作品名:黒い瞳の天使
作者:りみ
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「・・・・・・・・・・・・・フゥ・・・・」
“犯人”――吉田有史。あの温厚な刑事の吉田だ。
「なっ・・・・なんで・・・・吉田さん・・・・・?!」
「・・・吉田・・・お前がこんなことするやつだとはな」
村井と三浦が口々に言う。
「フンッ・・・お前らに何がわかる?“大切な物”を奪われた気持ちが!!!わかんのかよ!!!・・・フゥ」
ふいに連のほうへ目をやってこう言った。
「連ちゃん・・・だっけ?・・・なんで俺が怪しいって?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んー・・・・・藍ちゃんが教えてくれたし」
「え?」
「最初に警察署に連れて行ったとき・・・藍ちゃん激しく泣いたし。全然人見知りしないし一度も泣かなかったのにアンタに近寄ったときだけ泣いた・・・だから絶対理由があるんだよ。・・・・で、病院で気がついた。“消毒薬の臭い”に反応してるんだって事に。・・・デスクいじってたのもアンタでしょ?だったら・・・あの部屋消毒薬の臭いがすごいから、服についたんじゃない?赤ん坊の鼻って敏感だし」
赤ん坊は、薬の液などの臭いには敏感だ。
だから、予防注射の時に臭いをかいだだけで子供は泣き出すのだ。
「ヘー・・・・。なるほど・・・・・それだけで?」
「ううん、他にも。カルテでさ、藍ちゃんの誕生日が9月2日でしょ?ちょーどその日に手術があったのが・・・あんたの子供だし。・・・けど、藍ちゃんの誕生日だったから藍ちゃんのお父さんは帰っちゃった。・・・だからじゃないの?藍ちゃんの親を狙った理由」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、そうだよ。俺から・・・・魁人を奪った・・・・・こいつと、こいつのダンナを・・・・!!!」
吉田は藍ちゃんの横で眠る麻紀を睨む。
「コイツの・・・ダンナが・・・・っっっ・・・・・」
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3ヶ月前のこと。
9月2日。吉田の息子、魁人の手術日だった。
「ねー、パパー。・・・おうち、帰れるかなぁ?」
「んー?なんでだ?」
「おうちで、クリスマスパーティーできるかなぁ?」
「・・・ああ、できるさ!絶対に手術は成功するから!」
「うんっ!」
そして手術時。
外で待っていた吉田はある会話を耳にした。
「あの、日延さん・・・日延さんも手伝ってもらえませんか?」
「いや・・・・娘の誕生日なんです」
(・・・?どういうことだ?)
「今、ちょっと病状が悪化してるんですよ。まだ若い医師達じゃできませんし、他の医師達は別の病院や別の手術で・・・・。・・・あなたしかいないんですよ、吉田魁人君の手術は」
(―――・・・・・・・・・!?)
「・・・・・ダメです。ごめんなさい。娘の・・・藍の・・・一歳の誕生日なんです」
そういい吉夜は家へ帰ってしまった。
そして・・・―――
【・・・ピィイイ――――――・・・・・・・・・・・・・】
「かっ・・・・・・かい・・・と・・・?かい・・・とぉっ・・・!魁人・・・・・!!魁人!!」
魁人は死んだ。
そして、息子を――大切な物を失った吉田は何かを怨まずにいられなかった。
(そうだ、あの医師が悪いんだ。娘の誕生日だのどうだのこじつけで逃げた・・・・あいつが・・・・!あいつが魁人を・・・・殺したんだ・・・・!!)
そして吉田の逆恨みにも似た行為が始まった。
とりあえず日延家の住所を調べた。こんなことして何になるかなんてわからなかったが、一度会いたかったから。
そして、二度デスクを探って、やっと住所がわかった。
そしてマンションへ行って見た。すると・・・・
「藍〜、ホラ、コレで遊ぶ?」
「キャキャキャッ!!」
藍ちゃんと、楽しそうに遊ぶ藍ちゃんの両親の姿。
(・・・・・・・・・・・・・・・俺は“大切な物”を失ったのに・・・・・!あいつらは・・・・・クソッ・・・・・!!!・・・・・・・・・だったら、“大切な物”失う気持ちを味あわせてやるよ・・・・!!!)
そして、12月の初めの日に。
吉夜と麻紀を追いまわし、石で襲った。
といってもこの二人の方は殺すつもりなどなかった。本当に殺すつもりだったのは“藍ちゃん”の方だ。
藍ちゃんのほうを殺せば、二人は“大切な物”を失う苦しみを味わうから。
逆恨みだってわかってる。でも、どうしようもなかった・・・―――。
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