、鏡が割れた。
「凄い呪文だ…」
ブラットが呟いた。
「いい?鏡の私達、今回あなた達は私の護衛となって欲しいの。みんなで私を囲んで攻撃を防ぐ。そしてサフィア達を救出する。それだけでいいわ」
「了解!」
鏡のシャスナ達が一斉に言った(それを見たブラットは少し気味が悪かった)。
「みんな、私を中心に円くなって…よし、それではシャスナ連隊、行きます!」
シャスナは…いや、彼女と鏡の彼女達が一斉に国民ホテル目掛けて突っ込んだ。
その突っ込んで来る時の恐怖感はさすがのスティックストライク(DS)にも解った。
DSは鋭い機械音を発しながら逃げていった。
「DS!DS!なぜ逃げる!我の命令にそむく事は出来ないはずだぞ!」
人格の変わったリンが叫んだ。
DSはハッと我に返り、手とくっ付いているレーザーガンを撃ち続けた。
が、ずっと前に言った通り鏡のアナはレーザーを跳ね返す。
レーザー撃つと言う事はシャスナにとって全く意味の無い事であった。
次にシャスナの相手になったのは馬とドラゴンが混じったドロイド、ポニードラゴン(AP)であった。
ASはシャスナ達の真横から突進し、直撃する瞬間に前足を立てて鏡のアナ2人をその前足にある陸上のスパイクの歯の様な毒針を刺した。
その2人はアグッと声を出して宙に跳ばされ、地面に直撃し、のた打ち回ったあと、ガラスが割れるようにして消えた。
「後ろの私3名、そいつを倒して!」
シャスナがそう言うと鏡のシャスナ3人はライト・ラッシャーを駆使してASをポンコツにした。
ポンコツにしている間にもシャスナ達は走った。
次に彼女達の前に現れたのは強敵、マーズ・ショートナイト(MS)、マーズ・オクトスパイダー(MO)×3体ずつだった。
「これは全員で戦わないと…。みんな、一斉攻撃!」
シャスナが叫んだ。鏡のシャスナ達がMSには3人ずつ、MOには5人ずつになるような陣をとり、戦った。
戦いは思った以上に厳しく、激しかった。
MSのマントはどんな攻撃も防ぐため急所(マント内のカプセル型エネルギーアンテナ)に杖をあてることが難しい。
MOはネオンと戦った時と同じ様に8本のエネルギーソードと360°見渡せる目がある為不意打ちが無理である。
数分間にもおよび、MSは何とか全滅、MOは残り1体になった。
しかし、シャスナ達の方もどうにか本物は生きているが鏡のシャスナは何10人も破壊されてしまった。
その時――ああ…このその時は残り1体となった。MOの視点から見たその時である。
その時――MOの360°見渡す事のできる目は急に視界が奪われ、その狭い視界の中に見えた物は――
――それは、自分自身だった。
彼(?)がビームソードを上に挙げると今見ている自分自身もそれを上に挙げた。
彼は何が何だかよく意味が分からない時、自分の手がある所から杖がヒョッコリ出てきた。
「今だ!!!」
シャスナが叫んだ。
彼が見ているMOの腹部にその杖が突き刺さり、どす黒い液体が吹き出てきた。
その瞬間、彼は自分自身のその杖が突き刺さった辺りから何かが出てくる感触がした。
そして、バタリと地面に倒れた。自分が見ていたMOもバタリと倒れた。
「な…なんで!?どうしたんだろ?手挙げちゃったりして」
どうやらシャスナもこの異様な光景(目の前に自分自身は見えないが)…には動揺を隠せない。
その時、前方から「エヘヘへへ…」と言う笑い声が聞こえた…が、姿はどこにも無い。
「まさか…ブ、ブラットが?」
シャスナが文字通りまさかと言った。
すると、また前方から声がした。
「その通り!僕はブラットだよ。エヘヘ…僕のアシストが効いたね!実は、僕あいつにテレパシーを送ったんだ」
「テレパシー?それの何が‘私達’のアシストになるの?」
シャスナが訊いた。
