作品名:RED EYES ACADEMY U 脱走
作者:炎空&銀月火
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「あの馬鹿…」
五十六回目の悪態を、レシカがついた。凛が脱走してからすでに十二時間。今まで保った最長記録だ。他の脱走者達は少なくとも三時間以内に発見、殺害された。
「どうしてこんな事を…」
聞かなくても、分かっていた。彼女には「人」を殺せない。それはアカデミーの作った想定外のトラウマ。
 それにしても。
 レシカは果てしない自問自答をくり返す。
「これからどうするつもりなんだ…?」

「凛…。どうして何も言ってくれなかったの…」
ハデスもまた、自問していた。
 凛の戦闘能力は、アカデミーの中でもトップクラス。まず短時間で捕まることは無いだろう。…なにしろ彼女はオリジナルなのだから。
 ハデスも優秀なレッドアイだ。しかし、その体の三十%は人間である。小さい頃は分からなかったが、最近はその差が歴然と現れていた。
 頭脳面に長けたハデスと、運動系の得意なレシカ。その二人を合わせたよりもさらに凛は上だった。
 キメラとオリジナルの違いは、埋められない。しかし彼女はたった一人。たった一人のオリジナルに大勢のキメラが対立すると…。
「なんで出て行っちゃったのよ…もしかしたら」
…もしかしたら、敵同士として戦うかもしれないのよ、私達は。
 ハデスが直接戦闘に加わることはないだろう。しかし近いうちに彼女は戦闘指揮を執るようになる。彼女を陥れる作戦を立案しなければならないだろう。
「どうしてこんな事に…そしてこれからどうするの…?」

「五番目の本物か…」
凛の中で、ずっとわだかまっている疑問。確かに自分はアカデミートップクラスのサクセサーという集団にいた。しかし、能力では最近少し差が出てきたとはいえ、レシカやハデスとあまり変わらないはず。オリジナルは、アカデミー最高の地位。人間とはかけ離れた存在。
(…私は、ただの人間じゃないのか…?)
そこまで考えて、ふと思った。
 そう言えば、レッドアイと呼ばれる人と、人間―ジャストアイ―と呼ばれる人。その違いは、なんなのだろう?
 何も知らされてない。…全て、隠されていた?いや、自分だけに知らされてなかった…か?
 凛は、まだ知らない。彼女がとてつもない可能性を秘めた新成人類であることを。
「さて…」
もやもやした思いを振り切って、今一番考えなければいけない問題を見つめる。
 …今からどうしよう。
 グズグズ考えている暇がないのは分かっている。すぐにでも追っ手が現れるだろう。アカデミーの情報網は、アメリカ全土に及んでいる。
 世界単位では、まだ発展途上だと聞いているが。
 しばらく考えた後、やっと凛は心を決めた。
「やっぱり、海外に渡るしかない、か」
それにしてもこのままの格好ではいくら何でもばれるだろう。何か対策を考えなくては…。

「まだ見つからないのか!」
執務室に西村の声が響く。部下達は目の下に寝不足のくまを作りながらも必死で作業を続けていた。
「申し訳ございません。なにしろ日本人の顔は皆同じに見えると言うことでして…」
ふぅ、と息をついて椅子に倒れ込む。アカデミーにとって大切なデータ集。まだ若い遺伝子の宝庫。それが失われることは、次のオリジナルが発見されるまでキメラは生産できないことを示している。
「なんとしてでも、見つけ出せ!」


中書き
あー、上のタイトル、ルビがちゃんと出てないな・・・ルビが出るのに意味があるのに・・・。というか、やっぱり縦書きのほうがいろんな意味で見栄えがいいかもしれない・・。縦書きに対応してくれないかなぁこの連載システム・・・

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