作品名:自称勇者パンタロン、ずっこけ道中!
作者:ヒロ
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 どのくらい走ったのだろう。俺は息を切らせながら永遠と思える長い通路を走りぬけた。突き当たりの扉の前まで辿り着くと、その場に膝をつき倒れこむ。ポタポタと汗が床に落ちる。それは涙と鼻水が交じり合った汗だ。俺は顔をしわくちゃにしながら泣きじゃくる。

 なんで俺なんかを助けたんだ……。

――どうせ、逃げ帰ってくるのがオチじゃ。

 親父の言った言葉が頭の中に響く。全くその通りだよ、俺はまた逃げちまった……。でも、あんな奴らの巻き添えになって死ぬよりはマシだ。俺は関係無い。俺には関係無いんだ……。

 俺は自分に言って聞かせるように何度も自分には関係無いと繰り返した。それに俺なんかいたって戦力外さ。あいつらの足手まといになるだけだ……。

「リ、リアンーー!!」

 突然、悲痛な女性の叫び声が扉の向こうから聞こえた。俺は聞き覚えのある名前に驚き顔を上げる。今確かリアンって叫んでいたような……。

「リアン!リアン、しっかりして!」

 再び扉の奥から女の叫び声が聞こえた。今度はハッキリと聞こえた。女は確かにリアンと言っている。リアンってまさか、あのリアンのことじゃないだろうな。そんなハズはない、あいつは今頃村に向かっているはずだ。こんな危険な遺跡にいる訳がない。

 いる訳が無いと思いつつも、俺は妙な不安に駆られ扉をゆっくりと開けた。

 その部屋には見覚えがあった。あのアンデッドと化した三人組が居た部屋だ。無我夢中で走り続けて、こんな所まで戻ってきちまったのか。
部屋にはニコル達が蹴散らした奴らの肉片が飛び散っている。その肉片に囲まれるように、金色の髪をした女が部屋の中央で座り込んでいた。

「何?何を言おうとしているの?しっかりして!リアン!」

 女はその傍らに横たわる少年を抱きかかえ泣きながら叫んでいた。その少年の姿には見覚えがある。あのリアンだった。

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