「甘い甘い…シャスナ、僕は言っちゃ悪いかも知れないけど君より凄いテレパシーが使えるんだ。そして、それはシャスナ自身も体験したでしょ?ほら…僕が見た映像をシャスナは見たでしょ?それを応用して、僕の見た映像をMOに見せたんだ。そう、‘透明の僕が奴を見ている映像’をね」
「なるほど!だからMOは混乱してあんなポーズをとったのね!」
シャスナは彼にしては凄い考えだなと感心した。
「あ、そうだ!早く私達の仲間とあなたの御主人の所に行かなくちゃね!」
「早く行かなくちゃリンが…行こう行こう!」
ブラットは透明のままスーッと勢いよく飛んでいった。
シャスナは気付かないが彼と同じ方向へ――もうここからは一直線だ――走っていった。
鏡の自分を従えながら。

X

空は未だに暗黒の雲に蔽われていた。
そして、シャスナ達の目の前には人格の変わったグリセリルとサフィア達がいた。
前者は無表情のまま…透明のブラットを直視していた(もしかしたら死神にはブラットの透明は通用しないのかも…とシャスナは思った)。
後者達はできる限りばれない様に嬉しいような、信じられないような微妙な表情をした。
「キサマ…誰者だ…この世のクズか…それとも宇宙のチリか…それとも何だ?」
グリセリルが無表情のまま言った。
「私はシャスナ。シャスナ・フィリー。フェリスターと言う妖精の星のある国の姫です」
シャスナが恐る恐るグリセリルに一歩近づいた。
「フェリスター?ああ、あの…実験にされた哀れな…穢れた星か」
「あそこは穢れてなんかいない!今のあなたの方がよっぽど穢れている!」
シャスナが一歩進み、叫んだ。
「我のどこが穢れている!?神聖なるDDDの忠実なるしもべ、死神のどこが穢れているのだ!」
「DDDは神聖じゃない!リン!あなたは言っていた…。DDDは最悪の帝國だって!」
シャスナが叫んだ。そして、また一歩歩んだ。
「シャスナちゃん!無茶じゃん!その行為は自殺行為じゃんよ!」
綱で縛られているロッジャーが叫んだ。
しかし、その叫びはMSのビームソードを突きつけられ、口を慎みざるをえなくなった。
「DDD帝國は最強最高の神、DDD様が治める宇宙一神聖なる宗教団体であり共和国でもあるのだ」
グリセリルが狂気を挙げて叫んだ。
「違う!私の母星を死の星にしてしまったDDDなんか…神聖でも共和国でも何でもない!そうでしょ?リン!!!」
シャスナとグリセリルの間はもう10mほどしかあいていない。それでも彼女は一歩一歩グリセリルの方に歩んでいる。
「キサマ…これ以上近づいたらこの最新鋭のカマで八つ裂きにしてやる!」
そう言うと彼女はカマを抜いた。血の臭いがし、先端に輪が付いている…レーザーが付いている。
「そんな事あなたができる訳無いわ。あなたは死神…だけどエケトリック…変わり者。優しくって泣き虫で…DDDを嫌う。リン…あなたはリン。あなたがDDDの味方をしてたのはブラットの為…。でも、彼はもういる。私の隣にいる。あなたはすでに戦う理由を失ったの。だから…正気に戻って。リン!!!」
シャスナが更に3歩、4歩、5歩進んだ。2人の距離はもうグリセリルのカマが届く位の距離であった。
「シャスナちゃん!危険だ!自・殺・行・為だ!」
ロッジャーがまた叫んだ。MSがまたビームソードを彼の喉もとの突き付けた。
「大丈夫…この人がリンだったら…私を殺せない。そうでしょ?ブラット…もう出ておいで」
シャスナが優しく言った。
ブラットが姿を現した。
グリセリルはじっとブラットを見た。
「リン…あなたはリン…思い出して…。この使え魔と一緒にすごしてきた日々を!楽しかった――
その時、シャスナは思わず息を呑んだ。リンの後ろに…人影がいる。しかも3人も…。
「ステアリン・グリセリル。そいつを殺れ」
人影の一人が言った。
するとグリセリルはためらいも無くカマを振り上げ、シャスナ目掛けて斬りつけた。
――が、
―――バシィィィィン!!!
シャスナとカマが触れ合う瞬間、そこが爆発したかのようにカマが弾け跳んだ。
なぜか…シャスナは無傷である。
カマはリンの10m後方に跳び、リンはシャスナ前方2m跳んだ。
そしてその瞬間、全ドロイドの動きが止まった。
「な…何が起こったの?」
この止まった時間の中、シャスナが恐る恐る言った。
「ふ…どうやらこのベルトの耐久力が低かったようだな」
「だ…誰?」
シャスナが言った。
声の主はさっきリンの後ろにいた3つの人影の中の一人であった。
「この哀れな死神は今は壊れたこのベルトによって動かされていたんだ。何と言っても、このドロイド達を動かすのは疲れる仕事だからな。このアホがちょうどよかったんだ。司令官は一見名誉なイメージがあるがそんな事は無い。我々から見れば雑用にすぎん…。おっと、やや話がそれたかな?キサマは…おやおや、U-Pu2によって汚染された星の王女様ではないか。そして、この哀れな虫けらどもの一員であるな?キサマ…答えろ」
この声はアストロ…DDDの総指揮官であり皇帝でありDTでもある彼がやって来た。
「私は…私は今、このサフィアさんの使徒です」
シャスナは正直に言った。
「なるほど…よろしい。ならば、ここで我々と闘わないか?もちろん、キサマ一人だと私が面白くない。虫けらどもを開放し、我々もあと2人…DDDの幹部の中のエリートを召喚する。それで3VS6である。キサマらに優位な戦闘だ。どうだ?」
アストロが静かに言った。
すると、後ろからすっと残りの人影――DU、DV…ウルフとブレインが出てきた。
シャスナはチラッとサフィアを見た。そして(無意識に)ロッジャーの方も向いた。
みんな、戦う決心はついている様だ。
「分かりました。では私の仲間を開放して下さい」
シャスナは意を決して言った。
「そうか…よし」
そう言うとアストロは手を前に出し、指を広げるとダークに満ちた炎をあげた(幻だと思うが)剣が現れ、それを握り、サフィア達目掛けて一振りした。
するとなんと剣と空気の間が黒く裂け、彼らの綱を引きちぎった。
シャスナはそれを見るとなぜか嬉しくなり、彼らのもとに走っていった。
そして、サフィアの懐にひしと抱きついた。
「シャスナ!よくやったな!俺達を救って、ステアリンを倒したのは君のおかげだよ。ありがとう」
サフィアが彼女の頭をなでなでしながら礼を言った。
「いいや、私はリン…あ、彼女の事ね…リンは倒してないわ。リンを操っていた悪を倒したの。そして、それを倒したのも私じゃないわ。彼女自身の…思い出が、倒してくれたの」
シャスナが言った。
「しゃすなちゃ〜ん…オイラ、飛行艦の威嚇弾に当たった時からずっと死ぬかと思ったよぉォォ…」
ロッジャーが喚いた(わざとだと思うが)。
「全く…ロッジャーったら」
シャスナが微笑んだ(ロッジャーは気絶しそうになった)。
「シャスナ、あなた…大きくなったね。あなただけでこのドロイドの軍勢を破ったんですもの」
ソフィヤがまるでお母さんの様にふるまった。
「ブラットがいなかったら…あ、この猫…使え魔の事です。ブラットがいなかったら私ここにはいなかったよ」
シャスナがブラットはチラッと見て言った。彼は少し照れた。
「シャスナはん…もう、数ヶ月前のおチビちゃんやなくなったんやな。」
ネオンがニヤッと言った。
「当たり前よ!もう13歳だよ!」
シャスナがムスッと言った。
「シャスナぁ…よくやっt――
スーが言おうとした瞬間、向こうにいるアストロが言った。
「もう小説の文字数がヤバい…つまり、私は早くゲームを行いたいのだ。感動の再開が済んだら闘いの準備をして欲しいが…」
「おっと…まだこいつらが残っていたか…。いいか、みんなこいつらを倒せば、DDDは滅びる。そして、DDDの滅びなくして平和無し…いいか、SR・SS・NS陣だ。俺達は…軍人、そして救世主だ。闘おう!」
サフィアが叫んだ。
「ラジャー!」
みんなが答えた。
そして、サフィア・ロッジャー、ソフィヤ・シャスナ、ネオン・スーの3グループに分かれ、武器を前に出して構えた。
「さて…始めようか」
アストロが呟いた。

――いよいよ、DDD…3Dとの初戦が行われようとしている。


アトガキ
あ、ドも、ノベリスッス。
今日は文字数が多いので一言で終わらせます。
今回シャスナが主役になってた。そして次作は逃走です。以上です(短ッ!
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